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第53話 離間の計

信頼配下、書類上は存在しない、または確認できない4000人の軍勢が動きました。

と言っても、4000人という数字は少数です。


彼らを正面からクラブ帝国軍にぶつけるのは自殺行為でした。

なので、彼らはある工夫をして、クラブ帝国軍に陽動を仕掛けました。

それは、クラブ兵が一般人に乱暴狼藉を働いている時を見計らって攻撃するというモノでした。


たとえば、一般人の家にクラブ兵がいる時に、不意打ちを仕掛けるとか、略奪をしている時に攻撃するなどです。

クラブ兵士たちははにわ市での略奪に慣れきっていたため隙だらけでした。


ここで、信頼は工夫の入った指示をだします。

それは、攻撃する時にまきぞいになっているはにわ市民が一般人の場合、彼らが嫌がらない限り撤退時に一緒に連れて行くという作戦です。


要ははにわ市に人質になっている人々を開放するということです。

これは、タイミングが大事でした。

クラブ兵がもし、警戒していたらこの作戦は上手くいきません。


なので、彼らが安心して略奪するようになるまでの時間が必要でした。

緊張感もなく、他にやることもないクラブ兵相手だからこそ、比較的安全な状態で攻撃することが出来るのです。


もちろん、罠であったり、敵が慎重に迎撃してきた場合には即時撤退するように指示が出ていました。

このあたりの差配は、かつて乱取りという略奪を戦術に組み込んでいた武田の得意分野です。


戦争は綺麗ごとではないことを人生の中で骨身に沁みて学んだ武田の主だからこそ出来る判断でした。

さて、これだけでもえげつないですが、さらにえげつないことを信頼は指示していました。


それは、一般のはにわ市民ではなく、ラッキー・ホット・コモリの一党や協陽党の協力者たちが襲われていて、それを助けた場合には原則として彼らをそのままにして立ち去るというモノでした。


この作戦のえげつなさは、彼らを餌として何度も襲撃をする機会をうかがうことが出来るというのがあります。

また、酷な言い方ですが彼らが戦闘中死亡しても良いという判断もありました。


つまり、裏切り者に対しては慈悲を与えず戦術的な餌になってもらおうと言う事でした。

これが普通の軍隊であれば、異議を唱えられるでしょうが、この命令を受けたのはラッキーたちや協陽党の協力者に家族を間接的に奪われた人々です。


なので、彼らがクラブ兵士にどのような扱いを受けようが因果応報だと考える者たちがほとんどでした。

でも、これも仕方のないことです。


ラッキー・ホット・コモリや協陽党の面々は自分たちだけは助かるとたかをくくっていたのです。

そんな連中に慈悲を与える気など、司馬家の人間も彼らに味方した4000人の復讐者にもありませんでした。


こうした、小さな戦闘を繰り返すことで司馬家の軍勢の訓練度も上がっていき優秀な兵隊が増えていきました。


さて、はにわ市内部でこうした動きが散発的にある中、輪の国の他の地域はどうなっているのか?

次回はそのお話です。

登場人物 

司馬馬括しば ばかつ       長男 紙上談兵の人    

司馬趙謖しば ちょうしょく    次男 泣いて○○を斬るの人 登山家

司馬信景しば のぶかげ      三男 一乗谷 越前の朝倉の人

司馬信頼しば のぶより      四男 甲斐の虎の四男

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