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異世界タダヤス  作者: 多田 康史
4/20

ゴブリン退治

旅路を行くものが二人いる。


一人は駆け出し冒険者、ショートソードと各部を革の防具で覆っただけの簡素な装備。


何も持たない青年が旅支度をさせてもらえたと思えばいい方だろう。


もう一人の出で立ちはサビて緑色になった猫耳ティアラ、その下の顔は絶世の美少女である。


ただ問題なのが装備の汚さ外套(マント)は所々穴が開き、ほつれ、変色している。


更に服も黄ばみいったいいつから 着替えていないのだろうというあり様。


ギルドに預けてあったという杖ももとはそこそこな物であったのかもしれないが杖の頭部は汚れ、頭部にはめ込まれているの宝石はくすんでいる。



クエストの説明などはギルドの外で受けた。


これだけ臭いのがいれば当然かもしれないが。


ギルドの中にリセを呼んだのは失敗だったのかもしれない。


多かれ少なかれタダヤスにも顰蹙(ひんしゅく)がいっただろう。


ただ一つ意外だったのはリセが受付に何かを渡した後の対応の変化であった。


結果仕事と装備一式まで手に入れる事ができたのでそこはリセに感謝だ。


「目的のゴブリンたちが居るであろう場所まで結構かかるんだろ?」


「私の記憶からすると1日はかかると思う」


「二日以上かかってあの報酬誰かほかに行かなかったのか?」


「話によるとどうやら裏がありそうって」


「裏っていうのは?」


「二組の冒険者が旅立って帰ってきていないそうよ」


「それを俺たちにどうにかしろって話かよ嫌な予感しかしないぜ」


「そうは言ってもここまで良い仕事滅多に紹介してもらえないわよ」


「前向きに考えるか」


「さあパン泥棒のクッサイ美少女さん。俺たちは一緒に旅に出ることになったがお互いを全く知らない道すがら自己紹介でもしようじゃないか」


「確かに何も知らない仲ねそれと臭いは余計よ」と膨れるリセ


「美少女と言われるのはうれしいけど誰もそんなこと言わないからあいつ以外」


何か嫌なことを思い出したようだ。


「俺はタダヤス精霊の遣いの妖精といろいろあって異世界からやってきた一般人だ」


「やはりこの世界の住人ではないということ?」


そう驚いた様子だ。


「そういうことだ。本当は勇者を連れてきたかったようだが近くにいた俺しか選ぶ暇がなかったんでな。」


「変わったこともあるのね、ただ妖精がそういったことを行うというのは聞いたことがあるわ」と(いぶか)しむ


「それでこの世界に放り出されたのが昨日さ」


「あなた変わっているわね。いきなり生活基盤を築くのに冒険者になろうだなんて」


「冒険者と聞いて憧れが先行してしまった。」


「普通はもっとこの世界のことを知ってから挑むものじゃない?」


「そういうものかな、やりたいことに突き進むっていうのも大切だと思うぜ」


「同じように憧れで冒険者になったけどこの仕事不安だわ」


「なぁに危険そうだったら走って逃げればいい今度は足を掛けたりしないぜ」


「あの件はいいのよ私が悪いのだし」


「私はリセ・ガーランド。かつての没落貴族の三女で各種魔法が少しだけ使えるわ、ただゴブリンぐらいだったら殴って倒すわ」


そう言って杖の頭を見せつけてくる。


確かに汚れている。


「君も憧れで冒険者になったようだが何があったんだい?」


「昔読んだ物語のせいよ勇者が妖精とともに魔王を倒す物語私の一番好きな物語」


「うん物語はいいな冒険譚。俺も本に描かれるような冒険をしたいぜ」


そして今日のキャンプ地についた。


「普通のゴブリンだけなら数が居ても私は大丈夫よ」


そう言いパンをおいしそうに食べるリセ。


そんなかわいい顔に見とれながらも。


そっと匂いが届かないよう距離を離し自分も夕食をとる。


そして

「せいぜい頑張らないとなゴブリンには負けないくらいには」そう息巻くタ

ダヤス。


翌日


ゴブリンの群れはすぐに発見できた。


十数匹程度の群れだ。


奇襲を掛けましょう。


奇襲を受け4匹程度が倒される。


慣れた手捌きでゴブリンを倒していくリセ。


杖で後頭部を的確に殴打しその間に魔法を詠唱する。


「ファイアボルト」


「ファイアボルト」


「ファイアボルト」


