参差錯落 陸 その2
負けじとモノアイも、糸に負けないくらいに陽気な口調。
「元気元気。元気やけど、どうやってここへ?」
「それは質問? それとも時間稼ぎやろか?」
張り巡らせてるセンサーに、全く引っ掛かっていない。
警告音がウンともスンとも言わなかった。
――どうやって、、、?
その疑問が、モノアイを緊張させる。
まゆらは相変わらずムスッとしてヤル気のない動きだが、モノアイが喋りながらもEG波を使って部屋の中を把握しようと自分の波動を出してしまっているのには、しっかりと気付いている。
それを、糸が警告したのだ。
「変な事言わんといて~や。単なるEG使いとしての反応やん。何も無いで」
そう言うモノアイは糸とまゆらの存在に気付き、慌てて振り返ったポーズのまんま。
座っていた椅子から慌てて振り返ったもんだから、中腰の姿勢で変なポーズのままだ。
なんかサーフィンしてるみたいなポーズで、まゆらの方を振り向いている。
自分でも解ってる。
変なポーズ。
だが、、、
、、、下手に動けない。
迂闊に動くとどうなるかは、イヤと言うほど解ってる。
リアルで会うと若いコからはもう“おじさん”と呼ばれるモノアイに、このポーズはちょと厳しい、、、。
ゆっくり、しれ~~っと姿勢を直そうとしたら、机に置いてある手にサワサワと触れるモノがある。
「?!」
観た。
小さな蜘蛛?
瞬間、青白く光って観えた。
「EG?!」
「あ~~、それ警告やっさかい、無暗に動きなはんなや」
モノアイが、観る。
視覚でカタチ、サワサワと触覚でそれの存在を認識する。
脳が、それを蜘蛛だと認識すると、不安定だった輪郭が鮮明になり、まるで生命を認められたかのように生き生き動き出す。
見る見るうちに、小さな蜘蛛が視界の中にわらわらと姿を現し始める。
厄介なことにその蜘蛛は、視線を動かすとそこに際限なく現れ始める。
無数に、無限に現れる。
――ヤられた
意識すればするほど、その数が増えていく。
土蜘蛛のエレクトリック・ゴースト。
――どっちや?
まゆらは、全くこっちを向いていない。
触りはしないが、ガラス棚のフィギュアを覗き込むように見ている。
糸は、、、左掌なんでよく解らない。
どっちにしても、高等な術式。
――このクッソ悪趣味でダルい術、、、ヤバいな、、、
最低限の防御を、、、と思った瞬間、睨まれた。
いや、視線を感じた。
「あきまへんえ~~」
まゆらがだらりと下げた左手の先から聞こえる声の主こそ、史上最高位の術師である“唱える者”、晩霜院暦糸姫。
ってことは、このエレクトリック・ゴーストを仕掛けて来てるのは糸?
「アンタはんのアレは、少々厄介でっさかいにな」
アレとは、モノアイの能力のことだ。
四ヵ月前、散々手古摺らされたのは記憶に新しい。
使われる前に使わさないよう、敢えて警告。
「この状況、理解できまへんのか?」
「、、、いや、、、」
「秒で、殺せまっせ」
糸、自信満々。




