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08話 ルシフェル、バルガス



 都市設計は僕がやるとして、それを理解して現場の最高責任者を任せられるようなスプレーマはいないかな?とアルフォンスは訊いた。

 

 シルヴィとウリヤーナは同時に、ルシフェルの名を挙げた。


「熾天使から悪魔(堕天使)になったスプレーマです。いつもまったく覇気のない態度ですが、いざとなったら必ずやり遂げます。あ、同じスプレーマである熾天使ミカエルの双子でもありますが、ミカエルは‥‥ そういう任務に向いてないですね‥‥」


 そのとき、突然、目の前にいかにも気怠そうな、30台半ばくらいの男が現れた。

(呼吸すら面倒に感じているような雰囲気だ‥‥)


「いや、さすがに呼吸はするだろ」

「アンタ、呼ばれるの待ってたやろー!」

「い、いや、そんなことないぜ‥‥」

「ルシフェル、あなた、若の計画も聞いてたでしょう」


「ま、まあ、耳には入ったかな‥‥ あー、あのな、若、カツカレーを200食追加してくれ。直属の配下たちの分だ」

「配下は何人くるんだ?」

「100人ほどかな‥‥」

「なんで200食なんだ‥‥」

「俺ちゃんの分が100食だ」


「ルシフェル、超大盛りカレーの全部乗せ、って知ってる?」

「おい、なんだよ、その破壊力抜群の言葉は‥‥」

「超大盛りカレーに、とんかつ、メンチカツ、チキンカツ、エビカツ、ソーセージ、唐揚げ、フィッシュフライ、半熟タマゴ、コロッケをトッピングした最終兵器だ。ほら、これね」

「‥‥ 若よ、俺ちゃん、都市開発を真面目にやる、だから‥‥ 120食、いや、130食でいい‥‥」


(譲歩したのかどうか分からない数だな‥‥ 超大盛りの全部乗せだぞ‥‥)


「まあ、それくらいなら‥‥ で、配下に『複製』料理を口外させないように『血の契約』は必要か?」

「いや、必要ないな。スプレーマの直属の配下には『血の契約』は不要だぜ。悪魔でもな。いや、そもそも悪魔とか呼ばれてっけど、俺ちゃん達は魔族じゃないし、悪でもないぞ。天使の最高位の熾天使セラフィムだったんだぜ。天界から追放されたといっても、あれは序列1位の女神ユーノーが阿呆だっただけだ。嫉妬深いので有名なんだよ。あいつは許せねえ‥‥」


(なんかいろいろあるんだな‥‥ このやる気のないルシフェルがここまで怒るとは‥‥)


 アルフォンスは、ドワーフのスプレーマは存在するかを訊いた。


 シルヴィは、「今はいないですね。ただ、あと100年もすれば確実にスプレーマになれるドワーフはいます。バルガスといいます。ここ南部に(山脈を挟んで)接しているテフヌト教国に、バルガスを含めたドワーフ一族1,000人ほどいるのですが、隷属魔法で強制労働をさせられています。バルガスには隷属魔法は効きませんが、一族を人質に取られて‥‥ 以前に救出に向かったのですが、女神テフヌトの加護によるものと思われますが、地中まで覆う強力な特殊結界に弾かれてしまって‥‥」と残念そうに言った。


 アルフォンスはしばらく考えて、「今から4人でテフヌト教国の結界を確認できる位置に転移できる?」と訊くと、3人とも可能だと答えたので、すぐに転移した。


(アルフォンスは念のためにアルベルトに変身しておいた)


 アルベルトは結界を凝視して、「よし、鑑定で解析できた。絶対に結界に弾かれず、結界を通り抜けた反応さえ悟られない結界突破の術式を完成させたよ」と。


(アルフォンスの魔術は、スプレーマ達の上位に位置するのではなく、そもそもの発想が異なるものであるがため可能だった)


 スプレーマ3人は信じられない思いだったが、アルフォンスが結界突破術式を各自に付与し、透明化して、実際に結界を通り抜け、1時間ほど滞在してみたが、何も起きなかった。


(この女神の加護を受けた特殊結界を突破する魔術は、後に、女神ユーノーの加護を受けたゲデック帝国の結界、女神ミネルウァの加護を受けたザイデル皇国の結界にも通用し、大いに有効活用されることになる)



