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15話 ヴァルータの「公開」


 南部都市ヴァルータはほぼ完成という状態だ。さすがルシフェルとバルガス。


 また、彼らの配下達、その他の多くのエルフ、ダークエルフ、ドワーフ、悪魔(堕天使)、ヴァンパイア、天使、猫人族、犬人族、狐人族、兎人族、狼人族、鬼人族、龍人族、巨人族、小人族、魚人族、鳥人族も楽しく頑張ってくれているようだ。

 よくこれだけの種族が集まり、共生している。本当に素晴らしいことだ。

(獣人の多くは神獣ヨルムが呼びかけて集めてきたようだ)


 南部都市ヴァルータは横長の長方形の土地である。北側は家族のいるエング辺境伯領の中央部につながっている。

 接しているのは、北東部が男爵領、西側が侯爵領、東側は海(その海を挟んで魔族の住む島がある)、南側が(山脈を挟んで)テフヌト教国だ。


 ヴァルータ内部は以下のようになっている。


 北東部に川が流れており、水を引くことができ、北東部と東部は広大で肥沃な農地となっている。農業・畜産業が盛んだ。


 東部の一部は、いい具合の入り江があったことから港を造り、港湾都市として活気づいている。漁業が盛んだ。まだ船はないが、いずれは海運業にも乗り出す予定である。


 港湾都市の南に位置する南東部は、森林と山脈があり、林業、鉱業、採石業、鍛冶が盛んで、大きな工場も稼働している。


 南部は、透明度が高い湖があり、さらにその近くに非火山性温泉まであることから、周辺には多くの旅館・ホテルが建ち並び、巨大なショッピングセンターもあり、宿泊業、観光業、小売業、飲食業、娯楽業が盛んだ。屋台も多く、活気に溢れている。


(但し、まだヴァルータは「公開(結界の種類変更)」されていないので、観光客はいない)


 湖の北東側には、大規模な集合住宅が非常に多く存在する。

 独身用や家族用、種族共通や種族別など、様々な区分けがある。

 トイレと中規模浴場は共用だけど清潔に保たれている。


 ヴァルータのトイレはすべて「温水洗浄便座」である。便座の温度調整や洗浄についてはアルフォンスが術式を構築した。

 中規模浴場にもシャワーが多く設置されている。


 このような集合住宅は、住居費を安く抑えるために造った。奴隷もいるし(自由度は極めて高い)、不作で税が払えなかったり貧困が原因だったりなど様々な理由により他国から流れ着いた人たちがいるためだ。


 住居費を安く抑え、真面目に労働すれば、いずれ少し広い部屋に引越をしたり、結婚したりするなどの様々な希望をもって、多くの人たちが働いている。


 公共交通機関として、乗合馬車(通常の乗合馬車の3倍ほどの長さのもの)を、高い頻度で運行している。乗車料金はかなり安い。

 都市設計時から道を広く造っているので、乗合馬車による事故などもない。馬糞などの清掃もしっかり行われており、衛生面でも問題はない。


 その南側には、全天候型で5万人収容が可能なスタジアムがある。

 全天候型とは、普段は屋根がないが、天候によっては観客席のみ、またはフィールドまでも天候結界術式によって雨・雷・雹・熱(暑さ)・日差しなどを制御できるものだ。


 原則としてサッカー場であるため、寒地型芝草(季節を問わず常緑を保てる品種)が使用されているが、いずれはコンサートなども行われることになるだろう。また、緊急避難施設としての利用も想定されているため、空間拡張術式で20万人まで収容可能となる。


 湖の東側は、集合住宅ではなく、戸建てがメインの居住区である。高級住宅地や、さらに一部には別荘地もある。


 そして、ヴァルータ全体には、マーキュリー商業国とベクレラ王国で既に成功を収めている複合娯楽施設(1階フードコート、2階ボウリング場、3階スーパー銭湯)が、住民専用のものとして30箇所に点在している。


 住民はみな住民登録がなされ、全員にスマポが渡され、それが施設会員証となる。マーキュリー商業国・ベクレラ王国の一般用施設と同じ施設を3割引きの価格で利用できるので、日常的に使っているようだ。なかには混雑をできるだけ避けるために実験的に予約制を採用している施設もあるとか。


 住民に渡されるスマポは、有償だが分割返済が可能となっている。設定・通話・メッセ・背面色彩変化・為替レート表示・マジックボックス(最低容量2リットル分)の他に、「財布」機能がある。

 この「財布」機能こそ、5大商会の条件提示の際に隠されたものであった。


 給与は電子マネー(デジタル通貨)のように財布アプリに入金され、ヴァルータ内では買い物や施設利用料の決済、賃料や税金などの自動引落も可能となっている。


 官公庁・店舗・施設側にもそれに対応した端末の設置が義務付けられているが、現時点では、これから世界で販売されるものの半額で購入できるようにしている。


 なお、観光客専用のための、新たな一般用施設20箇所と富裕層用施設7箇所も完成している。観光客の数によっては増やすことになるだろう。


 また、サッカー場も50面ある。


 あと、女神ペルーサーさんの神像が収められた祠もあちこちにある。

(お供え物をすると、一瞬で消えてなくなってしまう、という報告が多数なされているが、気にしないことにする。太ったペルーサーさんの姿というのは想像できないので、まあいいだろう‥‥)


