参差錯落 参 その4
最近は互いに、敢えて見るテレビの話題以外あまりしないようになっていた。
互いに自分の話をすると、きっと空気が重くなりそうな気がするから。
今もリビングで、ハピハピとドクターは飲み物を手にテレビの芸能ニュースであれやこれや言い合いをしていた。
と、そこへ、荒々しくドアの開く音。
そのまま廊下を踏みつける音が近付いて来たら、リビングに入る室内ドアが乱暴に開いた。
「なになに?! 何ですの??」
怖すぎて、ハピハピが声を出していた。
ドアを開けて入って来たのは、機嫌のよろしくないサイラー。
二人の顔を、たっぷり五秒づつ睨む。
「もうちょっとしたら、戦争始める。通天閣のヤツらと戦争や。オレの兵隊、マンションから居らんようになるけど、逃げんなよ!」
これは主に、ドクターへ言い放っていた。
「おう、ハピハピ、こいつ見張っとけよ! ええな!」
迫力に押され、つい返事。
「はいはい!」
それだけ言い残すと、また忙しそうに出て行ったサイラー。
玄関のドアが閉まる音をしっかり確認してから、やっと口から本音が出る。
「EG使いのクセに、自分の掛けた呪を信じられへんて、、、終わってますよね」
ハピハピはドクターを見ずに、サイラーが出て行ったドアを睨みながらそう言った。
己が掛けた呪。
火の契約。
これによってドクターは囚われの身のハズ。
なのに、、、。
ハピハピにドクターを見張る様に念を押す行為は、確かに終わってる。
精神状態がかなり荒れているのが、ハピハピでも解かる。
「くくく、、、」
小さく笑っていた。
これが笑わずに居られるものかと、ハピハピが笑っていた。
ドクターが、どうした? って表情を向けていた。
それに対し、ハピハピは何でもないと手を振る。
手を振って、まだ笑っている。
――アホやな
サイラーの事だ。
言わなくていい事を、わざわざ言って出て行ったのだ。
戦争で、誰も居なくなる。
言わなければ、自分は知らずにこの部屋でずっとウダウダしていただろう。
飯食って、テレビ見て、ダラダラしてただろう。
それが、、、。
誰も居なくなる時が来る。
――教えてくれて、あ~りが~とさ~~ん
ハピハピは立ち上がった。
ドクターがハピハピの顔を見上げると、とても明るい表情をしていた。
その意味を、ドクターは無言で理解した。
「オレ、行きますわ」
そうだな。
そういう事だな。
リビングを出て行くハピハピを、ドクターは少し羨ましそうに見ていた。




