参差錯落 伍 その14
見事にヤられた。
――、、、クソ、、、
悲鳴が聞こえた。
駱嘉の名を叫ぶ悲鳴。
――この声は、、、范蘇円
頼りにしていた駱嘉が爆弾に吹き飛ばされて、パニックになっていた。
そうなると、自分の仕事ができない。
それどころか何もかも放り出して駱嘉の下に行き、血まみれの上半身を抱き起こして泣き喚く。
耳元で駱嘉の名を叫ぶが、駱嘉本人は范蘇円の声を遠くで聞いているような感覚だった。
それより、起こされて揺さぶられる度に身体が痛い。
抱き付かれても痛い。
そっとしといてくれ、、、。
そう言いたかったが、それすら声にならなかった。
代わりに、意識が、、、遠のいていく、、、。
己の判断ミスの所為で、頼れる部下が瀕死になった姿を見つめる李楠。
その身体を、強烈なEG波の衝撃が襲った。
厳っ!!
――来た! わ、私か、、、?!
悲鳴は上げなかったが、駱嘉がヤられるのをただ呆然と見る事しか出来なかった自分がターゲットになったのだと、瞬間的に理解した。
首を振る。
血まみれの、駱嘉が見える。
それを抱いて、泣き叫ぶ范蘇円も見える。
振り向くと、りんごりんごがニヤ付きながら近付いて来る。
ただ、珈琲が、、、左手を前に出して動かない。
珈琲の、画素が粗い。
「王手やな、、、」
声は、珈琲が立っている場所より、もっと手前方向から聞こえて来た。
――なるほど、こういう感じになるのか、、、!?
気付いた。
さっきまで観えていた珈琲の式、マカが観えない。
――コンボだったのか、、、!
今更ながら気付いた。
珈琲の術を受けた駱嘉が、あんなに焦っていたことを、、、。
李楠は、覚悟した。
覚悟したら、心が落ち着いた。
落ち着くと、ふと、あの事を思い出した。
術師とEG使い、どっちが強いか問題。
今まで絶対術師だと思っていたが、新たにひとつの答えを見つけた。
強いのは、自分の能力をより理解している使い手だ。と、、、。
妙に冷静だった。
自分の死を受け入れた人間は、こうも落ち着いて居られるのか。
――私は今から、ツインテールの死神に首を刈られるのか、、、
もう眼を開けていても意味が無いと、その眼を閉じる。
――でもやっぱ、、、死ぬのは嫌だな
泣き叫ぶでもなく、李楠は最後の瞬間を待った。
耳に、笛の音。
――ん? 術にかかると、笛の音も聞こえるのか?
どんどん近付いて来る。
――ん? え、、っと、、、何か変?
思わず閉じた眼を開き、キョロキョロしだす。
勝利したハズの珈琲とりんごりんごの様子がオカシイ。
いや珈琲は、左手を前に出して動かない。
術は継続中、、、?
だが聞こえる声とそれに応えるりんごりんごが、あきらかにオカシかった。
「姉さん“オニヘイ”や! ヤバい!」
――ヤバい?
「今、、、? 嘘やろ?」
「言うてる間に来んで!」
言葉通り、笛の音が大きくなってくる。
ナニカが、近付いて来る!




