紅朱同赤 陸 その15
この状況で、聞きたい事がそれ?
本当に聞きたいのは、それだけ??
、、、それだけだ。
術ヲタまゆらにとって術式(三木は同種なので初めからそんなに興味は無い)を解明したら、もうどーでもいい。
そんな二人に聞きたい事があるとすれば、ひとつだけ。
モノアイの居所。
知ってたらラッキー! くらいの感覚で、念の為に聞いてみたって感じだ。
知らないなら、自分でモノアイを探すだけ。
「ま、待て! 待ってくれ!」
振り向きもしない。
でも一応、その場に立ち止まる。
まゆらの背に、三木が必死で聞く。
「お、教えてくれ! どうやって呪を二つ同時に唱えた? そんな事は、、、」
まゆらが左腕の肘を曲げ、手のひらが丁度顔の横にくるようなポーズを取った。
背中越し、糸だけがこちらを向いている。
「何でも聞いたら教えて貰えるぅ思たらアカンえ。自分で考えなはれ」
そう言うと歩き出す、、、ハズが、三木のさらに後方から聞き覚えのある声がまゆらの足を止めた。
「ほんなら、ボクが代わりに答えてあげても良えけど?」
肚のモノが無くなり、胃液だけを吐いていた紗結も含め、全員の眼がそこに集まった。
「いや~、見つめんといて、テレる照れるwww」
近付く声が大きくなる。
その声が歩いて近付くだけで、三木が張っていた術式、“トバリ”が晴れて行く。
創られた暗闇が、ごく普通の夜の色に戻っていった。
良く観れば、紗結の創ったトンネルも消されている。
結界内に人工の灯りは無いが、今宵は月の光りだけで充分にその男を確認できた。
四十不機嫌な面持ちだったまゆらが、少女らしく驚いた表情を見せていた。
「た、珍晴? 何しとう?」
まゆらに珍晴と呼ばれた男は、まゆらを無視して三木との会話を進める。
「どうする? 知りたくない? まゆらの秘密」
「珍晴!」
三木は遠慮なく、自分の横に歩いて来た男をまじまじと見る。
180センチを軽く越える長身。
スウェット生地のジャケットの下から見えるシャツを押し上げる筋肉は、大き過ぎず、しなやかさも兼ね備えてると簡単に想像できる。
――コイツは、強い、、、のか?
見た瞬間、この男に対する印象はこうだった。
嫌みなほど人当たりの良さそうな表情は、複雑に印象を変える。
どう変えるかと言うと、、、。
本当は弱いヤツが、見た目それなりに強いヤツを装っている。
、、、のか?
本当は強いヤツが、弱いヤツを演出してるが強さが滲み出てしまっている。
、、、のか?
判断を間違えると、ややこしいタイプの男だ。
飄々と現れた男は、場の空気も読まずに言葉を発する。
「知りたいやんな~?」
まるで旧友に話しかけるように三木にどんどん近付いてくる。
この男こそ、関西道具屋最大手である加茂家次期当主、加茂珍晴である。
三木は珍晴の言葉に、戸惑いながらも頷いた。




