参差錯落 参 その3
だがやらないと守ってもらえないし、何せサイラーという人物自体が怖いし、、、。
やるにはやるが、配信は宣伝無しでやった。
ちょっとでもサイラーの思惑通りに行かないよう、、、反抗だ。
そうしても、やっぱり能力者は現れる。
向こうからハピハピに連絡を取って来る。
それがサイラーの耳に入ると、そいつを上手く天王寺まで引っ張らないとイケナイ。
なんとダルい事か、、、。
もう、ここを逃げ出す事しか考えられない。
ひとりで逃げた方が、よっぽど良い。
ひとりで、、、。
そういえば、ハピハピが匿われて居る部屋にはもう一人、歳が30前後の男が居る。
見た目から、インテリ。
眼鏡紳士。
EG使いの、“ドクター”だ。
匿われてる部屋が区切られているとはいえ、食事したりする時は二人ともリビングで食べていた。
軽く挨拶くらいはする。
回を重ねるうちに、気さくに話せる仲にはなっていた。
ほぼ軟禁状態の、何もする事のない日常。
なので、話す事が尽きた頃に互いに本名を名乗り合った事もあった。
「オレ、本名、豊岡耕太って言いますねん。よろしくですわ」
EG使いが本名を名乗るのに驚いている様子だったが、どうやら自分と同じ戦闘系では無いと理解したのか、それだけで親近感が増したのかもしれない。
「僕は神木了。HNそのまま、医者なんだ」
打ち解けた頃に、ハピハピはドクターに言ってみたことがある。
「なぁ、逃げません?」
「、、、ここから?」
「そうや。こんなとこに居っても、多分ロクな事になれへんと思いますわ」
「逃げる、、、」
「どやろ? 一緒に逃げませんか?」
ほんの一瞬、ドクターの顔が希望で光ったように見えたが、違ったようだ。
眼鏡のズレを一度直すと、ハピハピに此処に居る理由を教えてくれた。
「それは、無理なんだ」
「何でですのん?」
長袖のシャツ、両腕を肘まで捲った。
その眼を疑うほど、驚いた。
医者にしては、派手なファイヤーパターンのタトゥーがあった。
「これは、サイラーの能力の一つでね、“火の契約”って言ってた」
「火の、、、」
「サイラーの意思で、このタトゥーが発火するんだ」
「え?」
「僕がどこに居ても、サイラーが燃えろと思えば、このタトゥーが腕を焼き尽くすまで消えない。そういう能力らしい」
「、、、」
「逃げれば確かに命は助かるかもしれないけど、腕が無くなったら、医者の僕は死んだのと同じだよね、、、」
そう言って、シャツの袖を元に戻した。
諦めの表情というか何なのか、、、ハピハピには正解が読み取れなかった。
「逃げれるなら君一人で逃げなさい。僕がここに居ないと解かった時点で、僕の腕が灰になる。それは勘弁」
ものすごくシリアスな空気の部屋になってしまい、ハピハピが慌てて取り繕う。
「いやいや冗談ですわ。確かにこの部屋はいつでも出れますけど、下降りたらサイラーの手下がうじゃうじゃ居てますし、そんなとこ通れませんし、、、ほんまジョーダンですわ!」
逃亡の話しをしたのは、その一回だけだった。




