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異世界タダヤス  作者: 多田 康史
3/20

臭いやつ

 アスク・バル

 かつて魔物の襲来に対して、造られたという街壁とその内外に広がる耕作地。日本に居た頃、見た旅番組の様な風景にタダヤスは、感動していた。


 MTBを趣味にしてからは、こういった。ヨーロッパの昔ながらの風景。(とは言っても此処は異世界だが)こんな場所をMTBで走りたかった。


 あの化けイノシシめ次に似たやつがいたら絶対クエストを受けてやる。意気揚々と憤って見せるタダヤス。


 街は幾度も拡張され複雑になっているようだが中心部に向かえば良いだろう。


 道を進むと早速冒険者らしき人物を見つけたので話しかけてみる。


「ようあんちゃん、冒険者かい?」タダヤスは陽気に話しかける。


「そうだが、どうかしたか?」怪訝けげんな態度をとる。


「あぁすまない、俺冒険者になりたくて冒険者ギルドを探しているんだ。」


「あんたが冒険者に?俺よりいくつも年上に見えるが今からか?」少し馬鹿にした風に冒険者は言う。


「人生いろいろあるからな憧れには代えられないよ」


「まぁいいギルドはあそこの高台だ」と高台を示す。


「ただしこちらからだと時間もかかる。だから裏通りを通るが近道を教えてやる。普通に行くより迷いにくくて時間も、半分もかからないだろう帰りは、上から見ればもっといい道が見えるさ」そう言い道を示す。


「ありがとう向かってみるよ」礼を言い別れる。


 示された道を行くが、なにやら変な輩がいる。


 輩たちもタダヤスを一瞥(いちべつ)すると目を背ける。


 無一文に見えるからだろう。


 実際そうなのだが。


 こういった輩がいるような道を進めたのはタダヤスが冒険者見習いだからだろうか?絡まれても冒険者なら対処してみろと言いたかったのか?それともあの冒険者から見ても無一文に見えていたのか!


 一方少女


 つい魔が差したのだ。


 小麦の焼けた香ばしい匂い。


 前の客の言った「此処のパンはこの町一番だね」


 それを聞いた私は四日ほどまともなものを食べていない。


 その前はどうかというとまともな糧食を食べられていなかった。


 腹が減って頭が回らなかった。


「おい其処の汚いの買わないなら商売の邪魔だ触れたパンが売り物じゃなくなる」


 近頃は皆私を汚い臭いと嘲る。


 店主が店の中へと入っていくどうやらパンの補充をするようだ。


 頭の中で悪魔がささやくそして私はミスを犯す。


 喉から手が出るほどほしかったパンに触れてしまったのだ。


 売り物に成らなくなってしまうそんな考えより先にパンを口にしてしまっていた。


「うまい」つい口に出してしまう。


 あたりも気にせずパンを食べていると声を聴いた店主が鬼の形相でこちらを見ている。


 私は一文無しだ何か策を探さないと。


「金はあるのか」鋭い眼光でにらみつける。


 今にも手に持った棒で私をたたきつけそうな勢いだ。


「ありません」パンを飲み込みそう答える。


 はっと我に返る私。


 逃げなくては。


 後で金は払おう。


 走り出す。


「泥棒」そう叫んだ声の主が追いかけてくる。


 大通りを行くか?いや私は周りから(はば)かられているのだ裏道を行こう。



 しばらく教えられた道を行くと、なにやら慌ただしい。


通りを曲がった先から少女がパンを(くわ)えながら走ってくる。


そのすぐ後ろをパン屋らしき男が「泥棒っ待ちやがれ」と追いかけている。


 細い路地。


少女は、パン屋に気を取られタダヤスとぶつかりそうになり急ブレーキをかける。


少女の髪がふわりと持ち上がり目と目があう、かなりの美少女だ。そして突然タダヤスを襲う臭気。


(こいつものすごく臭い)


 タダヤスは自然と戯れ泥だらけになったりするのは嫌いではないが不潔なのは嫌いだ。


本当ならこれだけの美少女そちらを助けたくなるが、今回はパン屋の手助けをしよう。


少女がタダヤスの隣を抜けようとする、タダヤスは(すか)さず足を掛ける。


少女がこける。


これが少女とタダヤスの出会いだった。


 パン屋の親父が、手に棒を打ち付け少女に、にじり寄る。


少女の方はというとものすごい勢いでパンを貪る。


「このパン泥棒め」そう言い少女の尻を何回か打つ。


少女が潤む瞳でタダヤスに助けを求める。


タダヤスに情が出る。


 「おいおい、なにもそんなに打つことないじゃないか。金を払わせればいいだろう」


 「ほう、あんたこいつが金持ってる様に見えるのかい?それにこいつ自身、金はないと言ったんだぜ」


確かにこの汚い女が金を持ってるようには見えなかった。


 そんなやり取りをしている中。


少女は嗚咽をもらしながらパンを貪り喰う。


相当、腹が減っていたのだろうもう逃げようともせずにパンを喰い終わる。


 そして少女は

「こんなにうまいパンは生まれて初めてだ」


満面の笑みで、痛みすら忘れたような顔で、言った。


 それを聞いたパン屋の親父の顔が少し綻ぶ。


 それを見たタダヤスは少女の頭をつかみ深々と頭を下げ謝る。


少女も困惑した様子だったがタダヤスと一緒に謝る。


そんな姿をみて居た堪れなくなったのか。


「仕方ない今回だけだぞ。それにしても、そんなにうまかったか」


親父と少女の目には涙が。少女の方は殴られたのもあるだろうが。


「おっと店に戻らないと、盗みはこれっ切りだぞ」そう言い残し店へ戻っていった。


 パン屋を見送ったあと少女と目が合う。


「私はリセ・ガーランド。とてもおなかがすいて困っていたの一緒に謝ってくれてありがとう」


「俺はタダヤス、よろしくリセ。それにしてもお前なんでそんなに汚いんだ?」


「女の子に汚いなんて失礼ね。ほんの少し汚れているだけよ」


(この世界の女の尺度はやはりイカレているのだろうか。ニア然り、リセも)