---



「さあ、大丈夫そうだ。バルガスたちを救出に行こう。シルヴィ、その場所に転移して」


 4人はドワーフ達が強制労働させられている巨大な鍛冶場に転移した。鍛冶場の外部と内部の監視役兵士達200人を睡眠魔術で眠らせ、バルガスに会った。


「な‥‥ シルヴィ、ウリヤーナ、ルシフェル、こんなとこで何を‥‥ いや、どうやってここに来られた?」

「ははは、バルガス、ビビったやろ-。まあアタシもビビったけどな‥‥ この若様がどうしてもバルガス達を救出するって言い張ったんや。で、どないする? すぐに全員をベクレラ王国のエング辺境伯領まで転移させることが可能やで」

「ほんとか‥‥ 有り難てえ、よろしく頼む」


 シルヴィは思念伝達によってドワーフ全員を1箇所に集めて、(バルガスを除く)ドワーフ全員の隷属魔法を解呪し、そしてあっという間にエング辺境伯領に転移した。


 ドワーフ全員が鍛冶場からいなくなった事態を把握したテフヌト教国は、その事実を信じられなかった。重臣の一人が「事実ですよ」と冷酷に宣告するまでは。

 監視役兵士達200人は責任を問われ、全員が奴隷とされたと、後に知った。


 教国の最高位にある教皇は、大神殿に招集した重臣である枢機卿や大司教たちに「どの国の仕業であると考えるか」と問うた。


 数人が「ゲデック帝国かザイデル皇国のような、女神の加護を受けた国によるものとしか考えられません。その2国以外の国ではスプレーマ対策がなされた結界を突破することは絶対に不可能ですから」と答申したが、それは誰もが考えたことであった。


 教皇は「我が国の北側に国境を接しているベクレラ王国、マーキュリー商業国、ヒンケル王国、さらに西側に国境を接している自由都市連盟である可能性はないか、さらに隷属魔法を解呪した方法の痕跡はないか」と確認した。


 同国屈指の遠視魔法師たちが確認したが、「それらの国と連盟はどこも全く平穏で、何かが起こっているような気配はありませんし、新たに強力な魔力を持つ者が現れた気配もありません。また、解呪方法の痕跡もありません‥‥」と具申した。


 大神殿には沈鬱な空気が漂った。


 教皇は、確かに帝国と皇国とは敵対関係にあるが、なぜ今、そしてなぜドワーフを掠う必要があったのかと考えてみたが、納得いく結論は得られなかった。もしや内部に裏切者が? しかしそれでもなぜドワーフなのだ‥‥


 これくらいのことで女神の神託を仰ぐことなど恥ずべきことゆえ、それはしなかったが、後に教皇は「あの時に躊躇すべきではなかったのだ‥‥」と大いに後悔することになる。



---



 シルヴィは、ドワーフ全員に思念伝達によって「これより、若から話しがあります」と知らせた。


 アルベルトは、思念伝達で「ドワーフのみなさん、僕はアルフォンスといいます。異世界からの転生者で、魔術師です。これからみなさんに異世界の食事を振る舞いますが、僕が今話したことや食事のことは口外無用にてお願いします。また、念のため、申し訳ありませんが、(内容を説明したうえで)『血の契約(改)』をさせてもらいます」と伝え、様々な食事をマジックボックスから取り出した。特にドワーフが大好きなお酒を大量に‥‥


(今後は常に、アルベルト(アルフォンス)ではなく、長命なスプレーマ達が『血の契約(改)』をしていくことになる)


 ドワーフ達は、「あんたは恩人だ。『血の契約(改)』は当然受け入れる。で、すぐにでも契約を交わしたいが、なんせ腹が減ってるし、酒が飲みたい。契約は後でいいか?」と訊いたが、アルベルトは「もちろんですよ。さあ、思う存分に召し上がってください」と笑った。


 ドワーフ達は、隷属魔法による強制労働から解放されたことが夢のように思えたが、目の前に大量にある食事と酒の方がより夢のように感じ、それらを大いに堪能した。

 アルベルト達4人も、特にルシフェルが‥‥ 大いに飲み食いした。



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