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MASK 〜黒衣の薬売り〜  作者: 天瀬純
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年明けの再会

 日付が変わり、新年を迎えた午前1時過ぎ。


 カセットテープでジャズを聴きながら寛いでいた俺は、突然尋ねてきた友人と囲炉裏を囲みながら珈琲を飲んでいた。


「いやぁ、年明けの珈琲は良いですねぇ~」


『何が良いですね、だ。新年早々、(めし)をたかりに来やがって』


昨日俺が作っておいた雑煮を食べ終えた友人は、満足気に微笑みながら食後の珈琲を楽しんでいる。


(まったく。そんな顔されると怒る気にもなれん)


思えば、こいつとは長い付き合いになる。各地で結界を張ることを生業とする俺が駆け出しの頃からの腐れ縁だが、【近しき仲にも礼儀あり】という言葉の存在につい疑問を抱いてしまう。


『それにしても、お前が鬼の姿のまま俺の家に来たときは流石に驚いたぞ。いつ以来だろうな、あの姿のお前を見るのは?』


スーツの上着を畳んで傍に置き、カーディガンを羽織って寛ぐ友人に尋ねる。


「ちょっと出先で、妖たちの隠れ里に踏み入ってしまった若い学生さんたちを見かけましてね。わざとではないようでしたので、祟られた彼らを助けに行ったんです。里の入り口近くとはいえ、辺り一面殺気立っていたので、仕方なく自己防衛も兼ねて変化(へんげ)したんですよ」


『…大丈夫だったのか?』


「ええ、一応。祟られた学生には【祟り(くだ)し】の矢を使いましたし、里の方々には、初日の出を拝もうと近くにいた人間たちの前で里の結界が薄れてしまったことによる事故だと説明して怒りを鎮めてもらいました」


『事故ねぇ…』


おそらく友人は()()()()を報告するために、変化したまま俺の家に来たのだろう。


『結界に“穴”ねぇ…。人間社会から離れて自分たちの営みを守るために結界を張ってきたが、(とき)の移ろいとともに術者や里の警戒心が薄れたのか、あるいは結界自体の強度や仕組みに原因があったのかもしれないな』


「…そうですか。薬売りの私にとって、結界は専門外ですので」


『他にも何か起こるようなら、俺に声をかけてくれ。よほど閉鎖的な里でなければ、俺が行って助言することもできるからよ』


「ありがとうございます」


気になった俺は、友人から里の場所を聞き、スマートフォンのメモ機能に書き残した。その後、薬売りの友人から日常生活で何かと必要になる風邪薬や傷薬などを購入したり、彼が最近調合した薬について聞いたりして、久しぶりの再会を楽しんだ。


… … …


… …



「では、そろそろ…」


 俺と大分話し込んだ友人は、外がまだ暗いというのに帰り支度を始めた。


『おい、漆黒』


「はい?」


俺は、上着を着て土間にある革靴を履こうとする友人を呼び止めた。


『お前、祟られた奴に触れたんだろ? てことは、多少なりともお前にも影響があるだろうから、俺が祓ってやるよ』


二宙(にそら)さん。お気持ちは嬉しいですが、私が抱えている物と今回の影響を区別して祓うのは至難の業かと思いますが?」


振り返った友人は苦笑いしながら、頭を掻く。


『一応だよ、一応』


そう言って、俺は彼を前に簡易的な儀式をしてみる。案の定、いつも感じる手応えはなかった。


『…終わったぞ』


「ありがとうございます。妖の中でも旧知のあなたに久しぶりに会えて良かったです」


『おう、またな』


俺が玄関で見送ると、友人は黒い霧となって去って行った。

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