「あなたはこんな路地裏でなにをしてたの?」


 タダヤスは自分の目的を思い出す。


「お前さん冒険者ギルドって分かるか?ここを通ると近いと聞いたんだが」


「ああ冒険者ギルドへの近道を通ってたのね。もしよければお礼なんてできないし、連れて行ってあげる冒険者ギルド」


「美少女なのにほかのお礼ができない、あぁ自分の身を守るため汚くしているのか!」


「何を言って」顔を自分の髪と同じ位真っ赤にするリセ


「あっあなた本当に失礼ねそれに美少女だなんて。それで道案内はいるの?」


「いるさ助かるよ。それに美少女だと思うって言ったのも本気さ」


なぜかナンパみたいになっていしまった。


リセの横顔をみると少し微笑んでいるように見えた。


 高台

 リセの案内で冒険者ギルドの近くの高台に来ていた。


「はぁ~」


溜息が出るくらい、いい景色だ感動すると同時に最初にあった冒険者に感謝する。


俯瞰(ふかん)してみるにこの混雑具合と道を見ると、ここに来るまでにどれだけかかるか、わかったもんじゃない。


「所でタダヤスあなた美少女の、パン代を払ってくれなかったけど。自分のギルド登録料は持っているの?」


「そうだった俺こっちに召喚されてから何も持ってないんだった」


「召喚?今召喚って言った?あなたこっちの世界の人間じゃないの?」


「ああそうだよ俺は妖精に連れられこっちに来た異世界人だ」


「そうだったのそれなら私が登録料を払ってもいいわ」


少し態度が変わった気がする。


「金もないのにどうやって?」


「それは登録の話がすんでからね」何か策があるようだ


「私は鬱陶しがられてるから行ってらっしゃい!話がすんだら呼んでね」そう言ってタダヤスを送り出す。


 冒険者ギルドを前にし少しためらう町の規模から想像していたが結構立派な建物だ。


自分を奮い起こし進む。


 ギルド内 


 扉を開ける。


中に入ると活気にあふれている。


中には様々な杖や斧、剣を携えた冒険者たちがおり心躍る。


 人々をかき分け受付・登録そう書かれたカウンターへたどり着く。


「冒険者登録をしたいのだが」


「冒険者登録ですね説明はいりますか?」


「頼む」


「まず冒険者七つの階級に分かれそれぞれの階級以上のクエストをこなしてもらいます。階級は下から順に(ウッド)(カッパー)(アイアン)(シルバー)(ゴールド)白金(プラチナ)それ以上は個人にちなんだ名前の階級になります。最初はウッド階級の簡単なクエストからになりますが階級が上がるごとに難易度は上がっていきますので上の階級の冒険者の手伝いやパーティを組んでクエストに取り組むことをお勧めします。」


「何かわからないことはありましたか?」


「問題ない続けて」


「それではあなたの登録名と能力を測っていきましょう」


 水晶のような装置に手をかざす。


「出ましたね、どうやら精霊に深くかかわりがあるようで精霊眼のスキルと妖精・精霊への適正があるようです。あとは冒険者としては普通ですね。スキルについては経験を積むうちに開花するものがほとんどです。焦らず地道にやっていきましょう。」


「それで登録名はどうしましょうか」


「タダヤスで」


「それではタダヤス様登録料10ゴールドになります」


「それについては連れを待たせているのでよんでくる」


と言いリセを呼びに行く。


 ギルドの入り口に人だかりができている。


どうやらリセだ。


「リセ~出番だ」


そう呼ぶとギルドは静まりかえる。


皆一斉に鼻をふさいでいる。


 人だかりがリセをよけリセがタダヤスの元までくる。


「出番だ登録料」


そう言うとリセは懐から何かを取り出し受付に渡した。


「これを担保に金を出してちょうだいそれと預けてあった杖を」そうリセは言う


 受付は何か思いついた様子で

「提案があります」そういった。


ものすごい眼光だった。


 ギルドの外の高台


 体よく追い出されてしまった。


「まぁ冒険者になれたしいいか」


「よかったのかこんなクエストで」


「内容はいいだろう、破格だ」


「行きなり二人旅だぞ」


「そっちのことか俺は気にしない少しきれいになってくれれば」


「...」黙ってタダヤスを睨みつけるリセ


「女でもゴブリンにすら襲われないだろうから一緒に行けばだってさ」


「ゴブリンに襲われないなんて良いことじゃないか」


「女として見られないだけであって殺されはするよ」


「まぁなんというか一長一短だな」


「タダヤスはこのクエストがうまくいけば銅階級に上げてもらえるんでしょ破格の内容よ」


「そうなんだが何か引っかかるよな報酬が良すぎる」


「受けちまったんだしょうがないやるしかないさ」


「それに飯も食える」


「必要なものは買ったし向かうかゴブリン退治」

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