蝶舞山揺 弐 その6
目の前の男より、後方でバンから降りた男の方が何かに気付いたようだ。
赤い青白い炎の男に叫んだ。
「ヤバい! 逃げろ!」
余裕を見せたかったのか、仲間の声にも男はちょっとイキって首だけで振り返る。
「あぁ? 何で?」
パンパン!
2回。
意外と軽い音がした。
「ああああああああっっっ?!」
イキった男は、両の足の甲を撃ち抜かれていた。
一瞬で全身の力が抜けて、その場に崩れ落ちる。
痛みは、少し遅れてやってきた。
「あああぁっぁあ??? 撃たれた? オレ撃たれた?!」
目から、涙が大量に出ていた。
炎も、とっくに消えていた。
「何で? 何で? 何でなん?!」
男の質問に答えたのは、後方の男だった。
「アホゥ! 二丁拳銃のゴスロリ言うたら、“速水颯太”と“モノアイ”をヤったまゆらの仲間で、“責眼のルネ”しかおらんやろ!」
「え? そうなん、、、」
言われ、崩れ落ちた頭を必死に上げて、下からゴスロリを見上げた。
涙を流す眼に映ったのは、、、
隻眼が赤眼で責眼のルネ。
結界内で彼女を知らないEG使いは、バカかもぐりだ。
汚物を見る眼で、美しい顔が自分を見下していた。
正に意味なく、他人を責め立てるような眼つき。
それに喜びさえ感じてる、変質的な眼。
赤い、、、左眼。
男の目に、ルネの小鼻が膨らんでいるのが映った。
あからさまに興奮している。
視線が自分から外れ、後方の仲間へと変わっていた。
男はルネが興奮している理由が分かった。
丁度、引き金を引くところだった。
頭上で火薬の破裂音。
飛び出る薬莢。
さっきまでイキっていた男の耳に、仲間の悲鳴が聞こえた。
後方の男が、右腿を撃たれていた。
「なんで、、、オレらEG使いやのに、当たんのん?」
涙を流しながら、素直に口から出ていた。
その口に、ルネの黒いブーツの先が襲い掛かる。
勢いでそのままコンクリートに後頭部を打ち付け、意識がぶっ飛んだ。
一瞥も与えず、今度はルネの方から黒いバンへ歩き出す。




