参差錯落 伍 その9
その場で舞うように回転すると、僅かな紅迅を残して蘭陵王が霧散する。
皀耘!!
今まで蘭陵王が存在した場所で、マカ、カマを空振り。
珈琲の、ニヤ付きながらも悔しそうな顔。
李楠は自分の思いついた作戦を実行させるため、駱嘉を力尽くで口説く。
「幻術使いは対個人だ、防げる!」
「どうやって?」
「いいから! 私のタイミングで宿を出せ。良いな!」
えらく顔を近付けて来る李楠のあまりの迫力に、駱嘉は頷くしかなかった。
「范蘇円、オマエはあの死神が攻撃してきたら、能力を使え」
「え?」
何で? って思った。
自分の能力は、対象の思考を映像化するだけの能力。
攻撃力は無い。
百も承知だ。
それをあの死神にして、何になる?
范蘇円は、納得できないようだ。
そんなやり取りを見て、りんごりんごは溜息。
「やっぱ、アイツ邪魔やな」
言うか言わないかのうちに、イッキに李楠を目掛けて疾る。
「んがっ?!」
李楠ドびっくり。
首根っこを引っ張られる李楠。
本日二度目。
駱嘉が子猫のように、片手で李楠の身体を後ろに引っ張っていた。
その動きを反動にして、駱嘉が前に出る。
ぶつかる勢いで、りんごりんごの顔が急接近!
――肉弾戦は、オレも得意だ!
当然ながら、駱嘉もそれなりに武術を得ている。
――迎え撃とうじゃないか!
防御と打撃をイメージして、りんごりんごに、、、!
「?!」
眼の前に、赤いりんご。
「3秒ある!」
李楠の声だ。
さっきちゃんと見てた。
抜け目なく数えてた。
李楠、流石。
駱嘉、困惑。
――何が3秒?
戦闘IQの高い駱嘉にしては、大マヌケ。
答えは一つしか無い。
――爆発までの時間か!
「紅迅で、斬れ!」
――斬ったら爆発しないか?
とも思いつつ、頼れる上司の言葉を信じた。
赤いりんごがりんごりんごの手から放たれて、李楠が今の言葉を言い終わるまでで、2・57秒。
理解した駱嘉が行動に移すまでのタイムラグが、さらに0・33秒。
爆発の時間まで、残り0・1秒、、、。
充分だ。
紅迅の速さは、神の領域。




