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舞台の千穐楽が終わった夜、美咲は劇場の喧騒から少し離れた舞台裏で、静かに作業を進めていた。公演は無事に終わった。翔太の演技は圧巻だった。彼の深い孤独や葛藤が、観客をも巻き込んで劇場全体を支配していた。だが、その演技に潜む苦しさも、同時に彼を見ている美咲には伝わっていた。


彼がどれだけの重圧を抱えてきたのか、美咲はずっと見てきた。彼のそばにいることで、少しでもその孤独を癒してあげたいと思っていた。そしていつしか、彼の存在は「推し」以上の意味を持つようになっていた。


舞台裏からふと気配を感じ、美咲が顔を上げると、翔太がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。汗を拭いながら、彼は少し疲れた表情をしていたが、その目には確かな光が宿っていた。


「美咲。」翔太がそっと名前を呼ぶ。彼の声に、いつもの優しさと何か特別な響きが混じっているように感じられた。二人は、もうすでに互いの気持ちを確認し合っている。それでも、こうして舞台の最後に彼が自分を探しに来てくれることに、美咲は胸が少し高鳴るのを感じた。


「お疲れ様でした。本当に素晴らしかったです、翔太さん。」彼女は自然に言葉を口にしたが、その心の中では、もっと多くの感情が渦巻いていた。


翔太は彼女の言葉に、微笑んで答えた。「君がいてくれたおかげで、ここまでやれたんだ。本当にありがとう。」


「そんな…私はただ、少しお手伝いしただけですよ。」美咲は照れくさそうに笑いながら答えたが、翔太の目が真剣なままだったことに気づいた。


「違うんだ、君のおかげで、僕は自分自身でいられた。美咲がそばにいてくれることで、演技に飲み込まれずに済んだんだよ。」


その言葉に、美咲は胸が温かくなるのを感じた。彼の孤独と戦う姿を見守ってきた。けれど、それでも彼は自分を信頼し、心を預けてくれていたのだ。彼が自分に心を開いてくれることが、何よりも嬉しかった。


「今夜、時間ある?」ふと、翔太が真剣な顔で尋ねた。「君ともう少し、ゆっくり話したいんだ。」


美咲は頷いた。互いに気持ちを確認し合ってから、まだこうして二人きりでゆっくり過ごす時間はなかった。彼の孤独を少しでも和らげたいと思っていたが、実際に彼が自分を選んでくれたことが、ただ嬉しかった。


「もちろん、ありますよ。」美咲の声は落ち着いていたが、その心の中では、これから始まる二人だけの時間への期待が広がっていた。


舞台のざわめきが遠ざかり、夜の静けさが二人を包み込む。劇場を出た後、夜の街を歩く二人の間には、言葉以上の何かが流れていた。ただ隣にいるだけで、翔太の苦しみが少しでも軽くなればいいと、美咲は思った。


翔太はふと足を止め、美咲を見つめた。「美咲…ありがとう。本当に君がいてくれて良かった。」


その言葉に、彼がどれほど自分に心を開いているかが伝わってきた。美咲は微笑んで、そっと彼の手に触れた。


「翔太さん、私もそばにいられて幸せです。これからも、ずっと一緒にいられたらいいですね。」


その瞬間、二人の間にあった微かな距離が完全に消えた。

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