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様々な世界・世界の詩

毒まみれの世界

作者: リィズ・ブランディシュカ



 その世界は、毒まみれだった。


 どこもかしこも、たくさんの、毒が溢れている。


 山も、湖も、植物も、空気もすべて毒でできている、そんな世界だ。


 だから、生き物は生きられない。


 だから、人間など一人も生きられない。


 けれど、そんな場所に一人の女性がいた。


 女性はずっと、そんな世界で一人で生きていた。


 けれども。


 偶然その世界に迷い込んだ人間がいた。


 その人間は、毒に体を焼けとかされながらも、女性を助けようとしていた。


「こんなひどい世界で、人が生きられるわけがない」


 だから、ここから脱出しよう。


 一緒に人が生きられる世界へ行こう。


 人間は、そう言って手を差し伸べた。


 しかし、女性は首をふる。


「私はこの世界でしか生きられないのです。だからどうかおかまいなく。だからどうか一人で逃げて下さい」


 毒を口にして飢えをしのいでいた女性は、他の者が食べられないと言う。


 よく見れば、女性は毒の影響を受けていないようだった。


 だから、その世界で生きてこられたのだろう。


 けれども、それができるのはおそらく彼女だけ。


 男性は手を差し伸べ続けた。


「一人だけしか生きられない世界に生きて、何の幸せがあるのでしょう」


 何度も、何度も。


 その世界から脱出しては、またそこに戻って来た。


 やがてその女性は、男性の手をとろうとした。


 しかし、その決断は遅かったのだ。


 毒の世界に長く生きる彼女は、彼女自身も毒になってしまったのだった。


 男性の手をとかす、己の手を見て、悲しげな表情をした。


 女性は悲しみながら再び、首をふる。


「あなたは人の生きられるる世界で生きて、幸せを掴んでください」


 毒になってしまったその女性を救う術はない。


 その世界に来るときに使った乗り物も、他の世界へ向かうための道具も、毒で溶けてしまうからだ。


 男性は悲しみながら、その世界を後にした。


 やがてその女性は、毒の世界を統べる存在になる。


 その命の存在しない世界で毒姫となり、長い孤独な時間を過ごす事になる。


 毒の影響をうけない、機械の命が彼女の手に触れるまでは。



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