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第34話 ゴブライナ戦争と輪の国

ゴブライナとクラブ帝国との戦争は断続的に続いていました。

国力比は約1対3で小国のゴブライナに勝機は薄いかに見えました。

しかし、この世界の覇権国である美麗七州国が全世界に向けてゴブライナを応援するように宣伝しました。


その結果、他の国は戦争には参加しないものの、ゴブライナに役に立つ兵器を送りました。

たとえばエルフの国EUは最新型から二世代前の爆発型魔石を大量にゴブライナに運搬しました。


この魔石のおかげで、クラブ帝国の主力兵器である巨大なゴーレムに対して何とか戦うことが出来ました。

しかも、これらの兵器は安い兵器なのでクラブ帝国も躊躇します。


なにを躊躇するかというと、クラブ帝国には全世界でも一番の拡大爆発魔石の保有国で、全力でこの魔石を使えばゴブライナなど敵ではありません。

しかし買った後のゴブライナの領土はまるで焦げた魚料理みたいに無価値で食えないものとなります。


ゴブライナという国とその軍隊が中途半端な強さの為にこうしたことが起きました。

クラブ帝国には拡大爆発魔石の他にもワイバーンやドラゴンといった空中戦で圧倒的な強さを誇る兵器もあるのですが、これもコストパフォーマンスが悪いためにほとんど使えませんでした。


視線を変えると、ゴブライナとクラブ帝国を結ぶ小さな海もあり、そこには船やダイオウイカなどもいましたが、ここでも中途半端なゴブライナの強さのためにクラブ帝国は苦戦していました。


クラブ帝国大皇帝バウバウカーンは何度も総攻撃をしようと悩みましたが、自分の財布が痛むだけという側近の言葉に黙ってうなずくしかありませんでした。

しかし、ゴブライナが有利かというとそうでもありませんでした。


なにしろ、戦場のすべてがゴブライナ領内で行われているためにクラブ帝国は軍隊以外は痛みを伴いません。

おまけに、国内の畑がボロボロになるためにその地域で働くゴブリンたちはとてもつらい思いをしていました。


そして、何より救いがないのは双方の下級兵士です。

彼らの多くは輪の国の学生のバイトよりも安い値段で働かされています。

実のところ、給料分の働きがしたいなら現地調達しろ!というのが軍部の本音でした。


攻めているクラブ帝国の兵士たちはあらゆるものを強奪しました。

なにしろ、クラブ帝国からは紙切れ同然のわずかなお金しか支給されません。

食べ物すらもらえない兵士も沢山いました。


そうした兵士がどうするかと言えば「略奪」しかありません。

クラブの兵士たちは食料から魔石、電化製品まであらゆるものをゴブライナから奪っていきました。


もちろん、ゴブライナの兵士もそれを見逃しません。

奪い返すために戦闘を行います。

そして運よく奪い返したら、自分たちの物にします。


元の持ち主に返すなどというお人よしはまれにしかいません。

戦場とは無法地帯なのです。

そして、無法地帯と言えば略奪と暴行が当たり前のように尽きます。


戦場とは不思議なもので、まるで暴力のバフが効いているのかと思う位暴行や女性、子供への虐待が付きものです。

ゴブリンにも良心はあるのですが、そうしたものが戦場ではぶっ飛んでしまうのです。


殺してからことに及ぶ者、事に及んでから殺す者、どちらが多いという話ではなく、それらは兵士たちの精神安定のための娯楽のような手軽さで行われていました。

なにしろ、両国の軍隊は表向きはこうした暴虐を禁止しているものの、実際には見ぬふりをして推奨していることがほとんどでした。


むしろ、良心の咎めを受けて、止めようとする兵士を、他の兵士が殴ったり、殺したりすることが当たり前の世界です。

異次元とはいえ、同じ世界でこうしたことが起きている。


瓦版や吟遊詩人たちの歌によってこうした事実は輪の国にも伝わってきました。

しかし、最初こそ衝撃的に情報を受け入れたものの、報道が慣れてくると輪の国の民は他所の戦争に関心が薄くなっていきました。


それとは逆にバウバウカーンは輪の国にその邪悪な目を向けつつありました。


登場人物 

司馬馬括しば ばかつ       長男 紙上談兵の人    

司馬趙謖しば ちょうしょく    次男 泣いて○○を斬るの人 登山家

司馬信景しば のぶかげ      三男 一乗谷 越前の朝倉の人

司馬信頼しば のぶより      四男 甲斐の虎の四男

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