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言の葉を君に伝える

作者: 未来 かえ

こんにちは!

見てくださってありがとうございます!!

ぜひ楽しんでいってください!!✨️

 都心から少し離れた場所にある大きめの本屋のバイトをしている涼野(すずの)(こう)には推しがいる。その人はすらりとした体型に、さらさらストレートショートの茶髪を(なび)かせ、ハスキーな優しい声でいつもお礼を言ってくれる本屋のお客様だ。あぁ、一度でいいから話してみたいな。

そんな事を思いながら、推しが来るのを期待して今日も一日頑張ることにした。


 一方で、県立流里川(るりがわ)高等学校2年の生徒である千羽結弦(せんばゆづる)は、親友兼幼馴染である塩津(しおつ)(りん)に放課後の教室内で相談をしていた。


「鱗、どうやったら好きな人に話しかけることが出来る?」

「好きな人~?勢いで話しかければいいんじゃない~?」

「それができないから相談しているんだ…」

「ていうか、誰の好きな人なの~?」

「私の、本屋でバイトをしている好きな人の相談だ」


結弦がそういうと、鱗は目を大きく開いて手に持っていたスマートフォンを机の上にゴンッと音を立てて落とした。結弦はリンのスマートフォンの画面に傷が付いていないかを確認してから、本人に渡す。すると鱗は結弦の方を掴み、前後に揺らす。


「恋愛に興味がないです、みたいなあんたが~!!?えぇ!?もしかして初恋~!!?」

「あ~、そうなるね。初恋、だね……」


そう呟いた後、結弦は頭を抱えて顔を真っ赤に変える。いつもは冷静沈着な結弦の珍しい姿に鱗は見入ってしまう。鱗は少し眉間に皺を寄せてから、結弦の肩から手を離す。


「私もそんなに経験があるわけじゃないから参考にならないかもしれないけど、何か質問をするとかは~?」

「質問?えっと…連絡先とか?」

「飛躍しすぎィ!!しゃべったことないんでしょ~?で、本屋のバイトさんなんだっけぇ?」

「うん」

「じゃあ、本の場所を聞くとか~?」

「…よし、わかった」


鱗のアドバイスを聞いた結弦はおもむろに立ち上がる。鞄を持って、「ありがとう」というと鱗の横を走って通り抜ける。親友の初恋を祈りながら鱗は立ち上がって、一人で帰ることにした。

 ぴろん!と入店の音が鳴る。どこにいるんだ?そう思いながら結弦は店内を歩きまわる。すると膝を折って新刊を入れ替えている後ろ姿の店員が目に入る。黒い髪をもち、少し癖が入った気質。白い肌に華奢な体。

結弦は前髪と服装を軽く整えてから、彼に話しかける。


「すみません、この本の場所を教えていただけないでしょうか?」

「いらっしゃいませ!かしこまりました、えっと…こちらです!」


一瞬体を震わせ驚いた結弦の好きな人、涼野光は立ち上がったあと案内を始める。冷静に見える後ろ姿だが、内心驚いていた。それは隠しきれておらず、足と腕が一緒に出ているような状態だ。しかし結弦も緊張しているためか、そのことに全く気付いていなかった。


「この本でよろしかったでしょうか?」

「はい、ありがとうございます。涼野さん」


名前を呼ばれたことで「ヒェッ!?」と息をのむような声が出る。

すると結弦は少し慌てた様子で、すぐさま謝る。


「すみません、名前書いてあったので…。不快にさせてしまいましたかね…?」

「あっ、いやそうじゃなくてッ!その……嬉しかったです…」


光は顔を真っ赤にして、結弦に本を渡す。思わず結弦も耳を赤くしてしまう。光がその場から去ろうとしたとき、結弦は光の手首を掴んで止める。光が振り返ると、結弦はニコッと爽やかな笑みを見せる。


