参差錯落 伍 その5
本人的にはもう少し後のタイミング、“隠し玉”にする予定が狂わされた。
「うぉっと!」
紅迅の僅かな変化に気付いて、バックステップ。
りんごりんごの読み通り、高速の紅迅がさらに回転を増し火花のように散る。
その空間に、煌びやかな鎧を纏った武人が具現化されていた。
その男、美麗なり。
そのくせ猛々しくもあり。
対峙すれば疾風の如く。
揮う剣は瞬きの殺戮。
伝説なるその名は、蘭陵王。
鎧と同じく武人が顔に付けている仮面には、赤を基調にした細かい装飾が施されていた。
りんごりんごが、首を捻る。
そーゆー仕草は可愛い。
「、、、式?」
蘭陵王を観て、自分がいつも相手にする式とはどこか違うと無意識に感じた。
そんな彼女を見た駱嘉は、驚きまくっていた。
攻撃時に迫り来る、その疾さ。
止まらないと思えたスピードからの、バックステップ。
りんごりんごと言う女、判断、動き、“並”じゃない。
瞬時に出た蘭陵王に反応して跳び退いたその勘も、鋭い。
戦闘経験値が高い証拠だ。
「?!」
りんごりんごが後ろへ下がった空間に、赤いりんごが三つ宙に放り出されていた。
――何だ、、、?
「それが爆弾だ!」
叫ぶ李楠。
ポスの“りんご爆弾”と言う文字と、自分の予想が一致した光景。
確信に近い勘。
駱嘉自身が動くより速く、駱嘉の意に反応したのは蘭陵王。
その場でマントごと翻ると風が起こり、三つのりんごを空高く舞い上げた。
見上げる李楠。
視線の先で捉えたのは、夜空にハジける三つの爆発。
思ったより、大きな音が耳に届いた。
「マジか、、、ちゃんと手榴弾並みの威力あるじゃん、、、」
言いながら、自分の顔が引き攣っていると李楠は解かった。
あらためて、二人のEG使いを見た。
ヘラヘラ笑っていた。
やっぱコイツらEG使いって、頭がちょっとオカシイ。
「お~~すげぇすげぇ。た~まや~~~ってか」
「それ、、、」
りんごりんごが、蘭陵王を指差した。
「波動が違うやん。EG使いやのうて、アンタら何なん?」
EG使いが出す式のエレクトリック・ゴーストは、青白く光る。
出す時か、動かす時か、使い手の意思が強く反映した時、青白く光る。
それが、一度も無かった。
初めからそこに在るように呼び出した式が存在を示すのは、EGでは無い証拠。
つまり、NGだ。
それを呼び出せるのはEG使いでは無く、本物の術師ってこと。
結界内では忌み嫌われる、憧れの存在。
そしてりんごりんごが『何なん?』と聞いたのは、何系の使い手なのかを問うていた。




