参差錯落 伍 その8
念のために言っとくと、幻術と式は全く別個のモノ。
珈琲に幻術を掛けられて動けなくなった対象に、トドメを刺すのが式のマカ。
ありきたりなコンボ。
見抜けなかった駱嘉がマヌケ。
それだけの話し。
「姉さんこっち」
手招きの仕草をして、珈琲がりんごりんごを呼ぶ。
そのとき駱嘉の眼の前で、マカがEG波の名残を残して霧散する。
ちなみに、、、
使役する式を制限なく呼び出すことが出来る式と、契約上それが出来ない式が存在する。
そこには色んな制約とか条件の有無があって千差万別。
なかなか要約して説明は出来ないが、珈琲と駱嘉に関しては日に何度呼び出しても契約上なんの制限も無い式のようだ。
ちなみのちなみに、、、
神族に近くて強力な式ほど条件は厳しく、日に一度の制限を持つモノも居れば、三ヵ月に一度とか、半年に一度。天変地異クラスの式は一年に一度呼び出すのがやっと、、、なんて超大物も存在する。
まぁそんな式を使役下に置ける術師は、歴史上で見ても数えるほどだ。
それに比べて日に何度も無条件で呼び出せる珈琲と駱嘉の式は、、、そういうことだ。
りんごりんごは掛けられた声の通り、スウェーで珈琲の所まで退った。
と、当然独立志向型の蘭陵王はりんごりんごを、追う。
――反撃だ!
駱嘉も参戦しようとした時、不意に李楠の声が、、、。
「確認だ」
「何だ? こんな時に!」
怒りながらもちゃんと上司の言葉を聞く駱嘉、性格が硬いヤツ。
「今は幻術が解けているんだな?」
「そうだよ!」
少しイラついて答える駱嘉。
満足そうに頷く李楠。
「多分、イケる」
李楠がしっかりと力強い視線を駱嘉に送った時、例の攻撃の音がした。
厳っ!
――誰に?!
駱嘉は珈琲を見た。
動いている。
横の李楠にも、幻術を掛けられた様子は無い。
「、、、あ!」
狙いは、蘭陵王。
りんごりんごと珈琲に追撃を掛けたハズの蘭陵王が、徐に二人の傍らを通り過ぎていった、、、。
、、、止まった。
振り向いた。
無表情な仮面が、不思議そうな顔をしているように見えた。
先程までの、駱嘉と同じだ。
きっと珈琲を見る視界が、粗くなっているのだ。
蘭陵王の視界に、珈琲が缶コーヒーを持っている画像がへばり付いている。
「戻せ!」
李楠は素早く命令。
言われなくとも、術に掛けられた状態の蘭陵王を出しておけない。
いくら宿と言えど“魂魄”を壊されれば、二度と呼び出す事は出来ない。
李楠の命令が掛かる前に、駱嘉は素早く宿を戻す。
――死神の式に刈られる前に宿を戻せば、、、セオリー通りなら!
駱嘉の思念を受け取る蘭陵王。