「私の名前は千羽結弦。私と……と、友達になってくれないですか?」

「推しがかわいい………」


光は自分の心の声を止めることが出来ず、声に出してしまった。幸い結弦には聞こえていなかったようだが、光は我に返って再び顔の熱が集合してしまう。


「…いまは、仕事中なので。えっとあと30分後には上がるんですが……」

「わかりました、どこで待てばいいですか?」

「じゃ、じゃあ隣のファミレスで待っててもらってもいいですか?」


 結弦は光の提案に頷いて、手を離す。そして光が案内した本とほかの小説を買って、店から出て行った。光はまだ残っている手首の感覚に戸惑いながらも、笑みが隠せない。推しと話せたという至高の喜びを感じていた光は30分という長く感じる時間の中で新刊の入荷をすべて終わらせた。店長とほかのバイトの人たちに挨拶をして光は急いでファミレスに向かった。


突如後ろから「涼野さん」そう心地のいい声がする。そこには結弦がいた。結弦は光を席へと連れていく。推しと対面で座っているという状況の光も鼓動を大きく早くしていたが、好きな人と対面で座っているという状況の結弦もガチガチに緊張していた。何を言い出せばいいのかわからない二人の間に静寂が訪れる。それを破ったのは結弦だった。


「急にすみません。改めまして、千羽結弦です。涼野さんと友達になりたいです」

「あ、僕は涼野光です。えっと…何で僕なんかと?」

「…一目惚れです」


真剣な声でそういった結弦に対して光は顔を真っ赤にしてしまう。ファンサが凄い……、そんな事を思いながら光は「わかりました」と返事をする。


「友達になりましょう!!」


そういって握手を求めてくる光の手を握って、結弦は少し肩の荷を下ろす。手を離すと、光はスマートフォンを取り出す。何をするのだろうかと結弦が一挙一動を見守っていると、連絡先を見せてくる。


「えっと…友達ですし、連絡先交換しません?」

「いいんですか?是非ともお願いしたいです。あと、敬語やめませんか?」

「じゃあ、互いに敬語は無しってことで!!」


光はニコッと太陽よりも眩しい笑顔を見せる。心臓を撃ち抜かれた結弦はできるだけ顔に出ないように、耐える。結弦は恥ずかしさから逃げるためにメニューを取り出す。


「涼野さんは夕飯とかは決まってる?」

「いや、決まってないけど…」

「食べていかない?」


 結弦が勇気を出してそういうと、光は無邪気に頷く。まさか、好きな人と話せて、連絡先を交換して、食事までできるなんて…ここからどうすればいいのだろうか。そう思いながら結弦は光と一緒にメニューを見ながら悩む。


「僕はハンバーグステーキにしようかな、千羽さんは?」

「私は……オムライスにしようかな?」


二人は店員さんに頼んで、自己紹介をしつつ待つことにした。


「僕は19歳の大学一年生、高校の時は茶道部に入っていたよ!次、千羽さんね!」

「私は17歳の高校二年生、現在剣道部に入っている。えっと、好きな食べ物言い合わない?」

「…高校二年生!?え、未成年!!?大人っぽいと思ってたけど、年下だったんだね?」

「よく言われる、大人っぽく見てもらってたなら嬉しいな」


結弦が柔らかく笑うのを見て、光は心臓を痛める。かっこ可愛い……!!そうして二人はリラックスをして話せるほどには仲良くなった。店員さんが持ってきてくれた料理を食べながら、気兼ねなく話す。いつの間にか7時を超えていて、光は焦ったように聞く。


「門限とか大丈夫?もう7時を超えちゃったけど…」

「大丈夫です。理由と一緒にいる人をしっかり伝えて、日を跨がなければ許してもらえるので。」

「そう?よかった…、けどそろそろ解散しようか?」


 結弦は少し考えた後、うなずく。そして結弦はレシートを手に取り、光の先へ歩いてしまう。光は結弦を制止するが、止まる様子は一ミリともない。レジまで行ってようやく止まった結弦は光が近づいた時にはもうお会計を済ませていた。光は財布からお金を出して、結弦に渡そうとする。しかし結弦は聞いてはくれず、その申し出を断る。