 最後に、北側の、辺境伯領の中央部につながるあたりには、官公庁・アルベルト商会本店・アルベルト銀行・各種研究所・各種工場などが存在する区域がある。


 官公庁についてだが、約5年前、アルフォンス(5歳)・シルヴィ・ウリヤーナ・ルシフェルらが、テフヌト教国からバルガスを含むドワーフ達を救出し、その時に行った大宴会の最中に、クルー全員に組織図・担当業務・担当者を具体的に説明した通りだ。


・人事庁。職業適性を含めた能力専用鑑定魔術で、多くの人材を集めて、適正な職業部門への配置を担当。(全員)


・軍務庁。軍事を担当。(熾天使ミカエル)


・情報庁。あらゆる情報を収集し、分析・監視・身柄確保・訊問を担当。いずれ他国から訪れるであろう諜報員や暗殺者にも対応。(大精霊ウリヤーナ、ヴァンパイア真祖ウピオル)


・外交庁。他国との交渉を担当。(姉ソフィア)


・財務庁。財政・経済・税・金融・通貨政策を担当。(アルフォンス)


・文化庁。娯楽・教育・研修、各種研究を担当。(神獣ヨルム、シルヴィ)


・食料庁。農業・漁業・畜産業・飲食業を担当。(シルヴィ)


・産業庁。林業・鉱業・採石業・製造業・運輸業・卸売業・小売業・宿泊業・観光業を担当。(神龍テュポン)


・建設庁。都市開発を含む建設業を担当。(悪魔ルシフェル、バルガス)




 いやー、まったくみんなよくやってくれた。


 ということで、いよいよ南部都市ヴァルータの「公開」だ。


 このとき、アルフォンスは10歳。


 なお、ヴァルータ住民が複合娯楽施設を3割引きで利用できたり、店舗・施設側が対応端末を半額で購入できたりするのは、「公開」までに住民登録を終えた者だけだ。都市開発に協力したことの特別待遇といえる。ただ、それも「公開」から1年間の期限付きだ。


(それ以上は新住民との軋轢を生むだけであるし、特別待遇としても過剰となる。その期限に関しては「公開」時に告知する)



---



 南部の魔物をアルフォンス・シルヴィ・ウリヤーナで3日間で壊滅させたとき、アルフォンスがシルヴィとウリヤーナに頼んだ結界(結界が張ってあること自体気づかれないものであること、結界内部の魔物は殲滅中も殲滅後もまるで存在しているかのように錯覚させること、結界内部に仮に何者が存在していた場合でも結界の外に出られず、思念伝達を含む全ての情報伝達を不可能にすること)が、現在まで南部の周囲の地中に埋め込まれた10万個の小さな魔石を魔力供給源として維持されてきた。


 いよいよ、その結界を新たな結界に変更するのだ。

 新たな結界は、クルー10人で完成させた最高傑作といえる自信作で、バルガス救出の際に突破したテフヌト教国の結界や、一度確認に行ったゲデック帝国やザイデル皇国など大国の結界が玩具にみえるほどの完成度である。


 具体的にはこうだ。


 外部から見えるようになる。

 物理攻撃・魔法攻撃・精神干渉・無許可の転移を完全に防ぎ、内部での悪意ある召喚魔法も不可能。各国から訪れてきてくれるであろう数多くの諜報員・暗殺者が入都した瞬間、結界から得られる情報によって情報庁に把握される。

(そして少し泳がせた後で身柄確保・訊問が行われることになる)


 内部では(プライバシーには配慮されるが)多くの監視・鑑定魔術が展開され、さらに情報庁長官ウリヤーナによって多くの妖精達との視界共有がなされ、それらの全ての情報が情報庁に集約される。

 そして情報を必要とする他庁にも共有される。アルフォンスが「縦割り行政の弊害を排すべく、情報共有による協調体制を必須とする」と以前に宣言していたからだ。


 魔石も倍の20万個に増やし、個々の魔石にも個別の小さな結界を張り、悪意ある者による結界妨害工作などを不可能にした従前のものと同じだが、魔石と転移門でつなげていた魔素溜まりの数も大幅に増やした。

 アルフォンスが開発した、魔石を「繰り返し充電して使用できる蓄電池バッテリー」のようなものにする術式も改善されて、より魔力伝達率が高くなり、魔力量も強力になっている。

 同時に、ヴァルータ以外のエング辺境伯領全体にも同様の結界を用意した。


 結界変更の操作は情報庁で行うため、10人で同庁の同庁結界局に入室した。既にウピオル直属の配下達が準備に入っていた。


(なぜか彼らが僕に感謝するかのようにペコリとするのだが、そういえば特殊浄化した邪竜の血をウピオルが配下達に飲ませたら、僕に忠誠を誓ったとか言ってたな‥‥)


 室内は、スマポの技術を応用して、大型ガラスのモニターが多数、手元にも中型の薄いガラスの(キーボード機能付き)操作用パネルが設置されている。

 ドワーフと小人族の精鋭達の叡知を結集した優れものである。


 アルフォンスは「ウピオル、結界変更を開始」と命じた。

「承知しました。みな、実行せよ」


 20分ほどで新たな結界に変更された。


(事前にかなりの段階まで進めていたんだろうな)



 ついにヴァルータの「公開」がなされたのだ。



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