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カ・ル・マ! ~天王寺の変~(改訂版)  作者: 后 陸
天王寺の変 五の章
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参差錯落 参 その3

 だがやらないと守ってもらえないし、何せサイラーという人物自体が怖いし、、、。

 やるにはやるが、配信は宣伝無しでやった。

 ちょっとでもサイラーの思惑通りに行かないよう、、、反抗だ。


 そうしても、やっぱり能力者は現れる。

 向こうからハピハピに連絡を取って来る。

 それがサイラーの耳に入ると、そいつを上手く天王寺まで引っ張らないとイケナイ。


 なんとダルい事か、、、。


 もう、ここを逃げ出す事しか考えられない。

 ひとりで逃げた方が、よっぽど良い。


 ひとりで、、、。


 そういえば、ハピハピが(とら)われて居る部屋にはもう一人、歳が30前後の男が居る。

 見た目から、インテリ。

 眼鏡紳士。


 EG使いの、“ドクター”だ。


 匿われてる部屋が区切られているとはいえ、食事したりする時は二人ともリビングで食べていた。

 軽く挨拶くらいはする。


 回を重ねるうちに、気さくに話せる仲にはなっていた。

 ほぼ軟禁状態の、何もする事のない日常。

 なので、話す事が尽きた頃に互いに本名を名乗り合った事もあった。


 「オレ、本名、豊岡耕太(とよおかこうた)って言いますねん。よろしくですわ」


 EG使いが本名を名乗るのに驚いている様子だったが、どうやら自分と同じ戦闘系では無いと理解したのか、それだけで親近感が増したのかもしれない。


 「僕は神木了(かみきりょう)。HNそのまま、医者なんだ」


 打ち解けた頃に、ハピハピはドクターに言ってみたことがある。


 「なぁ、逃げません?」

 「、、、ここから?」

 「そうや。こんなとこに()っても、多分ロクな事になれへんと思いますわ」

 「逃げる、、、」

 「どやろ? 一緒に逃げませんか?」


 ほんの一瞬、ドクターの顔が希望で光ったように見えたが、違ったようだ。

 眼鏡のズレを一度直すと、ハピハピに此処(ここ)に居る理由を教えてくれた。


 「それは、無理なんだ」

 「(なん)でですのん?」


 長袖のシャツ、両腕を肘まで(まく)った。

 その眼を疑うほど、驚いた。

 医者にしては、派手なファイヤーパターンのタトゥーがあった。


 「これは、サイラーの能力の一つでね、“火の契約”って言ってた」

 「火の、、、」

 「サイラーの意思で、このタトゥーが発火するんだ」

 「え?」

 「僕がどこに居ても、サイラーが燃えろと思えば、このタトゥーが腕を焼き尽くすまで消えない。そういう能力らしい」

 「、、、」

 「逃げれば確かに命は助かるかもしれないけど、腕が無くなったら、医者の僕は死んだのと同じだよね、、、」


 そう言って、シャツの袖を元に戻した。

 諦めの表情というか何なのか、、、ハピハピには正解が読み取れなかった。


 「逃げれるなら君一人で逃げなさい。僕がここに居ないと解かった時点で、僕の腕が灰になる。それは勘弁」


 ものすごくシリアスな空気の部屋になってしまい、ハピハピが慌てて取り繕う。


 「いやいや冗談ですわ。確かにこの部屋はいつでも出れますけど、下降りたらサイラーの手下がうじゃうじゃ居てますし、そんなとこ通れませんし、、、ほんまジョーダンですわ!」


 逃亡の話しをしたのは、その一回だけだった。



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