参差錯落 陸 その3
互いに一度、相見えた者同士だ。
相手の能力は、ある程度知っている。
安倍まゆら。
アドリブに強い天才肌。
とにかく何と言っても、術の展開が異常に速い。
こっちに対抗する時間的猶予を与えてくれない。
しかも多彩。
オマケに式の“八部衆”は強過ぎ。
そして糸姫。
まゆらの左掌にくっ付いてる“唱える者”こそが、マジで厄介。
めっちゃ邪魔。
ウザいほど喋るし。
この二人、独りでもそーとーヤバい術師なのに、それが常にふたりを相手にする状態になる。
これがモノアイのイメージ。
対してまゆらは?
一回観たので、興味ナシ。
確かにモノアイの能力は優れたモノだが、まゆらとしては他に新しい能力があれば再び興味を引くかもしれないが、今は興味ナシ。
糸は、モノアイにかなり興味アリ。
彼の“デリート”は、肉体を持っていた頃には無かった術式(と呼べるかはおいといて)。
かなり異質。
四属性の術式に当て嵌めようとしても、似て非なるモノばかりだ。
どうしても糸が納得できないのは、EGだろうがNGだろうが必ず有るハズの構築理論が解らないこと。
EG使いは術師の言うところの術式公式をsource(formula)と呼称してるくらいなのだから、そこに理論は絶対に存在するハズなのだが、、、解らない。
ま、EG使いなんで、糸が知る純然たる術式とは違って当たりマエダのクラッカー。
同じ術ヲタでも、ふたりの興味に違いがある。
まゆらは自分の知らない術、能力の“仕組み”を知りたい。
糸は術、能力の構築理論を理解して、自分でも使ってみたくなる。
そんな違い、、、。
なのでホントのところ、糸はもう少しモノアイと知り合いになりたがってる。
「ままま、挨拶はこの辺にしといて、今日は何か用?」
「ええなぁ。そのまま動きなや」
――腰が、、、
モノアイの視界の中心に、まゆらが立った。
指を立てる。
腕を伸ばし、その指を動けないモノアイの眉間に当てた。
「術で喋るか、自分で喋るか、どっちにするか決めなはれ」
話すのは、もちろん糸。
術で喋らされると、その後どうなるかを知っているモノアイは即答。
「ハイッ自分で! ハイッ喜んで!」
居酒屋のアルバイトのように答えてた。
「ちょっと聞きたい事がありましてな」
「おうおう。何でも聞いてや。このモノアイ、結界内で知らんモンは無いで」
「それは頼もしわぁ。ほなら聞いてみまひょかな」
「おうおう、聞いたって聞いたって!」
「アンタさん、ドクターってEG使い知ってはりまっか?」
「ん? 知ってるもなにも有名人やん。反対に、知らんヤツ居らんやろ」
「ま、そうでっしゃろな。こっからがホンマの質問なんやけど、ドクターは、今何処に居はりますのんや?」
「それは、、、知ってるけど、コレは情報やで。報酬は?」
モノアイの眉間に当ててるまゆらの指に、力が入れられた。
モノアイの頭が軽く後ろに、トンっと押された。
「今殺さんのが報酬でんがな」
納得してしまった。
今も小さな土蜘蛛が、全身を這っている。
質問した口の横に二匹。
眼の周りに五匹現れた。
片っぽしかないのに、、、。
術を掛けられた本人が、もしかして? と思う場所に現れる土蜘蛛。
なので今、質問のために開いた口に土蜘蛛が入ったら?
残った眼を狙われたら?
このモノアイの思考に刺激され術が反応し、そこに土蜘蛛が現れた。
――性格の悪い術やのぉ、、、
後は“殺れ”、と念を送るだけ。
間違いなくデリートより速く自分を殺すだろうと、簡単に想像できた。




