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カ・ル・マ! ~天王寺の変~(改訂版)  作者: 后 陸
天王寺の変 四の章
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紅朱同赤 伍 その1

 浪速日本橋郵便局の中、管理者はもうとっくに居ない。

 けれども、腕が痛くて動けなかった。


 管理者に(もら)った救急箱の中に入っていた包帯でグルグル()きにした腕が、やっと血を流すのに飽きたようだ。

 それでもその左腕は、震えが止まらない。


 「すまない。オレのせいだ」


 もう何回聞いたか、、、。

 責任を感じるのは解るが、しつこいのは嫌われるよ、と教えてあげたかった。


 「謝らなくて良い。オマエを止めるのも私の役目のひとつだ」


 李楠(りなん)駱嘉(らくか)の顔を見ながら、何度も謝る大柄な部下を(たしな)めた。


 改めて、見る。

 真正面から恥ずかしげもなく、自分を見つめる駱嘉のすまなそうな顔がカワイイ。


 ――と思ってしまう私は、やはり駱嘉がタイプ、、、なのか?


 自問自答。

 李楠は顔が赤くなるのを察知し、話題を振った。


 「え、え~と、どうしよっか」

 「何がですか?」


 聞き返したのは、范蘇円(はんそえん)


 「管理者との契約は、まぁ、上手くいったわ。二人に感謝ね」

 「私は何も、、、」


 ――してねぇよな。確かに


 と、相変わらず范蘇円へのツッコミは厳しい。


 「管理者に貰ったスマホ、使ってみないか?」


 駱嘉と范蘇円が、互いに見合った。

 そして呼吸を合わせたように、李楠を見る。


 貰ったスマホは、管理者が創った賞金ポスシステムがインストールされている端末で、特殊なコーティングされてるとのこと。

 李楠のように術者やEG使いで無くても、結界内で問題なく使えるようになってるらしい。

 本来は、結界内に入ったEG使いが参加することで作動するのだが、管理者特権でこのスマホを使えば部外者の李楠も問題なく使える。


 范蘇円が(うらや)ましそうに『私も欲しい』と言っていたが、彼女はEG使いなんだから自分でソフトをダウンロードすれば良い。

 そう言ってやったら、狙われるから嫌だと拒否された。


 ――何しに来たんだよ!


 「今、、、やりますか?」


 スマホを見つめて、また李楠の顔を見て、范蘇円も確かに興味津々だ。


 「日本の有名な(ことわざ)を知らないのか?」

 「ことわざ? どんなのですか?」

 「いつやるの? 今でしょ!」


 間違った知識だが、使いどころは合っている。


 「なるほど良い言葉だ」


 駱嘉もノって来たので、スマホに入れてもらってるソフトを立ち上げた。

 初期設定の場面が最初に来るが、それは管理者の教えてくれたパスワードを入れるとどんどん回避できる。

 そのまま最後に登録終了のボタンを押せば、賞金ポスシステムを参加しなくとも使えるようになるとのこと、、、。


 李楠はその直前の、システムの説明画面で止まった。

 内容に、興味が湧いたのだ。

 長ったらしい文言を得意の速読で読もうとしたら、横から聞かれた。


 「何してるんですか?」


 画面を見たまま一瞬動かなくなった李楠に、范蘇円が聞いて来たのだ。


 「いや、このシステムの内容を理解すると、どういった心理で結界内のEG使いたちが行動してるのかちょっとでも解らないかなぁ~とね」


 范蘇円は、素直に感心した。

 さすが上司と。


 「何かそう言われると、上司っぽいですね」


 これはまったく悪気の無い、范蘇円の人を小バカにする誉め言葉。


 ――上司だよ!


 本人は完全に褒めてるつもりなので、本国でも『范蘇円はそう言うヤツだ』と認識されている。

 注意しても直らないし、、、。


 「こういった細かい事を気にするのも、上司の役目なんだよ」


 二人の会話に駱嘉が興味を(しめ)し、李楠の指摘を『もっともだ』と言ってスマホの画面を見ようと顔を近付けて来た。


 「ぅおいおいおい!」


 テレて後退(あとずさ)り。


 ――無自覚な二枚目!


 「?」

 ――キョトンとすんじゃないわよ!


 「ち、ちょっと、今私が見てんだから、、、あなたまで覗き込んだら、余計に見にくいでしょ!」


 駱嘉と范蘇円が一度顔を見合わせ、『確かに』と頷く。

 サラッと出た言い訳に、二人とも納得してくれたようだ。


 「二人は後で見なさい」


 そう言うと、再び視線をスマホの画面へ。

 李楠は得意の速読で画面をスクロールし始めた。



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