「だめだよ!僕は年上なんだから出させて?」

「…じゃあ、次ジュース奢ってください」

「ジュースじゃ割に合わないから、ごはん奢らせて?」

「はい、次はどこかに遊びに行きましょう」


 二人は帰路へと着き、家に帰った。光は交換したメッセージの画面を見つめる。推しのファンサービスがすごすぎる…。やっぱりかっこいいな…、何か送った方がいいのかな?そう思いながら文を入力しては消すをベッドの上で繰り返す。やっぱりやめよう。そう諦めてベッドの上に放り出した瞬間だった。ピロンッ!と通知音が鳴る。心臓を跳ねあがらせて、スマートフォンの画面を確認すると千羽結弦からの受信があったことを伝えられる。光は急いでパスワードを開き、メッセージを確認する。


『今日はありがとう。早速だけど、遊びに行く計画を立てない?』

「こちらこそ、ありがとう!そうだね!いつなら空いてる?」

『土日は基本的に空いてる』

「じゃあ今度の日曜日はどうかな?どこ行こうか?」

『OK、涼野さんは遊園地とかは好き?』

「好きだよ!!遊園地、いいね!!」

『じゃあ、遊園地にしよう。待ち合わせは、瑠璃川(るりがわ)駅に10時でどう?』

「OK!」

『楽しみにしてる。おやすみ、よい夢を』


間髪入れない会話だったためか、ものの数分もしないうちに会話は終わってしまった。日曜日は明後日…、楽しみだな。そんなことを思いながら光は風呂に入って眠りについた。

そんな中、結弦はバタバタと慌ただしくしていた。持っている服を取り出す。主に黒く格好いい服が好きな結弦は日曜日何を着ていこうかと鱗にアドバイスを求めていたのだ。


『遊園地でしょ~?だったら動きやすいパンツスタイルのの方がいいかもねェ?』

「じゃあこれとかはどうかな?」


そういって結弦が取り出してきたのはパラッツォ・パンツ、いわばワイドパンツという物だ。鱗はスマートフォン越しに結弦が持ってきた服装をみて、少し悩む。確かにバラッツォ・パンツは結弦に似合っているためいいだろう。しかし、上の服装まで黒いとデート服には合っていないように感じる。鱗は白いシャツとブラウンのベストを結弦に取り出させて、合わせる様に頼む。


『うん、そのコーデ似合ってる~。さすがだなェ、ユヅ』

「ありがとう。じゃあこの服にする。」

『…月曜日に、絶対教えてねェ?色々聞きたいんだから~!』

「わかってる、本当にありがとう」


 そうして結弦は天気の良い日曜日を迎えることとなった。緊張する。どうしようか。もしかしたら、つまらなくさせちゃうかも。どうしよう。そんな荒れた心情の中で、駅に向かって歩いているといつの間についてしまっていたようだ。結弦は不安を抱えながら、光が待っているかを確認する。どうやら結弦の方が早かったようだ。よかった…と肩を撫でおろした瞬間だった。後ろから声を掛けられる。


「千羽さん!お待たせしたかな?」

「いや、ちょうど来たところだよ。おはよう、さっそく行こうか」

「うん!楽しみで待ち遠しかったよ!!」


電車に乗ると、日曜日ということもあってか人が多い。座れなかったため二人は壁側に立つ。エスコートをしている結弦が人を背にし、エスコートをされている光が壁を背にする。光は顔を見ようと、少し顔を上げる。すると結弦とバチッと目が合ってどこか照れくさい空気が流れる。


「…千羽さん、身長高いね?何センチなの?」

「前に測った時は175センチだった。」

「え~!いいな!僕163センチしかないんだよ~!」

「…そのままがいいと思うけどな」


結弦がぼそっとつぶやいた言葉を聞き逃さず、光はその言葉に顔を赤らめる。すると急に結弦の背中にドンッと衝撃が当たる。より混んできたな…、と車内を視認する。光の事を押しつぶしてはいないか、と心配になってそちらを向くと思ったより体同士が密着しており、急いで一歩離れる。


