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17話 『タプレ』


 結局、スマポ利用者が購入するのは、追加アプリ、魔石、記録術式付きガラスとなり、さらに店舗・施設・商会側などが購入すればよいのは、追加アプリ、スマポ用魔石への魔力供給(充魔)型魔石、記録術式付きガラス、対応端末ということになる。


 後者については、ヴァルータ内部で店舗に設置が義務づけられている決済対応端末や、業務用の財布アプリ情報送信に対する受信対応端末などだ。

 余計なものまで無理に購入させているのではなく、あくまで作業効率が高くなり、結果的に余計な人件費などが不要となって、導入した方がかえって総体として安くつくという理由からである。


 スマポと同様に、対応端末についても、アプリを利用する。

 なお、対応端末は、スマポを大きくしたタブレットほどのサイズになるので、『タプレ』と名付けることにした。


(安易だとの誹りは甘んじて受け入れよう‥‥)


 『スマポ』は5大商会には銀貨2枚(約2万円)で販売することが確定しており、(一部の「狭い地域」でのみ許されている)客に直接販売する場合は銀貨5枚(約5万円)を予定しているが、『タプレ』は小金貨1枚(約10万円)を想定している。


 『タプレ』に最初から付いているアプリの機能は以下だ。


・設定・通話・メッセ・背面色彩変化・財布・為替レート表示


・決済機能

 店舗や施設がこれまで貨幣のやりとりを行ってきたものを、スマポをタプレに接触させるだけで決済が完了する。従来であれば「代金支払い、受け取り、差額を計算して釣り銭の引き渡し」が必要で、かつ、貨幣の保管・盗難防止・運搬なども必要だったが、それらの全てが不要になる(まあ後者についてはマジックボックスだけで解決するんだけど)。


・魔石へ魔力を補充(「充魔」)する機能

 スマポ利用者のマジックボックスには、スマポ利用に必要な魔力を供給する魔石が入っている。従来の魔石はいわば「一回使用のみの乾電池」のようなものだったものを、アルフォンスがいわば「繰り返し充電して使用できる蓄電池バッテリー」のようなものにすることに成功したため、スマポ利用者が増えれば、魔石に充魔をするために必要な場所が多く必要となる。これによりタプレ設置側にも充魔分の利益が出ることになる。

 なお、充魔するためにはタプレのマジックボックスに魔力供給型の魔石が必要になるが、その魔石は「小さいものを大量」でも「大きいものを1つ」でもよい。

 この魔力供給型の魔石にはタプレ利用に必要な魔力をタプレに供給する機能も当然ある。

 また、魔力供給型の魔石に魔力を貯めるのは簡単で、魔力量の多い人がタプレに手をかざして魔力を供給したい分だけ供給すればよい。

 その魔力の買い取り価格の1.5~2倍の価格でスマポ利用者に充魔すれば差額分が利益となる。魔力量が多い人にとってもよい小遣い稼ぎになる。

 なお、スマポのマジックボックスに入っている魔石には「魔力供給型魔石からのみ充魔される術式」だけが付与されているため、魔力量の多い人から直接充魔されることは不可能となっている。(もちろん魔石を通さなくても自身の魔力でスマポを可動させることが可能だ)

「魔力を供給する人の魔力価格」と「魔力供給型魔石による充魔の魔力価格」は、地域間の格差や安売り値引き合戦を防ぐため、数年間は(5大商会と相談しつつ)公定価格を決める予定である。


・マジックボックス(100リットル)

 魔石供給型魔石を入れておくには十分すぎる量である。余った部分には在庫などを入れておくことも可能である。


・スマポとの同期機能

 個人商店や商人などが情報(一部・全部)をスマポとタプレで共有することは便利である。但し、スマポは「業務用」に切り替える必要がある。また、商会など組織が所有するタプレを従業員が勝手に個人スマポと同期できないように承認制機能も付与されている。


 次は、有料での追加アプリである。


 まず、スマポと同じものが全て可能である。金額も同じ。但し、スマポを所有していれば重複してまで購入する必要がないものが多いが、逆にタプレだけを所有するのであれば有用なものもある。


・計算機能、アラーム付き時計機能、メモ記入が可能なカレンダー機能、持主が亡くなった時に財布アプリにあるお金とマジックボックス内の物の相続者を指定しておく機能、他人数で可能なメッセ機能、映像付き通話機能、写真機能、声や音楽を録音・再生できる機能、ニュース閲覧機能、業務用と個人用の切替機能、他人数で可能な通話機能、翻訳機能、動画撮影機能、写真、動画、音楽の保存機能・送信機能、結界機能、マジックボックス容量拡大機能


