7・対決!カボチャ団!食卓の明日はどっちだ!
「畑のカボチャを狙う魔王の組織が、あって困っているんだ。詳しいことは分らないのが事実だが、いくつかの畑が被害にあった。このままでは、みんなの台所にカボチャが届かなくなってしまう」
3人は畑にいるおじさんから話を聞いている。
「カボチャを狙う組織。一体どんなやつらなんだろう。怖いなぁ」
「カボチャだけを狙うって何をしたいのやら」
「あはは、面白そうな人たちだね。どんな些細な悪事でも魔王が関わっているなら勇者の出番、懲らしめに行かなきゃ」
3人はそれぞれの感想を言った。
「その悪の組織は、カボチャ団という名前で決定だね」
しゅりるりは言う。
その夜、畑の前で待ち伏せる3人。月明かりだけがたよりだった。
「どうしてこう魔王は町中に現れるのかしら」
ありすは思ったことを言う。
「駆け出しの頃は、基地とか、お城なんて構えられるほどの財産ないからね。どうしても飛び込み営業的な活動になるんだよ」
「そういうものなのかしら」
もっともらしい、しゅりるりの意見に納得しそうになっているありすがいた。
「眠い」
アトリスはそんなことはどうでも良かった。早く帰って暖かな布団で眠りたかった。
「お。怪しい者、発見!」
目のいいしゅりるりは、畑に侵入する集団を見逃さなかった。すかさず集団の前に飛び出した。
「あぁ、しゅりるりはいつも、後先考えないで飛び出すんだから」
ありすはそのあとを追う。
「待ちたまえ、あやしい集団!」
しゅりるりは嬉々として、手足を広げて行く手をさえぎるように立つ。
「我々は怪しいものではない!我々は影集団『失楽園』だ!」
思いがけない邪魔者に、集団は待っていましたとばかりに3列に並び、前々から練習していたであろう決めポーズ的なモノをみんなしている。
「怪しいにもほどがあるわ」
暗闇で人間の目には、その決めポーズはまったく見えないが普通ではない雰囲気が充分伝わってくる。
「あはは♪ カボチャ団、格好いい! 格好いい! あはははは♪」
その決めポーズはしゅりるりの笑いのツボだったようだ。今にも転げそうな勢いで笑っている。
「我々は、そのような名前ではない!」
しゅりるりは、まだ「カボチャ団♪カボチャ団♪」と連発している。
「む。むぅ」
魔王はしゅりるりを無視することに決めた。
「私は魔王アンキ」
影集団『失楽園』のリーダーは名を名乗った。
「さて私は忙しいのでな、貴様らの相手は」
アンキが合図を送ると、たくさんの手下の中から3人が前に出る。
「3対3で、公平に、な」
さりげないやさしさ、律儀さ。
しかし、3対3で同じ人数での対決ではあるが、手下はやはり手下でしかなく、下っ端なのであっという間に決着がつく。それでも足止めの時間的には充分だったらしい。
「くっくっくっっ、かぼちゃは頂いていくぞ!」
手下を徹底的に傷だらけにしている間に、アンキはカボチャをいくつか抱えていた。カボチャを手に取ると傷ついた手下とともに、さっさと逃走を図る。
「あ、逃げるのか? カボチャ団! 待てぇ!」
しゅりるりはわくわくしながら、アトリスとありすは仕方なく、カボチャ団のあとを追いかけた。
「さっさと逃げるなんて魔王の風上にも置けないやつだなぁ」
珍しく怒っているのかもしれないが、嬉々として追いかけているので、本当のところはどうでもいいのかもしれない。
岬の先まで追い詰めた。
この先は海だ。逃げ場はない。
「ふっ、ここまで追ってくるとは」
落ち着きを払ってふりむく。逃げる道を間違えたとは、今更言えない。
「食卓の明日を守らなくては。カボチャの無い台所には、させない!」
しゅりるりは正義の味方が、よくするように人差し指を立てる。ポーズは格好良いのだが、言っている内容が奇妙な感じで、燃える展開と言うヤツに、いまひとつ及ばない。そして、アトリスとありすは、もはや完全に置いてけぼりである。
なにはともあれ戦闘は避けられない。
「よし、いくぞー」
先手をきったのは魔王アンキである。
「アンキクラーシュ!」
しかし、見えない壁に阻まれ攻撃は届かなかった。
「こ、攻撃がきかない?」
これがアンキの使える最高の技なのだ。
「も、もう一度だ! アンキクラァァァーーシュ!!」
しかし、同じ結果に終わった。しゅりるりのかけた補助魔法の効果により、3人には物理的な攻撃はあんまり効かないようだ。
「ぐ、こうなったら」
アンキは両手を地についた。
そしてこう叫んだ!
「……ごめんなさい、見逃してください、カボチャは返します」
アンキは魔王と名乗る癖に魔法が使えなかったのだ。
こうして長かった戦いは幕を閉じた。
「これで終わったね。綺麗な夕日だ」
しゅりるりは言った。
3人は沈みいく太陽を見つめ、戦いのむなしさをかみしめる。
「いや、あれは朝日……それに、私は太陽なんて見つめてないわ」
ありすはナレーションにも突っ込む。
「そう、これからがはじまりなんだよ♪ これからが本当の戦いなんだ」
しゅりるりは、締めくくりの言葉を言う。
海の水平線に顔を出す太陽の光によって、染まった空は明るく輝いていた。
今日も一日、いい天気になりそうだ。
★おまけ★
「魔王って、いったい何なのかしら」
この前、町にいたあの小さな魔物と言い、今回のカボチャ団といい何か間違っている気がした。
「じゃあ、引退した魔王のところにでも行って『魔王とは何たるか』を聞きに行く? きっと10年くらいみっちり語ってくれるよ」
アトリスとありすは、全力で遠慮した。