「ごめん、近かったね」

「嫌じゃないし大丈夫だよ!」

「…そう」


嫌じゃないのか…、少し気分が高鳴る。結弦は光の耳元で「次の駅で降りるよ」と囁く。光の体は一瞬固まり、耳を真っ赤にする。どうやらこの声は武器になるということを結弦は理解し、心を躍らせる。駅に着き、降りることになる。しかしかなり混雑しているせいではぐれそうになる。すると手を掴まれ、引っ張ってくれる。


「大丈夫?結構混んでたね?」

「うん、ありがとう。かっこいいね…」

「そ、そう…かな?」


 二人は駅のホームから出て、バスに乗り込む。最初はなににのろうか、お昼はどこで食べようかなどを話しながら遊園地の方へと向かって行く。結弦は二人分のチケットを手際よく買ってきて、光にわたす。


「あ、ありがとう!えっと…800円かな?」

「早く入ろう?」


光がお金を返そうとするが、結弦は武器になるとわかった声を早速活用して、丸め込む。先ほどバスの中で決めていたバイキングの列に並ぶ。二人で待ちながら楽しみだね、と話す。すぐに順番は来て、安全バーを下ろす。ゆらゆらと動き始め、徐々に周りのお客さんの悲鳴も聞こえてくる。


「わ、思ったより怖いねっ!!?」

「…手つなぐ?」

「うん!!」


結弦が断られるであろうと思いながら提案した手をつなぐという案が通ってしまったことに動揺が止まらない。アトラクションどころではなく、結弦は光の体温に意識が持っていかれる。いつの間にか勢いは弱くなっており、光が「楽しかったね!」と聞いてくる。結弦は頷いて、二人でアトラクションを降りる。


「じゃ、次は空中ブランコのろっ!!」

「うん、涼野さんは絶叫系もすき?」

「うん!!あ、千羽さんは苦手だった……?」

「いや、私も好きだから一緒に楽しめて嬉しくて…」


結弦がそういうと、光も満面の笑みで「僕もっ!!」と言ってくる。その笑顔に安心して、まだつないでいた手をぎゅっと優しく包む。二人は空中ブランコに乗ったあと、昼食を食べに屋台へと足を運んだ。外で食べれる場所があり、屋台のメニューには焼きそばやサンドイッチ、カレーなど多種多様な料理が売っているようだった。光は結弦に「何食べる?」と聞いてくる。


「サンドイッチとアイスティーにしようかな」

「じゃ、僕も注文決まったし頼みに行こっか!ここは僕に払わせてね?」


光はそういって、店員さんに注文を行ってお金を払う。結弦はトマトやレタスなどが入ったサンドイッチとカランっと氷のぶつかる音が聞こえそうな透き通ったアイスティーを、光は玉子サンドイッチとオレンジジュースを頼む。


「ハハッ!こんな風に誰かと遊びに来たの久しぶりだよ!遊園地って提案してくれてありがとう!!」

「喜んでもらえたならよかったよ。この後はコーヒーカップでも全力で回しに行く?」

「うん!!コーヒーカップ久しぶりだ~!!」


 結弦は光の喜んでいる姿を見ながら、優しく微笑む。この時間がずっと続けばいい。涼野さんともっといろんなところいきたいな。そう思いながら、食べ終わったゴミを捨てて、コーヒーカップの方へと歩いていく。


「千羽さんはコーヒーカップいつぶり?」

「小学生……?ぶりかな。涼野さんは?」

「僕もそのくらいかな!懐かしいね!」

「そうだね」


 コーヒーカップに並んでいる人はあまりおらず、そのまま入っていくことが出来た。光はワクワクしながら回すところに手を置いてスタンバイをしている。音楽とスタッフさんの合図で周り始め、光は全力で回す。結弦も光の事を見ながら、回すのを手伝う。あまりにも早いせいで、互いが互いの事しか見えない。周りはぼやけていて、どれだけ早いのかが分かりやすい。

