紅朱同赤 肆 その1
ちょうど一週間前、蛇骨会の新人が行方不明になった。
人がひとり消えても、ここでは誰も気にしない。
新人なので、あいつどこ行った? くらいの会話は所属したグループの中で1~2度はされても、誰も本気で気にしない。
最短、入って1時間しないうちに逃げ出したヤツも居る。
どんだけこちらが歓迎しても、ダメな奴はダメだ。
反対に、残るヤツはどんだけしんどい仕事を押し付けても残る。
だから、気にしない。
何やらその少年を見る立場のヤツが上に怒られ、その腹いせに殴られていたのを何人かが目撃している。
消えたのは、その殴られた日だ。
蛇骨会では、よくある話。
あるある。
名前は、、、孝哉と呼ばれていた。
その孝哉、最後に錦戸をパシらせていたのを知っている者は居ない。
コーラを買いに行かせてた。
買ってきた錦戸に言われた。
「あっちに“良えもん”がある」
と言われ、付いて行ってしまった。
コーラを買いに行かせた、ちょっとした恩もある。
錦戸に連れて行かされたのは、サイラーが住み着いたマンションの敷地に立てられた、管理人が使ってたであろう雑用をこなす道具を入れて置くための倉庫。
孝哉が鉄製の観音開きの扉を開けると、コンクリートの打ちっ放しで少し冷っとする。
中には予想通り、掃除道具、水撒き用のホース、脚立など、管理人が日々使う道具が収められていた。
広さ四畳半くらいの倉庫。
掃除道具だけを入れる倉庫にしては、少し大きかった。
とは言え、入口で首を中に入れて覗けばそれで全部見渡せる。
「何が、『良えもんがある』やねん」
舌打ちしながら振り返ろうとしたとき、背中をドンっ、と押された。
押したのは、当然錦戸。
不意に押されたせいで、コケてそのまま四つん這いの体勢になった。
コンクリートの床に手を付くと、一気に怒りがこみ上がった。
「錦戸コラアアア!」
振り向くより先にドアが閉められ、カギを掛けられる音がした。
立ち上がって見ると、扉に付いてるドアノブは、内側に鍵穴の無い作り。
倉庫だけに、カギの開閉は表でしか出来ない仕組みになっていた。
それでもドアノブをガチャガチャと回す。
回しても、当り前だが開かない。
扉を殴る。
蹴る。
そんなんで開く訳がない。
「コラ錦戸! 今すぐ開けたら許したる。聞いてるか?!」
「おお、オマエ、、、が、聞け、、、、、、」
「あ?」
なんか言うとる? と孝哉が耳を澄ませると、錦戸が信じられない言葉を言った。
「い、今から、おおおオレの、し、し、式、を、そこににに出すうううわぁ」
「、、、! 式?!」
聞いた事のある単語。
“式”。
孝哉は、思い出した。
EG使いが、それも強いEG使いが持ってるって言う“式”のことか?!
「えへえええへへへへへ。っほ、んだら、また、、、後でな、、な、、、」
何を言ってるんだと思ったら、自分の背後が突然光り出した。




