紅朱同赤 陸 その14
当然の事だが、左掌もソコだ。
なのに今、まゆらの左掌に宿った糸姫の声が、イヤホンで聞くように耳元で囁かれた。
鼓膜を擽られた。
眼で見て、しっかりと確認する。
まゆらは、やっぱりソコに立っている。
対峙した、9メートル先に立っている。
ならば当然、喋る左掌もそこに居る、、、のだが、、、?
「迂闊な行動は禁物やで~~」
「?!」
今度はちゃんと、三木が認識している場所から聞こえた。
なら、先ほどの声は、、、?
――術? 幽体離脱系か? いや、、、それをやる意味がない。なんだ?
悩める三木。
イヤイヤそれよりも何よりも、三木にはもっと驚く事があった。
奏沸の術式を展開している時も、まゆらは防御術式を解いていなかったこと。
これはまゆらが二つの術式を、同時展開していたってこと。
キチンと学んだ三木にとっては、驚き以外の何物でもない。
「同時に、二つの術式、、、?」
驚くだけじゃなく、思わず口に出してしまっていた。
「あらあら、興味津々やね~~」
糸、ムフフと三木を小バカにしてみるwww
スタスタと歩き出したまゆら。
のたうち回る紗結の正面に立った。
「ちょ、ちょっと聞きたいねんけど」
異性は苦手なので、まゆらは胃液を吐いてる紗結に話し掛けた。
いやいや待て待てと、三木がまゆらを止めようとする。
「おいおい待てよ、見て解らないか? 紗結に、、、」
無視。
ガン無視。
「あんたに聞いてんねんけど!」
ガッツリ鳩尾に入ったのか、もがき続ける紗結。
まゆらは構わず、強い口調で上から吐き捨てていた。
「まゆらちゃん。流石にこれは答えられへんわ。だって見てみぃな。先刻から延々吐いてますがな」
「せやって、、、あんなんでこんな苦しいん?」
「しゃーないやないの。まゆらちゃんの術の強度でそこらへんのコに当てたらこうなりますがな。当分喋れまへんわ。代わりにあっちの東京モンに話させましょ。そうしましょ」
糸の言うことには耳を貸すまゆら。
「、、、」
でも素直に返事はしない。
ひねくれまゆら。
ムスッとした表情で、糸の警告通りにフリーズしてる三木を見下ろした。
「な、何だ? 何が聞きたいんだ? いや、それより今同時に二つの呪を発動、、、」
まゆらが、左腕を三木の方へ伸ばした。
このポーズは、、、。
「自分で言わんのか~~い!」
緊迫した空気をぶち破る、糸のツッコミ。
呆気に捕らわれる三木。
「はいはい。代わりに聞くわな。アンタはん、モノアイの居場所って知ってはりまっか?」
「? いや、モノアイは日本橋が縄張りだが、そのどこに居るかは知らない」
「なんやあんまりモノ知らんお人やな」
言い終わらないうちに、二人を通り過ぎてまゆらが歩き出した。
三木、マジで驚く。




