参差錯落 壱 その1
足を引き摺っていた。
痛い。
とにかく痛い。
痛みだけが足を伝わってくる。
だがそんな痛みを忘れるくらいに、佳穂は必死に声を掛けていた。
ずっと問いかけてる。
イヤホンに繋がったマイクに、ずっと問いかけてる。
信頼し始めた声に問いかけている。
必死で、、、。
何度も、、、。
なのに!
ケータイから何の反応も無い。
さっきまでちゃんと話してたのに、、、!
イヤホンからは声が聞こえないのに、別の男の声が聞こえる。
後ろから近付いて来る、男の声。
闘いは終わったのか?
どっちが勝った?
いやいやそんなのはどっちでもいい!
どっちにしろ今、狙われているのは自分だ。
――くっそ!
左足が、全く動かない。
痛いだけ。
動かすと、余計に痛い。
でも、、、。
前に進む!
妹を助ける!
絶対に助ける!
その思いで来たが、状況が最悪過ぎて口からでるのは、悲鳴だけ。
聞こえるのも、自分の悲鳴。
そこに、男の足音とおちょくった笑い声が混じる。
また同じ言葉を叫ぶ。
「聞こえへんの?! 何で?!」
叫びながら、足は止めない。
進むのだ。
「おいおい。どこまで行くねん」
「足、痛いやろ? その辺で止めとき」
もう、ハッキリ聞こえる所まで近付いている。
これはほぼ、真後ろに居る。
恐怖からか、佳穂は振り向いてそれを確認する事が出来ない。
橋を渡り終え、視線を上げると『天満橋』と表記された交差点に来ていた。
視線を上げたせいか、転んだ。
「うわっ、痛そ」
「諦め。オレらも歩くん飽きた。ジブン死に」
「翔ちゃん冷た~~。オトコマエやのに冷た~~」
じわじわと、二人のEG使いが来る。
立ち上がる事も出来ず、両手で身体を引き摺って、恐怖から逃げるように前に進む。
「何で? なんで何でナンで?! なんで何にも返事無いの! モノアイ! 聞こえてへんの?! モノアイ! 助けてぇやぁ!」
一瞬、二人の足が止まった。
結界内で知らないヤツは居ない、有名な男の名が佳穂の口から聞こえたからだ。




