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第30話 明石元二郎から学ぶスパイ講座

明石元二郎、日本を代表する諜報で歴史に名を残した人物です。

彼のスパイ活動の成果について、数十万の兵に匹敵すると当時の軍人やドイツ皇帝が褒めたたえた点からも彼がすさまじい人物だということが分かるかと。


彼の言葉として伝わっている興味深い話があります。

「スパイで一番信用できるのは金で雇われた者である」


これは、私見なのですが思想や恨みなどでスパイになった人間は人の指示を聞かない傾向があったのではと思います。

我が強い人間は、人の指示よりも自分の判断を優先しがちです。


しかし、お金で雇われた人間はその報酬の分だけ働こうと考えるので、余計なことをしないのではないか?

趙謖はスパイに関する書物を勉強しながらそのように考えていました。


彼の妻、ダーク・ムーンは才媛であり趙謖のような鼻につくインテリの話でもついてくることができました。

彼女の外見が女性として見劣りすると周りに言われても、夫はそのことになんの関心もありませんでした。


むしろ、自分の話についてくる知性を思えば、外見など小さなことだったのです。

彼はこの明石元二郎についての話を彼女に振ってみました。

すると彼女は「スパイが金によって雇われるのが優秀ということであれば、司馬家の情報部には金に動かない人物を用いるのが上策ですわ!」


夫は何故か尋ねます。

「情報部に必要なのはスパイではなく、スパイを用いる者、管理する人材です!それは磁石のように互いの特質が逆の方が良い結果を招くと考えます」


夫はその答えに満足しました。

流石は俺の妻!というところでしょうか。

さらに情報部の人材について夫は妻に尋ねます。


すると彼女は「金に転ばない地味で外国の影響をあまり受けていない人がいいですね。ただし、あまり愛国的な人は目立つのでダメ!」


他には?

「スパイは真面目な人間が少ないので、逆に真面目な人間がいいです。輪の国にはそういう人は多いでしょうから」

「そして自己主張の少ない人、これも凄く大切です!」


趙謖は笑いながら「分かった!分かった!!十分参考になったよ、組織を作るまで大変だと思うがよろしく頼むよ」

ダークムーンはしゃべり過ぎたのが恥ずかしかったのか、顔を赤くしていました。


趙謖はさらにスパイに関する書物を読み漁りました。

そして、読み進める毎に彼の仕えた丞相を思い出します。


「思えば丞相は大きな作戦を行う前には必ず草のスパイを送り、現状の把握と噂を広めておられた、時空を経てなお、丞相ははるか遠くを見ておられたのが分かる」


「真面目で地味で自己主張のない者か。私も気を付けなければならないな」

趙括は己を省みてから思います。


「私の時代にもスパイは沢山いたが、この輪の国はスパイとそれに影響されている民や官僚が多すぎる!これが後で災いにならなければよいが・・・」


そのような事を考えていくうち、司馬家の私設情報部だけでなく、もっと大きな組織が必要ではないかと趙謖は考えるようになりました。


この点で一番理解があるのは長男の馬括です!

全開の話し合いの時にも、ほとんど反対意見はありませんでした。


それにお国柄の違いでしょうか?

スパイに関する嗅覚という点では日本より中国の方がより敏感というべきという結論に達しました。


というわけで、情報部に関するさらなる構想の深化を話し合うべく趙謖は馬括の元に会いに行くことにしました。

登場人物 

司馬馬括しば ばかつ       長男 紙上談兵の人    

司馬趙謖しば ちょうしょく    次男 泣いて○○を斬るの人 登山家

司馬信景しば のぶかげ      三男 一乗谷 越前の朝倉の人

司馬信頼しば のぶより      四男 甲斐の虎の四男

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