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エピローグから始めるよ?

『今日も辺境に住む暇人は暇でした。

 ヒマだからヒマジンなんです。あまりにヒマすぎて、マヒしてしまうんです。

 そういうわけだから、暇つぶしに魔王退治に行くことにしました。


 この世界には魔王がたくさんいるのです。自称も含めて、それはもうたくさん!

 そして、いつの時代も一人は必ずいる、まじめに世界征服をたくらむ暇人……いや、魔王が。

 だから魔王を倒しに行こう! 世界を救いましょう!


 そう思い立った今から、暇人のマイブームは魔王倒しになりました。

 なので勇者と魔術師を探し出し、旅立ち、云々と……。

 彼らの企む悪だくみ(的な何か)を阻止するために、襲いくる魔物や四天王や魔王をばったばった切り捨てました。


 そうして勇者は世界を救ったのです』




「そう言う話♪」

 しゅりるりは「冒険の書」と表題のある、無駄に凝った装飾のなされた本を閉じながらそう語った。いつものことなのだが、相変わらずおかしな本ばかり(今回の場合は、しゅりるりの日記なのかもしれないが)その鞄からは出てくる。


「云々と……って、大事なところ省略しすぎじゃない?」

 黒いローブに身を包んだありすは言った。彼女は勇者とともに魔王を倒した魔術師である。


「じゃあ、あの冒険を一言一句逃さず、空白や行間でさえ見えるように丹精こめて読み上げようか?」

 赤褐色の本の角を手の平の上に乗せて器用に回しながら、いたずらっ子のような笑顔でしゅりるりは笑う。

 しゅりるりならば、やりかねない。こういう意味のないことに命を賭けるような人物なのだ。


「遠慮しておくわ」

 先手必勝、ありすは即座に断った。

「じゃあ、読むよ?」

 しかし同時に、その返事をかき消すように、しゅりるりもそう言っていた。そして間をおかず息を大きく吸い、本を片手に部屋の真ん中で一人芝居を始めた。



「はいはい、そう言う話だったわね」

 すでにありすは、自分の魔道書に意識は向いていた。


 飽きるまでやらせておけば良いのだ。長く一緒に過ごしてきたありすには分かっていた。しゅりるりは暇さえつぶせれば、観客がいなくても構わない、と。

「それにしても勇者様(・・・)はいつまで寝ているつもりなのかしら」

 ありすは温かな紅茶を手に、その香りの向こうにある寝台を見つめる。




「……ぼくはやっぱりただ流されていくだけなのかな」

 布団から出るタイミングを見失い、狸寝入りをしていた勇者のアトリスは布団の中でそっとささやくのでした。

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