魔法と殴打のコンビネーションで次々とゴブリンの群れを駆逐する。


「くっ数が多いなとんだクエストを受けちまったもんだ」


愚痴を言いつつショートソードでゴブリンを倒すタダヤス。


「ねぇあなた大丈夫だいぶ数に押されているようだけど」


そう心配するリセ。


「まだ余裕があるよ」そう答えながらゴブリンを倒す。


二人で十数匹のゴブリンを倒す。


二人でと言ってもリゼの方が多く倒しているが流石は鉄等級冒険者だ。


かなりの数をたおした終わりが見えてきたと思った矢先ゴブリンに援軍が来る。


がたいの良い2匹のゴブリンと他の者たちとは違った風貌のリーダーらしきゴブリンさらに10匹程度のゴブリンたちが現れた。


元居たゴブリンたちは援軍に合流し何やら話し合っている。


「こちらに魔法使いがいるのを分かっているのかしら」


リセは詠唱を始める。


タダヤスは内心心配だ初戦闘での疲労と別個体のゴブリン。


いざという時のために逃げる準備にかかる。


そう辺りを見回しているとがたいの良い二匹のゴブリンがタダヤスめがけて走り来る。


一匹との攻防、鍔迫(つばぜ)り合いで火花が出る。


そのすきにもう一匹のゴブリンがタックルでタダヤスを突き飛ばす。


「ファイアボール」


リセの詠唱が終わったようだ。


ファイアボルトを十は重ねたような大きさの火球が十数匹のゴブリンを襲う。


「固まってくれたらこっちのもんよ」


そしてタダヤスの状況見て目を奪われる。


タダヤスは突き飛ばされ木にぶつかり一瞬気を失った隙に拘束される。


「オマエモ状況ヲ見ナスギ」


ゴブリンリーダーがそう言い。


リセに足を掛け、転ばせ首に、剣を突き立てる。


一瞬の油断だった自身の戦闘にかける自信ゴブリンごときに負けるはずがないと。


「油断したなとはいえこちらも戦力を削られすぎた。お前はたくさんなぶってから殺してやろう。まずは男を殺せ」


「分カッタ」そうゴブリンが答える。


タダヤスは自分の運命を悟った。


ここで死ぬのだと。


タダヤスから奪ったショートソードを首にあてがう。


「待って頂戴殺さないで」


必死にリセは命を乞うがゴブリンリーダーは剣の柄でリセを殴りつける。


リセは恐怖から失禁してしまう。


「ナンダコノ女漏ラシヤガッタ」


大笑いするゴブリンリーダー。


タダヤスの首に触れたショートソードから血が滴るジワリと首の皮を切る感触。


あの日と同じ嫌な感触。


「こんな死に方いやだ~!」


高ぶる感情かつての嫌な記憶・走馬灯。


そんな中声が聞こえる。

「力を貸してあげる。あなたは私のお気に入りだから。その暗い感情も含めてね」


次の瞬間、暗い水晶の様な結晶がゴブリンたちを貫く。


それと共に気を失うタダヤス。


ぐちゃり、ぐちゃり、ぐちゃり、リセはゴブリンたちの頭を杖の先端でつぶしていく。


「私がゴブリン程度に命乞いをするなんて」


力を入れすぎた杖には血が滴っている。


「どうなった」と叫び目を覚ますタダヤス。


目の前の光景に呆気(あっけ)を取られる頭を次々とつぶされるゴブリン。

「こんな奴らに、こんな奴らに」リセはタダヤスを気にすることもなく。


さらにぐちゃりとゴブリンの頭をつぶす。


すると1匹のゴブリンが死んでいなかったようでリセにとびかかる。


「危ない」そう言い、そのゴブリンに、剣を突き立てるタダヤス。


間一髪だったここまで来て死ねるか。


転んだリセに手を差し伸べるタダヤスその手を取り立ち上がるリセ。


「今はまずこいつらすべてにとどめを刺しましょう」


タダヤスもただ頷くのみだった。


すべてのゴブリンにとどめを刺し終えると二人は自然に抱き合った


「やっと終わったこんな滅入るクエストだったなんて」


「本当にきつかった、それにあなたのあの力は何だったの」


「分からないただ声が聞こえた。妖・精霊の適正がどうのとかギルドで言われたからそれ関係だろう」


「そう良くはしらないのね」


「所で提案があるのだけれど。この近くに泉があるのそこで水浴びをしてから帰らない?」


「まさかお前からそんな提案が出るなんて」


「私たち血や体液で大変なことになってるわよあなたは鼻水だらけだし私は...漏らすし」


「っそそうだな水浴びしよう」


(こいつに水浴びという概念があったのか。それにしても俺のちょい漏れは気づかれてないようだ)


