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異世界タダヤス  作者: 多田 康史
2/20

街へ

 何時間、歩いただろうか?なにが()()歩けば道に出るだ!


タダヤスは(いきどお)る。


やはりニアとは物事の尺度が違うようだ。


「おいニアいつになったら着くんだ」

 胸元をトントンと小突くが反応はない。


 あの真夏の()だるような暑さからは解放されたが、こう歩けば喉も乾くし腹も減る。


菓子はニアが全て食べたんだった。


それに持ち物は一切ない服と靴だけ。


 しばらく示された道筋を進むが、自分が知らぬ間に道を間違えたのだろうか、などと考えながら歩いていると、草原を抜けた。


目が良くなったのは僥倖(ぎょうこう)だ。


道と石橋が見えてきた。


 胸を躍らせながら川面にたどり着く小さいながらも綺麗な川だ。


 喉を鳴らし水を飲む渇きは満たされた。


 ふと水鏡で自分の顔を見る。


裸眼で自分の顔を見るなんていったい何時ぶりだろうか?目の悪さには辟易(へきえき)としていたのだ。


とてもうれしい感覚だ。


眼鏡が役に立たなかった訳ではないあれがなければ何も見えなかったのだ。


それにレモンの汁から目を守る場面は何度かあった。


だがこの解放感には勝らない。


 そんなことを考えていると石橋の上から声を掛けられるどうやら農夫のようだ。


男は馬に水をやる。


「あんた、旅人かい?どっちに向かっているんだい西に向かうなら乗せていこうか荷物もないし」農夫は言う。


「助かるよ転移魔法で、この辺りに、飛ばされてきたんだが、この辺りをさまよって、困っていたんだ」タダヤスは包み隠さず話す。


「変わったこともあるんだな、どうさ、暇なんだこの辺りのことを教えてやるよ」少しタダヤスのことを(いぶか)しんだようだったが、気さくな男の様だ。


「お前さんこの辺りのことどれくらい知ってる?」


「何も知らないが。」


「そうか、そうだなまずここは、グラン・ミュエール王国だ領主はリベルト公爵。公爵はきれい好きで王都のグラン・ミュエールはとても清潔な水の都だ。遠くの山脈の雪解け水を水源にしているらしい。もし余裕ができたら行ってみると良い観光だけでもとても楽しめる。それに様々な土地の珍しい物があつまるきっと楽しめるはずさ。」


「水の都に様々な珍しい物か心躍るな。」


「まぁ難点は少し遠いことだな一週間はかかろう」


「そしてこの辺りの街と言えばアスク・バルだな。アスク・バルもなかなか発展した町で三つのギルドが街を仕切っている。冒険者ギルド、魔術師ギルド、商業ギルドの三つだ」


「冒険者、冒険者ギルドかだれでも冒険者になれるのか?」とタダヤスは聞く。


「お前さんもてっきり冒険者かと思ったが違ったか。まぁ手に職がなければ冒険者ギルドか商業ギルドで雑用だろうな」


「冒険者になろうと思う。困りごとがあったら言ってくれ」


  「お前さんに今頼めることはないよ、ここらは今不作なんだ周りに見えている小麦がうまく育ってくれればそれでいい」と農夫は心配げな表情であたりの畑を指さす。


「確かにそれに関しては祈ることぐらいしかできないな」


「祈るといえばこの国は水の精霊を大事にしておる。近隣の国とは違って敬虔(けいけん)な信仰というわけではないが間違っても水の精霊を退治したりするなよ」と大笑いする。


「俺が倒せるのはゴブリンくらいさと」タダヤスも笑う。


 農夫の親父に様々なことを聞いていると、親父の住む農村についたそろそろ夕暮れだ。


「帰ったぞ客人を連れてきた」


「おかえりなさい、何もないけどゆっくりしていってね」と農夫の妻が優しく出迎えてくれる。


「そう、言われましてもまねかれた身何かお手伝いでも」何かできることがないかと手伝いを買って出るタダヤス。


「そうは言ってもな村の修繕やらなにやらも間に合ってるし。そうだな知らない料理ぐらいしか手伝えることはないのではないか」


「そう来たか俺も料理はそこそこするぞ」とタダヤスは答える。


 そしてハーブのきいたすいとんを作った。


これがまぁまぁ好評で不作で備蓄が少ないと言いながらも、タダヤスにも料理を分けてくれた。


 そしてこの辺りに住むという木の精霊の話やしばらく行った先にある泉の話、親父の若いころの失敗の話などを聞きながら。


夜は更けていった。


 今日はとっても疲れた妖精に助け、助られ。


あの大イノシシだMTBどころか命まで取られそうになって散々だったそれにゴブリンあいつも殺気立っていた。


だがこれから異世界生活かノリで来てしまったけど大丈夫かなこれかな。


いろいろ考えるが目を閉じたら一瞬で眠りについた。


 翌朝


 鶏の鳴き声。


農家の朝は早い。


「タダヤス、起きろ行くぞ」そう親父が起こしに来る


 タダヤスは、慌てて眼鏡に手を伸ばし、起きようとするが気が付く

「そうかここは自宅じゃなかった」


「そんなしっかり眠れたのかよかった。街に向かおう」


「分かった、街、冒険者かぁ~」心を躍らせるタダヤス


「そんなに冒険者に憧れてたのか、さてはお前も子供のころ冒険譚に憧れたくちだな」


「そうさ今でも憧れている」


「じゃあ早いとこ向かわないとな」


 足早に準備を整え街へ向かうことにする。


 親父に色々な料理レシピを教えながら荷馬車に揺られ数時間今日は少し荷があるようだ。


 農夫の親父が馬を留める。


ほかの農家に用があるようだ互いに挨拶をかわし、こんな少ない荷なら馬車にする必要がないと笑われ取引を終えていた。


ここでタダヤスは気が付く親父のやさしさにわざわざ馬車に乗せて街の近くまで連れてきてくれたのだ。


荷馬車から降りるタダヤス親父の方へ行き礼をするすると親父は照れ臭そうに笑う。


「もう少しでアスク・バルの街だ達者でな」


 タダヤスと親父はぎゅっと握手を交わし別れを告げた。


 久しぶりに人から受けたやさしさを胸に街へ向かうタダヤスであった。


 親父と別れ少し進むと小麦畑の中に立派な壁が見えてきた。


壁を越えてもまだ小麦畑があるのを見ると町は結構な広さであろう。


百年ほど前から幾度となく魔物や兵隊を退けてきたというだけはある。


そんな街アスク・バルについた。



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