外伝2・銅貨はどうかしら?
ここは魔王城。
ここにはたくさんの魔物がいる。彼ら魔物たちが魔王城の平和を守っている。
最近急成長中の勇者一行の動向も大切だが、城の中にはもうひとつ動向を把握しておかなくてはなら無いものがある。
それは悪魔飴の所在と行動。魔王からは「好きにやらせておけ」と命が出てはいるのだが、城の魔物にとっては、いつ来るか分からない勇者たちよりも気をつけるべき存在だった。
鴉色の服を着ている魔物。背も高く顔もわりと悪くない。魔物の間でも人気の高い容姿なのだが、それは何もしていなければの話。動いている間は、もはや小動物か子供のよう。
今日もあわただしい城内。
そのあわただしさの中心には、大抵同じ人物が絡んでいる。みんなのアイドル(?)悪魔飴である。
その悪魔飴と名も無き魔物Aが、なにやら話している。
「この銅貨は、すごいんだぜ?」
なにやら立派な建築物の絵がかかれている銅貨を、魔物Aは悪魔飴に見せているのだ。人間の世界で流通している銅貨で大して珍しいモノではない。
「この銅貨の建物の扉、見えるよな?この扉が、なんと、とじたり、しまったりするんだよ!」
「え! ホント?」
悪魔飴はじっと銅貨を見つめる。
しかし何も変化がおきない。
「トジたり、シマッたりしないよ!ピクリともうごかないよ!」
魔物Aは、くすりっと笑うとタネを教えた。
――その数分後。
「ねぇ、ねぇ、このドーカ、すごいよ~」
悪魔飴はさっき教えてもらったネタを、名も無き魔物Bに見せようと銅貨を手渡す。
「コレに書いてあるタテモノのトビラ、トジたりシマったりするんだよ!」
「とじたり……しまったり……?」
魔物Bは思う。閉じること閉まること、それは同じだろうと。
「おまえ……こんなバカなことがすきなのか?」
魔物Bは言う。
「十人十色、十二単っていうじゃないか。人ソレゾレ違うってことさ」
悪魔飴は、えっへんとする。
魔物Bは思う。
(意味が分からない……何か間違っている、根本的に)
しかし、みな煩わしいと思っていても、誰も悪魔飴をなぜか憎めない。ある意味でこの城の主よりも愛されているのかもしれない。無邪気な人懐っこいこの性格が、そうさせているのか違うのか。
いつかはやってくるであろう勇者も気にはなるが、しかしまったく危機感の無い魔王城。
今日も本当に平和です。