 結弦は「フフッ!フ、フフフ!!」と声に出して笑い始める。光は思わず手を止めて、結弦のその笑顔に釘付けとなってしまう。可愛い。そんな感情で溢れる。音楽がゆっくりになり、コーヒーカップの動きもゆっくりになり、徐々に止まった。結弦が先に降りて、少し足元のおぼつかないまま光の事を支えようと手を伸ばす。


「涼野さん?大丈夫?」

「あ、うん!!大丈夫!楽しかったね~!!わ、足元ふらふらだ!!」

「そうだね、まっすぐ歩けないや」


光は結弦に呼ばれたことで現実に戻り、手を借りてコーヒーカップから降りる。コーヒーカップから降りた後、休憩もかねて近くのクレープ屋で結弦はイチゴクレープを、光はチョコバナナのクレープを買って食べる。


「涼野さん、こっちも美味しいよ。食べる?」

「いいの?じゃ、一口交換しよっ!!」


 そういって結弦の提案で互いのクレープを交換して食べることにする。自身で提案したことのはずだが、結弦はチョコバナナのクレープを持って固まっていた。そういえばこれって間接キスでは…?私の心臓が持たない。やはりやめよう…。そう思ったときにはもう遅く、光はイチゴクレープを一口食べていた。結弦は覚悟を決めてチョコバナナのクレープを小さく一口食べる。鼓動が激しく主張を始め、うるさい。光はそんな事もつゆ知らず、イチゴのクレープを結弦に返す。結弦もチョコバナナのクレープを光に返して、イチゴクレープを食べ進める。


「美味しかったね!」

「…うん。結構暗くなってきたね?最後に観覧車乗ろう」


 結弦は覚悟を決めて観覧車に乗り込む。ここの観覧車は夜景が綺麗ということで有名だ。結弦は抑えられない気持ちをこの観覧車で伝えようと勇気を出すことにしたのだ。綺麗だね!とはしゃぐ光を見ながら、うるさい鼓動をどうにか落ち着かせる。ついに頂上まであとわずかとなった瞬間、結弦は光の方をまっすぐに見つめる。


「涼野さん。伝えたいことがあるのだけど、少し良いかな。」

「ん?どうしたの?改まって…?」

「私は貴方に恋をしています。出会って数日では考えられないかもしれませんが、付き合ってくれませんか。」

「……ひゅぇっ…‥‥?」

「…返事は一週間後までには欲しいです。」


 綺麗な夜景の中、二人は心臓を激しく働かし、顔を真っ赤にしていた。これはどうゆうことなのだろうか。僕が告白された…?推しに??これは何かのイベント?などと現実を受け止めきれずに光は止まってしまう。しかし目の前で顔を真っ赤にしている推しを見れば、これが本気だということくらいは恋愛をしたことのない光でもわかる。光と結弦は何も言わずに観覧車を降りて、帰宅する。

 次の日となり、鱗は結弦にしつこく話を聞く。


「え~!?!昨日初めて遊びに行ったのに、告白したのォ!?行動早くない~!!?」

「軽率な行動だったとは反省しています……」

「…結弦は本気でその人の事好きなの~?」

「うん。」


鱗は真っすぐな結弦の綺麗な茶色の瞳に少し笑って、「そっかぁ…」と呟く。少し落ち込んでいるような様子の鱗に結弦は心配そうに、「どうしたの?」と声を掛ける。すると次の瞬間、鱗はいつもの明るい笑顔に変わっていて「絶対叶えろよ~!」と結弦のこめかみ狙って軽くデコピンをする。結弦は平気そうな鱗の姿に心配しながらも、いつも通りにふるまうことにした。


 どうしようかと一人暮らしの部屋でつぶやく。千羽さんの事は好きだ。ただ、それが推しとしての好きなのか、恋愛感情としての好きなのかわからない。そんな中途半端な思い出付き合ってはいけないような気がする。光はため息をついて、結弦の笑顔を思い出す。そんな中で思ったのは「会いたい」ということだった。