涙と鼻水だらけの顔で閉まらないタダヤス


戦いが終わりあたりを捜索すると十数体のゴブリンの墓らしきものと冒険者たちの無残な亡骸を見つけた。


「大きなむれだったんだな皆疲弊していたようだったが彼らの功績だろうか」


「分からないはただ弔いましょう」そう言うともくもくと墓を作る。


数時間後泉


あたりも暗くなってしまった。


松明を岩の上に置き水浴びを始める。


「あまりこちらを見ないでほしいわね」


「っすまないそんなつりじゃ」


噛んだ。


「襲ったら殺すわよ」


「おいおい俺たちもう仲間だろ無理やりそんなことしないって」


「確かにお互いが居なければ死んでいたところね」と笑うリセ


「さてといろいろ話さなければね。ねぇタダヤスあなたこの世界の人間じゃないのよね」


「そうだがそれがどうかしたのか」


「あなたにはまだ話していなかったわよね突飛要旨(とっぴようし)もない話だけれど私は違う世界で生きていてそこで死んでこちらの世界に生まれ変わったの」


「異世界転生者だってこと~」


目を丸くしおもわず凝視してしまう。


「ウォータージェット」


リセの魔法がタダヤスを襲う。


「死ぬかと思った」


「手加減はしてるわよ」


「自分から誘っておいて見るなとは後生な」


「水浴びしない選択肢はあった?」


そう言うと松明を消してしまう。


「それにしても異世界転移者と転生者かびっくりな巡り合わせだな」


「あなた勇者になる気はないの?」


「俺はそんな玉じゃないさ」


「でも冒険者になった違う?」


「憧れはあるさ」


「そう憧れ私の好きな物語に勇者と妖精が一緒になって魔王を倒すと言う話それをあなたを見て感じたわ」


「そんなにかっこいいものじゃなかったけれども」


「私変わろうと思う!まずは臭いだ汚いとののしられないようにすることね。一人旅ならともかくパーティメンバーに迷惑をかけてもしょうがないし」


「そしたら美少女魔法使いなんだ引く手数多だろうな」


星明りに慣れてきたリセを凝視する。


「私は貴方と進むと決めたあなたはどう?」


「おう任せとけ」


「よかったじゃあウォータージェット」


凝視していたのがばれたようだ。


風と火の魔法を混ぜるのそう言って彼女が繰り出した魔法によって服も乾いた。


「食うもの喰ったら寝て町へ帰るか」


「そうしましょう」


目を閉じれば今日の疲れで一瞬で眠りにつく。


翌日


「あなたがタダヤスの言っていた妖精さん?随分かわいらしいわね」


「そういわれると照れるわね」ニアは顔を赤らめる。


「タダヤスが勇者候補じゃないって本当?ゴブリンたちを魔法で刺し殺していたけど。」


「それは彼自身の才覚いやもしかしたら彼に干渉したい存在のおかげかもしれないわね」


「彼に干渉する者?」


「そう!魔法の種類は闇系統ではなかった?」


「私の見込みだとそうよ」


「やっぱり。あの日はなぜだか彼女の意思を感じていたのよ。

「その意思というものがあるとどうなるの?」


「闇の精霊がタダヤスを見初めたんじゃないかな。それで私をタダヤスの元に」


「でも貴女火の妖精じゃないの?」


「干渉ぐらいできるわよ精霊ですもの」


「おはよういったい誰と話しているんだ」


目を覚まし体を起こすと鼻とニアの小さな尻がぶつかる」


「ちょっといきなり何をするのタダヤス」そう言い、ニアが膨れる


「お前かニ」名前を言い切る前に口をふさがれる。


「いいタダヤスこの世界では妖精や精霊が名を口にするのは特別なことなの」


「名を呼ぶなってことかい()()()()


