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MASK 〜黒衣の薬売り〜  作者: 天瀬純
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七草 《労り》

 ちらほらとニュース番組で紹介される桜の開花宣言は、お酒の消費量が増え始める合図でもある。


 親しい者たちと飲みに行く人、付き合いで飲まざる得ない人など。


 度重なるお酒の席と確実に増える酒量を介して人々を苦しめるのが、“胃もたれ”と“二日酔い”。なので桜の開花時期になると、お店ではあるメニューがよく注文される。


『春の“(いたわ)り”定食』

・日替わり薬膳粥

・冷奴

・厚焼き卵

・アサリとシジミの味噌汁

・食後の珈琲 or 紅茶 (ホット or アイス)


仕入れによっては多少の変更もあるけど、基本的には肝臓や胃腸の働きを助けて二日酔いからの回復を促す献立を考えている。


「唯ちゃん、これだよ。私が言ってたの」


「へぇ~。これが噂に聞く…。美味しそうですね、先輩」


新入社員が会社の先輩に連れられて“労り”定食を食べに来るのも、このお店の恒例だ。カウンター席に座る、この2人の女性のお客さん達もそうなのだろう。


 食材の大半が妖の仲間たちから仕入れており、どれも高品質で抜群に美味しい。なのでお客さん達からの評判は、かなり良い。良いんだけれど、二日酔いや疲労でゾンビのような顔で来店されたお客さんが、“労り”定食を食べ終えて会計を済ませる頃には生き生きとした血色の良い顔になって職場に戻られることが時折見受けられた。気になった私が、生産者である妖たちに確認してみると、


『俺たちが育てた作物は栽培方法にもよるけど、大地の生命力を溢れんばかりに取り込んでいるんでな。それを食べた者にも多少の影響があるんだろうて。まっ、悪いことは起きてないからいいだろ?』


とのことだ。つまりこのお店で扱う食材は、薬膳料理としての効能が異常に高くなっているのだ。それも人智を超えたレベルで。


「この定食を食べるとね、どんな二日酔いも直ぐに治って、助かるんだよね~」


「そんな直ぐに効くんですか、先輩?」


(……効くんです、はい)


他のお客さんの会計をしながら、私は心の中で答えた。

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