第1章 あぁ素晴らしき研究の日々
自然が溢れ、まるで人間の侵入を拒むように入り組んだ山々や流れる大小無数の川。
そんな動植物の楽園シルヴェスト獣王国。
ここで俺は研究の日々を送っている。
崖をくり抜き作った洞窟で眼下の研究対象を観察しながら日夜、秘術の完成を目指している。
しっかしまぁ単純に眺めていたら退屈この上ない光景である。簡素な作りの木造の住宅。火は使えるようだが決して高くない技術と生活水準。
流石、世界に溢れ何処にでもいるゴブリン族。
ゴブリン自体に面白味はない。
その何処にでもいるゴブリンという存在。
俺をゴブリンの様に知覚させる。
それが小鬼効果【ゴブリン・エフェクト】
何もゴブリンになりたいわけではない
ゴブリンになったら恋愛とかできないし?
まぁしたことないけど。
ゴブリンになったら魔力とか減りそうだし?
せっかく人並外れた魔力と全属性使える魔伝子を宿して生まれたしこれを手放すつもりは毛頭ない。
そう…あんな風に利用されたり、他人に左右されるのはうんざりだ。
俺はそんな風に苦い過去を思い出しながらも2年間
鑑定【アプレル】をひたすらゴブリンに使い続けた。
同じ個体を執拗に、何日も何日も鑑定【アプレル】しまくり魔力の流れや魔伝子配列を確認したら次の個体へ…
見たくもないゴブリンの日常や営みを2年も見ているとなんだか不思議と愛着も湧いてくる。
でも「アギャアギャッ」とか「ハギャハギャ!」とか
2年間見ててもゴブリン語はわからないけどな。
あいつら言語とかあるのかな?
まぁいいや、ゴブリン観察ももう終了だ。
度重なる鑑定【アプレル】の結果、ゴブリンは一定の魔力の循環ルートがある。
さらに絶対に刻まれている魔伝子があることがわかった。
その魔伝子をこの身に刻み、魔力の循環を全く同じルートで行えばきっと…
まぁ失敗したらやり直せばいいし、まぁどうにかなるだろ。
じゃあ早速…
魔伝子改変!
身体に無数の紋章が浮かび上がる光を放ち
ルーン文字で魔伝子配列を組み替え追加する。
「痛って〜!」
身体の内側を熱したナイフで刻み焼かれるような痛みに悶えながら改変を終えた俺はそのままその場で意識を失い膝から崩れ倒れた…
俺、後衛だから痛いの苦手なのに…