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05話 シルヴィ


 奴隷制度(犯罪奴隷)について考えてみた。


 前世では1863年にリンカーン米国大統領が奴隷解放宣言をした。人権侵害の観点からは当然のことだろう。


 しかし、その当時の奴隷制度というのは、主人が奴隷を所有物として扱い、人間としての名誉・権利・自由を認めず、労働を強制し、給与すら支払われないことが多く、暴力や陵辱まで行っていたものだ。


 対して、こちらの世界では(闇の奴隷商人や一部の国を除いて)、奴隷の衣食住は最低限保障され、給与も支給され、身分を買い戻すことも可能という制度である。


 例えば前世の現代以降では、刑務所に収監(隔離)された懲役囚などは、生活をほぼ常時監視され、労働に従事しても時給は約6円~40円だ。これでは釈放されても生活は困難で、さらに就職も事実上は難しい。

 日本などはそれでもかなり条件が良い方だといえ、他国においては刑務所内での暴行や殺人、賄賂による看守の買収やその横柄さなど目に余るものがあるようだ。


 前世での昔の奴隷制度は論外としても、前世の現代以降とこちらの奴隷制度を比較した場合、前者では国家が多くの費用を拠出せねばならず、そして懲役囚の時給は雀の涙である。

 対して、こちらの世界では、国が拠出する費用はほぼ不要で、奴隷たちは最低限の衣食住を保障されたうえ、給与も得て身分を買い戻すこともできる。


 2つの世界における制度について、ヒューマニズムやコストパフォーマンスの観点も含めて比較衡量し、それらをどう考えるかは人によるだろう。

 


---



 アルベルトは、盗賊25人をエング辺境伯領へと転移して連れて帰った。

 隷属魔術は必須であるがゆえにかけたけど、それも物理攻撃や魔法攻撃などを禁止するもので、正当防衛や緊急避難の場合には拘束魔術を相手に使用できるようにし、一見して奴隷と分かるような入れ墨や首輪なども無しだ。労働の対価としての給与も支払う。


 ただ、開発計画はお金をもっと貯めてから実行に移すつもりだったので、すぐに労働させることができない。

 そこで、領地にある小さな村の村長さんに経緯をすべて説明し、得た金貨6枚を渡し、25人に最低限の衣食住を保障させたうえで、労働をさせるように依頼した。人も金も足りなかったその村としてはとても有り難いことのようだった。

 元盗賊の25人は何度も何度も感謝していた‥‥


(またもやセヴリーヌ嬢はそれらのやりとりをじっと眺めていた‥‥)



---



(さて、セヴリーヌ嬢である。どうしたものか。只者じゃないどころか、人間ですらないだろう。盗賊も人質もギルド職員も支部長も村人も村長も、誰一人としてセヴリーヌ嬢に視線を向けていなかった。人質が監禁されていた部屋で飲食物を渡した際も何らかの魔法か魔術で俺の行動を認識できないようにしていたはずだ。家族との思念伝達のことも嘘だろう‥‥)

 

「ふふふ。そうですね、その通りです。監禁部屋には、あなたが来る直前にこっそり転移して忍び込んでいたのですよ」


(考えてることが筒抜けなのか‥‥)


「あ、あの人質の女性5人の暴行・陵辱の記憶は消去しておきましたよ。商品奴隷としてそれなりに大切に扱われたとの記憶になっているはずです。若い女性たちにとって、あのような忌まわしい記憶はない方がよいですよね」


 淡々とそう言いながら、彼女はセヴリーヌ嬢姿の幻覚魔術を解いた。そこには、信じられないほどの美女が微笑みながら佇んでいた。


(前世でもこの世界でもこれほど美しい女性にはお目にかかったことがない‥‥)


 この時点で、アルベルトは本来のアルフォンスの姿に戻っていた。


「ハイエルフ?」

「はい、種族はハイエルフです。同時に、スプレーマという存在です。能力専用鑑定術式を用いてもらっても結構ですよ。ただ、年齢は非表示です。ふふ」



 名前:シルヴィ

 種族:ハイエルフ(スプレーマ=究極存在)/??歳/女

 職業適性:制限なし(大賢者・大魔術師)/現在Lv.10,000|最大Lv.不明

  知性/現在Lv.10,000|最大Lv.不明

  忠誠/現在Lv.10,000|最大Lv.不明

  部下/現在Lv.無限 |最大Lv.無限



(なんだこの異常な数値は‥‥)


