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13話 5大商会に条件提示



 先方のスマポ5台を返却してもらって、アルベルトたち5人は人目のつかない場所まで歩き、そこからヴァルータまで転移した。


 ソフィアが「アル、政治ではなく商売だったけど、世界的な大物達と同席するだけで貴重な経験になったわ。ありがとう」と礼を言った。

「姉さんの外交庁長官としての活躍はまだ先になるよ。しばらくは広報担当をやってもらうことになるだろうからね」


 シルヴィは「明日、提示される条件を知って、先方はどのような顔色になるでしょうか」と楽しげだった。


 テュポンは相変わらず老紳士的に「そうですな。さすがに世界5大商会の会頭達といえども面食らうでしょうな」と楽観的な表情をしている。


 ウピオルは情報庁担当らしく「さすがに尾行するような愚かな真似はしなかったようですね。ちょっとは期待していたのですがね、ふふ」と独り笑いした。


 会頭達5人は、アルベルト達が退室した直後、商業大臣に「申し訳ないのだが、温かい飲み物を持ってきてもらえますかな」と頼んだ。


 シュヴァン会頭は「ご友人と言っていた4人も規格外なのでしょうね‥‥ 魔力制御が完全すぎて異様でしたよ‥‥」と何かを断念したようだった。


 ティボーデ会頭が「尾行など付けずに正解だった。下手なことをすれば‥‥」と言葉を飲み込んだ。

 

 商業大臣に退出してもらった後で、ティボーデ会頭が他の4人に問うた、「アルベルト殿はどのような条件で、我らの商会に魔導具『スマポ』の販売権を与えてくれると思うか。商会での販売価格に比して納品金額がかなり低いのだが、あれでは、作製コストを考えると、あちらは赤字確実ではないか」と。


 なぜアルベルト商会で自ら販売しないのか?

 それが可能な人脈もありそうなのに。

 いや、そんな人脈があればわざわざ我々に商談を持ち掛けることはないのでは? 以前の調査では彼の素性に関する情報は全く得られなかったらしいが、いきなり現れて盗賊達をひたすら身柄確保して誰も殺さず、賞金首以外は自分の奴隷にしているとい噂だ。

 魔物はソロでS級を大量に討伐しているとのことだが、誰も彼が戦っているところを見たことがないという。

 誰か黒幕がいて、アルベルト殿が単なる傀儡という可能性は?

 それは黒幕が裏組織の者だから自分たちでは販売できないと?

 いや、他の4人を見れば裏社会など無関係なことは明白かと。

 確かに、どれほど大きな裏組織でも容易に壊滅させることが可能でしょう‥‥

 まあ、明日の彼からの条件を聞いてみるしかないか‥‥


 いろいろ話し合ってみたが、結局は明日を待つしかないという結論で、5人は解散した。



 雲一つなく青空が広がる翌朝、アルベルト達が予定時間の5分前に部屋に案内されると、会頭達は先に部屋にいたので、双方が朝の挨拶をした。


 ティボーデ会頭が「いきなりで申し訳ないのですが、アルベルト殿、どうして我々に販売を任せてくれるのでしょう」。


 アルベルトは「単刀直入に申しますと、まず、私たちには世界規模の販路がないことです。次に、私たちはこれから様々な商売を展開していく予定なのですが、それを5大商会さんのご協力なく実現することは不可能だと考えており、味方としてご協力して頂く必要があります。そのためには、私たちがいることで皆さんの利益になるという状況を作るのが最善だと考えたからです」と伝えた。


(真偽鑑定魔法が使われているな。容易に無効化できるが、このままにしておこう。なんせ嘘は言っていない。言ったことは全て本当のことだ。ただ、本当のことを全て言っているわけではないだけだ。それくらいは先方も察するだろうけど)


「なるほど。(筋は通っている。嘘もついていない。ただ、真意の半分も言っていないか‥‥) えー、ただ、作製コストを考慮すると、アルベルト商会としては赤字になるのではありませんか?」

「いえ、これから提示します条件の中で述べますが、他で利益は出せますので大丈夫です。先日お伝えしました金額で『私たちがいることで皆さんの利益になるという状況』になりますでしょうか?」