「私的にはちょっと寂しいな。私はこれからもタダヤスと旅路を共にするつもりなんだけどそれでも教えてくれない?」


「そういうことならいいわ、私はニアよ」少し考えて口にする


「案外軽いのな」


「うれしい妖精さんいやニアさんありがとう」


「まぁ相棒の仲間ならいいわ」


「所でなんでおまえ復活してるんだ怪我も治ってるし」


「あなたが精霊魔法を使えるようになったからよ扉が開いたの」


「扉ねその扉が開くとどうしてお前が回復するんだ?」


「あなたとの繋がりを通ってあなたのマナをもらえたのよそれで回復したってわけ」


「タダヤスあなたニアと契約していたの?」


「ふわっとした関係だがそうなるのかな。」


「誰か来たみたいよ」そう言うとニアはその方向を指さしタダヤスの体の中に隠れてしまう。


リセは杖を手にしタダヤスはショートソードに手を掛ける。


「んっ先客がいるようでござる。」


タダヤスたちをみると

「あぁ敵では御座らん安心せい。皆見付けたぞ確かタダヤス殿とリセ殿であったな無事なようでござる」


後ろ髪をリボンでまとめた袴姿の侍少女に名を呼ばれる。


「なんで俺たちの名を?」


タダヤスは(いぶか)しむ。


「それはギルドからの応援だからでござる。ただわれわれ戦場はもう見たでござる。それでお主たちを探しておった。いや~初心者冒険者と二人であの戦場あっぱれでござる。」


「先にクエストを受けたやつらは死んでいたよ」


俯きながら答えるタダヤス。


「そうでござったかまぁそれは仕方がない数が数なので拙者たちまで駆り出されたのだ」


「手柄を奪おうってことじゃないよな」


「おいおい話を聞いてりゃこれだ俺たち四人は鉄級と銀級冒険者だこの程度の報酬対してうまくない。お前と違って銅級に上げるってのも意味ないしな」と少女の後ろから男が出てくる。


「そうかすまない味方でいいんだな」


リセと目を合わせ力を抜く。


「皆さん怪我がないなら帰りますよ~」と声が聞こえてくる。


荷馬車


「お前がリセ・ガーランドかやっぱり臭いな」二人目の陽気な冒険者が言う。


「臭いとは心外な昨日水浴びをしたばかりよ」


「そういうのは浸み込んでるんだよ」と笑う。


「お主のそういうところが女性から持てないとこでござる。」


「うむうむ」


リセの顔が怒りに燃えるのをみて三人目のヒーラーと思しき人が提案をする。


「戦闘もなさそうですし私が魔法で匂いと汚れを消し去ってあげましょうか?」


「あなたそれって結構な魔法じゃない良いのかしら」と目を輝かせるリセ


「まぁ戦闘がないならマナを消費しても問題が無いでしょうし六人いますから」


「リセッシュウィンド」


リセの体を魔法が覆う。


試しにリセの体を嗅いでみるとビンタされた。


「デリカシーがないわね」


「一緒に水浴びした仲じゃないか」


リセを覆う匂いと汚れが消え去った。


「そうだ俺はロッシュ。話は戻るがあの数のゴブリンを殺ったのはすごいと思うぜツワモノいたようだし」二番目の男が言う。


「大きいやつらは強かった。精霊魔法がなかったらあっという間に殺されるところだった」


タダヤスは首の傷を掻きながら苦虫を噛潰した様に言う。


「ほぅそれで間一髪精霊魔法が出たというのか興味ぶかい。そうだ俺はゲルド」斧を持った四人目の冒険者か言う。


「私はマーシュ、それにしても珍しいですね精霊魔法とは」とヒーラーの男は驚いた様子だ。


「あなたのリセッシュウィンドなみかそれ以上の珍しさね」


「きれい好きなもので」


「まだ名のっておらんかったな拙者は桜と申す。それにしても武勲を挙げた二人に大盛り上がりであろうな冒険者たちは拙者も精霊魔法と聞いて心が躍っておる。ステラー「妖精と勇者」みたいでな」


「あなたあの話を知っているの?」上機嫌に聞くリセ


「さよう拙者も好きでござる」


「まぁベストセラーですからね」そう言うマーシュ


そうこう話していると街に着く一行。


街ギルドにて


「さぁ皆の者こちらが三十近くものゴブリンを薙ぎ払った魔法使いと精霊魔法使いのリセとタダヤスだ~」


六人が戻ったのが夜。


みな仕事を終えギルドに戻ってくる時間でもある。


そんな中帰ってきたので皆リセとタダヤスの話で持ち切りだ宴会になるのは必然だ。


そんな中酔ったタダヤスは俺の奢りだと言い報酬の殆どを使い切ってしまうのであった。



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