「えー‥‥ ところで、シルヴィさん、家名などはないのですか?」


「家名はありません。大昔はありましたが、もはや家名に価値はなく、そのようなものに縛られる必要がないのです。あと、わたくしのことはシルヴィと呼び捨てにして頂きたく、そして敬語は不要ですよ、若」


「若? どういうこと?」


「若が約5年前にこの世界に転生してきたとき、わたくしたちスプレーマ7人は、あなたに大変興味をもちました。興奮したといってもよいでしょう。これまでの退屈な世界に何らかの変化が生じて、何かとてつもなく面白い経験ができるかもしれないと。そのときに7人で、あなたのことを『若』と呼ぼうと、半ば冗談で決めたのですよ、ふふ。ただ、女神によって若が100年も生きられないという制約を課されたことは残念でなりませんが‥‥」


「スプレーマが7人?」


「ええ、そのうち彼ら彼女らも若の前に姿を現しますよ。今はまだですが。あ、7人の職業適性やその他の数値はみな同じです。種族は異なりますが」


 シルヴィは続けて「長命種族にとって最も多い死因は何か、それは退屈なのです。刺激がない状態、興奮も充実もない状態、それが退屈なのです。だからこそ、若のような存在は、退屈している長命種族の多くとって『救済』となりうるのです」と言った。



---



「ところで、温かいポトフも、うどん?も美味しかったのですが、わたくし、はしたなくもチョコレートとマカロンというものに興味がありまして‥‥」


(人の記憶を勝手に‥‥)


「はい、どうぞ。お望みのお菓子だよ」


 シルヴィはまず18種類入りのマカロンのうち1つを手にとって眺めた後、そっと口に運んだ。


「危険です‥‥ これは大変に危険なものです‥‥ 残りは若の目が届かないところで頂くことにしますね、ふふふ、ふふふふ」


(何かのネジが飛んだようだ‥‥)


「そういえば、シルヴィは他のスプレーマたち6人と近々会う予定はあるの?」

「はい、ありますよ」

「じゃあさ、中容量マジックボックスに食事・お菓子・お酒などをいろいろ詰め合わせて、7人に同じものを用意するので、みんなに渡してもらうことは可能かな?」

「御意にございます」


(マカロン、どれほど遠くまでネジを飛ばしたんだ‥‥)


「ただ、女神との約束で、一般に流通させることは不可能だから、スプレーマたちのみが飲食する、または絶対に約束を守ると信頼できる直属の配下達だけ飲食するように限定してもらえるかな?」

「もちろんです」


「ところで、スプレーマのなかにヴァンパイアは存在する?」

「はい、いますよ」

「偏見だとしたら申し訳ないんだけど、血は嗜むの?」

「月に一度ほど、少量ですね。嗜好品扱いですので」

「人間以外の血も大丈夫なのかな? たとえば邪竜の血とか」

「邪竜、Sランクの魔物ですね。単独討伐なされたのですか?」

「ああ、ギルド依頼の薬草を採取する前に、水魔術のウォータージェットを試したくて、脳に打ち込んだんだ。ついでに、マジックボックスの自動回収・自動最適解体の術式も試したくてさ。それで邪竜の血を特殊浄化したものがあるあんだけど、ギルドで閲覧した解体説明書では需要が無いようで‥‥」

「ではひとまずマジックボックスに少しだけ入れておいてください。あとは本人に任せますので」

「了解」


「あとね、シルヴィ、本当に厚かましいお願いになるんだけど、僕にはやりたいことがあって、それにはお金と人材がどうしても必要なんだ。スプレーマのみんなに、必要のない金品財宝があれば提供して欲しくて‥‥ さらに良い人材がいれば紹介して欲しいんだ‥‥ で、それで、マカロンとか、あるいはマカロンなんかもこちらの世界で作れるようにしたいんだ。前世のものは一般に流通させてはいけないと女神ペルーサーさんと約束したので」


「なんという素晴らしいお考えなのでしょう。もちろん協力します。他の6人にも協力を要請しておきますのでご期待ください」

「うん、ありがとう」




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