紅朱同赤 陸 その13
糸が一瞬で冷静さを失ったのは、三木の呪言。
当然、三木は解呪の術式を展開。
「あ、、、!」
と言う間に、掛けていた呪が剝がされた。
キレイに、三木の身体に貼り付いていた怨虫たちがEG波と退行して霧散する。
まゆらに睨まれる糸、、、。
「嫌やわ。イケメンの呪言師に乗せられたやんかいさ。てへ♡」
「てへ、ちゃうわ!」
自由になった三木が、まゆらと紗結の線上に入る。
その空間を、指で斬る。
この動作は、まゆらの印を紗結から切り離す作業。
紗結に向き直り、顔面を右手で覆って耳元で叫ぶ。
「戻って来い!」
カッ、と一度眼が見開くと、次の瞬間紗結の顔がみるみる赤く染まっていった。
催眠状態だった自分のした事が、解るからだ。
屈辱。
主である三木を裏切り、快感のためにまゆらに従った。
強制的に催眠状態にされたとはいえ、ヘラヘラしながら質問に答えていた自分を思い出すと胃が爆発して口から腸が出そうな気分だ。
「よくもオマエぇぇぇぇぇっぇ!」
鬼の形相で立ち上がり、叫ぶ紗結の姿はまゆらの視界には無い。
術を解明したので、興味が無くなったのだ。
三木に呪を斬られたのも良いタイミングだと念を外し、フラフラ散歩でもするようにEG波で出来たトンネルを観ながら歩き出していた。
それでもまゆらに向かおうとする紗結を、三木が止めていた。
あの女子高生相手に、迂闊に動いてはダメだ。
無策では反対にヤられる。
止める三木に、紗結はそれでもまゆらが許せない。
まゆらは、、、つまらなそうに展開していた六角剛竺を少し小さくし、余力で奏沸と言う術式を同時に展開した。
これはちょこっとEG波を使った。
“本式”でやるとメンドいので、半分EGでインスタントに展開。
おかげで、とにかく速い。
“正当”な術師からすると、これは異常な光景。
時間的に言うと、紗結が『よくもオマエ、、、』から1秒弱でここまで。
怒りが収まらない紗結が、三木の腕を振り払って前へ出る!
「術式展開してんのんが、解らんのかいな、、、」
呆れる糸。
わざわざ観えるように奏沸を展開して留めてたのは、警告の意味を含めてたのに、、、。
まゆら、奏沸を飛ばす。
「ダメだ! 紗結!」
三木が叫ぶ。
奏沸、、、。
念呪を固めて、相手に当てることが出来る呪。
単純な呪だが、“シロート”相手なら効果は高い。
庇おうと、紗結の方へ身体を動かす。
が、間に合わない!
――紗結は?!
今から叫ぼうと、息をたっぷり吸い込んだその瞬間だった。
エコーを放つ前に、腹部に重い衝撃が来た!!
「あ、、、、ぁあかっ、、!!!!! おぇ、ええぇえええっぇええ」
吐いた。
鳩尾に、マトモに入った。
――くそっ!!
三木は慌てて紗結の身体を、、、!!?
「動きなはんなや、、、」
「!!!?」
三木の耳元で、優しい声がした。
たった一言で、動けなくなる。
驚愕の眼で、まゆらを見た。
ちゃんと其処に立っていた。
おおよそ、9メートル先。