・従業員が保有スマポを業務用に切り替えた後の「財布アプリ」に記録された情報を自動的に商会本店・支店などに送信されたものを受信する機能


・自動帳簿作成アプリ

 この時代にはもう複式簿記が普及していて、商人・商会も複式簿記で帳簿を作成しているが、これを自動作成してくれる。上の受信アプリと合わせるとさらに非常に便利だ。


・在庫管理機能

 どのような在庫があるのかを容易に把握できる。


 あとは業種によって様々な機能の需要があるだろうから、業種毎に必要な機能も随時追加していく。例えば旅館・ホテルなどでは、予約状況・残室数・宿泊期間の管理機能などが必要になるだろう。


 アプリの金額については、産業庁長官テュポンや姉ソフィアと相談しつつ、追って決めていく予定である。



---



 公開式典では、大々的にスマポとタプレについて紹介・説明をすることになるが、説明については事前に録画して、当日はそれを迎賓施設の巨大モニターで流すことにした。


 本来であれば、最も精通しているアルベルトかテュポンがよいのだが、いかんせん華がない‥‥

 そこでシルヴィに務めてもらうことにした。

 スマポやタプレの画面をそのままモニターに映しながらの説明であるが、一発できっちり30分で終わらせてくれた。さすがだ。


(シルヴィのあまりの美しさに見蕩れて説明内容が頭に入らないという事態にならないことを願うばかりだ‥‥)


 エング辺境伯の家族には、公開式典の2日前に来都いただくよう招待状およびソフィアから連絡しておいたのだが、マイヤができるだけ早く行こうと主張したため、3日前にやってきた。


 事前にそのことをソフィアから聞いていたので、ソフィアがマイヤと思念伝達で待ち合わせ場所を決めて、そこで落ち合い、父カールハインツ、母ミシュリーヌ、長男ヴィルフリート、次男アルフォンス分身、次女マイヤ、そしてソフィアがアルベルト商会の接客室にやってきた。


 アルベルトは、「エング辺境伯様、お初にお目にかかります。ご息女にはいつもお世話になっております」と言うと、「いえ、アルベルト殿、こちらこそ娘がいつもお世話になっておりまして有り難く思っています。さらに南部をこのような凄い都市にして頂いてもう何と感謝してよいのやら」と汗を拭きながら対応した。


(父が、そして兄も緊張している。まあ「アルベルト」は英雄的存在になってるしなぁ‥‥)


「エング辺境伯夫人、ヴィルフリート卿、アルフォンス卿 マイヤ嬢、お初にお目にかかります。どうかお寛ぎください」と言うと、夫人が「アルベルト様、ソフィアを介して頂きました内緒のシェイクスピア全集、大変楽しく読ませて頂きました」と。

「恐縮です。夫人は大変な読書好きだと伺いましたもので、是非にと」


(以前に母を能力専用鑑定魔術で見たとき、「職業適性:著述業」とあったので、もしかして脚本を書けるなら、シェイクスピアを様々な劇団によって舞台化して劇場で客が観賞したり、さらにそれを映像化しての観賞も可能になるかもしれないと思ったので、ソフィアにはその旨を伝えて、翻訳して母に渡すよう言っておいたのだ。そして後にそれは現実のものとなる)

 

 午後2時頃で、昼食は済ませたということだったので、「では、こちらで作っております紅茶と、甘い物を多く準備しましたのでお好きなものをお選びください」と伝えると各自がチーズケーキやアイスクリームなど好きなものを選んでいた。


(マジックボックスに、ヴァルータの全種類の飲食物を、家族と使用人達の全員分を準備して父に渡したら、とても喜んでくれた。ベクレラ王国の富裕層用複合娯楽施設のフードコートが大のお気に入りだからなぁ。後に、使用人達も大感激していたと聞いて嬉しく思った)


 選んでいるときにアルフォンス分身が思念伝達で「どんだけ茶番やねん、英雄殿」「ほんま勘弁してほしいわ、アル卿」とやっていたら、マイヤが思念伝達で「ん。早くここで仕事するきぼんぬ」「もちつけ」と、なぜこんなとこで古代ネラー語を使わないといけないんだ‥‥



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