 一週間は軽く過ぎてしまい、返事は光の要望で駅の前でということになった。結弦は緊張した面持ちで駅の前のベンチに座る。心配すぎて付いてきた鱗が結弦の恰好が変ではないかと確認する。


「ユヅ、顔上げて?ユヅなら大丈夫。私の幼馴染で親友なんだから。幸せにならないとだめだよ~?」

「…うん、ありがとう。鱗……」


二人はおでこをくっつけ合う。しばらく待って時間がたつ。約束の時間から10分経っても光は来ない。断られてしまったのかな…?と思いながら、結弦は30分経ってもなお待っていた。雨がぽつりぽつりと降り始め、体が濡れてしまった。しかし結弦はそれでもその場で光を待ち続ける。


光はそんな中、家に戻っていた。なんだ、やっぱり冗談だったんだ。かわいらしい女の子とキスしてた。僕はただ勘違いしていたやばい奴だ。推しに裏切られたという喪失感と、虚しさで押しつぶされる。最悪だ。光は次々と溢れ出てくる涙を抑えたく、大好きな本屋に傘を持って向かった。あぁ、この作家さんの新刊出てたんだ…。買わなきゃ。


「あっ……」


いつの間にか足を運んでいたのはあの日千羽さんに初めて声を掛けられて案内した本の場所。その本も取って、レジへと向かう。レジに並んでいると、後ろで並んでいる女の子たちの話が聞こえる。


「さっきさ!駅のとこのイケメン!!やばくなかった!!」

「カッコイイよね!!今から傘買って、渡しちゃう?」

「あの茶髪も茶色の瞳もマジで綺麗!!てか、誰か待ってたのかな?」

「話しかけようか話してるときずっといたままだったもんね…?」


茶髪で茶色の瞳。駅で誰かを持っているイケメン……。まさかッ!!そう思った光は本を買うのをやめて、傘を持って駅へと走る。すると案の定そこには結弦がいた。雨に打たれ、全身がびしゃぬれになっている。僕が連絡も入れずに帰ったから?あれから一時間以上は経っているのに、何で帰ってないんだよ……。遊びなんだったら帰ればよかったのに……!!光は結弦の元へ走る。結弦はゆっくりな動作で光の事を見て、微笑む。


「来てくれくれたんだね…、ありがとう……」


指先や鼻先は真っ赤に染まり、目の下には涙の痕がある。光は傘を結弦に差し出し、怒鳴る。


「何でずっと待ってるんだッ!!僕は約束をほったらかしたんだぞッ!!それに千羽さんだって彼女さん居るんだろ!!?さっさと帰ればよかったじゃん……!!」

「…彼女?」

「さっきキスしてたじゃん……!」

「キス……?…ごめん、ソレたぶん親友」

「…へ?」


結弦の言葉に光は早とちりしてしまっていたことを理解する。勝手に勘違いして、勝手に嫉妬して、勝手に約束をやぶってしまった…。幻滅されてしまったかも…。一気に顔を青ざめていく光に対して結弦は優しく問いかける。


「涼野光さん…返事をくれませんか」

「…僕も好き……!!ごめんね…、こんなに体を冷やさせてしまって……!!」

「フフッ、それだけ嫉妬してくれてたんでしょ?愛されてるって過信してもいいのかな?」


結弦がそういうと、光は彼女の細長く、冷たい手を取る。そして水だまりに片膝を着き、まっすぐと結弦を見つめて、勇気をもって言葉にする。


「愛してます!千羽結弦さん!!」

読んでくださりありがとうございます!


下にある、☆☆☆☆☆を塗っていただけるとありがたいです!


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⇒@Mirai_Kae0612

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― 新着の感想 ―
[良い点] 全体的にほっと温かくなる小説でした。 すごく面白かったです。 [気になる点] もう少し転機を主張した方がいいと思います。
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