「ええ、それはもう、十分なほどに」


 アルベルトは、ソフィアに向かって軽く頷いた。



---



 ソフィアは条件提示について引き継いだ。


「では、みなさまに条件を記載しました書類を各1部ずつ用意しておりますので、ご確認頂けますでしょうか」と書類を配布する。



・『スマポ』には最初からアプリ「設定・通話・メッセ・背面色彩変化・為替レート表示・マジックボックス(最低容量2リットル分)」が付与されていること。


・上記商品の納品代金は銀貨2枚であること。


・『スマポ』とアプリの初期不良についてはアルベルト商会が全責任を負い、5大商会は交換と無償修理のいずれかを任意に選択できること。(但し、取引開始から1年経過後は、検収後は初期不良とみなされないこと)


・5大商会または客が原因の故障についてはアルベルト商会が有償修理を行うこと。


・アルベルト商会による『スマポ』販売は狭い地域に限定されること。(但し、世界経済に大きな影響を与えるような緊急事態が発生した場合はこの限りでないこと)


・『スマポ』と追加アプリの納品は5大商会の各本店にのみアルベルト商会が行うこと。(商会が特定支店を選択した場合はそちらを優先するが変更は不可能であること。但し、本店・支店の移転の場合はその限りではないこと)


・納品と代金支払は同時履行であること。


・『スマポ』およびアプリの発注書は2日前までにアルベルト商会本店に到達する必要があり、それ以降の発注は代金が3割増しとなること。


・『スマポ』に最初から付与されているアプリ「設定・通話・メッセ・背面色彩変化・為替レート表示」については5大商会およびその他に5年間は公開しないこと。(但し、同期間は短縮される可能性があること)


・アプリ「マジックボックス」については5大商会およびその他に20年間は公開しないこと。(但し、同期間は短縮される可能性があること)


・5大商会が『スマポ』およびアプリの解明を試みることは自由であること。


・5大商会は『スマポ』を販売するに際して『スマポ』およびアプリの使用方法を購入者に正確かつ丁寧に説明する義務を負うこと。そのためにアルベルト商会において各商会2人が研修を受講する義務を負うこと。


・アルベルト商会関係者(および公開予定の『スマポ』作製場所や関係従業員)に諜報員・暗殺者などが接触を図ろうとした場合、その者を尋問して所属組織や指示者を聞き出し、そこから首謀者を明らかにするまで追及し、結果的に関係が判明した商会には永遠に『スマポ』およびアプリを納品せず、かつ、それまでに客に販売した『スマポ』およびアプリに関するあらゆる権利はアルベルト商会に無償譲渡されること。


・5大商会は、アルベルト商会の業務に可能な限度で協力すること。アルベルト商会の業務に対する妨害工作など協力義務違反行為が発覚した場合は、上項と同様の対応をとる権利を有すること。


・『スマポ』に最初から付与されているアプリ「設定・通話・メッセ・背面色彩変化・為替レート表示・マジックボックス(最低容量2リットル)」以外のアプリについてはアルベルト商会は地域を限定せず販売できること。但し、(5大商会に限定せず)全ての商会・商人などに納品が可能であること。納品代金は、アルベルト商会が販売する時点での各アプリ価格の8割とすること。


・『スマポ』を一括購入できない客には、アルベルト銀行が融資審査をしたうえで低利で融資し、分割返済が可能とすること。


・5大商会がアルベルト商会に支払う代金は、(支払い時点での適切な為替レート[異なる国の貨幣の交換比率]に対応した)ベクレラ王国・同国エング辺境伯領・ゲデック帝国・ザイデル皇国・テフヌト教国の発行する5つの通貨に限ること。



「こちらの提示する条件は以上となります。なお、その書類は1枚でもこの部屋から持ち出された瞬間に全てが消滅するようになっていますのでご注意ください」

 

 ティボーデ会頭は、「では我々はここで昼食をとりながら検討しますので、2時間後でお願いできますかな。あ、お手数ですが、部屋の外にいる秘書を誰でも結構ですのでこちらに呼んで頂ければ」ということなので、アルベルトは「承知しました。では我々は外で昼食をとってきます」と退室し、近くにいた秘書に用件を伝えた。



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