第3話 食事は大切
私は体を起こすのに必要な日光を浴びて、再びカーテンを閉めた。
シャー
自宅にいる時は、必要以上に日光を浴びるのが好きではなかった。特にギラギラと鬱陶しい西日は大嫌いだった。
私にとって休日の過ごし方といえば、昼前に起き、買い物に出かけて、帰宅したら遊び、夜晩酌というパターンだった。だが、この日の私はそんな気分にはなれなかった。
「飲み過ぎたぁ〜。」
翌朝、二日酔いの状態になるためとはいえ、750mlのリキュールボトル1本は飲み過ぎだ。
「そういえば昨日、IQ高めの人が持ってる特徴を調べたが、内容を全く覚えてない。どうせ動けないし、もう1回調べるか。」
バグった頭で様々な内容を記憶することは出来ないと思い、私はノートとペンを用意し、調べた内容をメモする事にした。
『皮肉が好き』
「口には出さないけどねー。頭の中でよく言ってる。」
『関連性を見つける事が得意』
「考察してると関係なさそうな事でも、共通点が見えてくるんだよね。」
『閃きがある』
「直ぐには閃かないよ。だけど考えれば考える程、天啓は必ず降ってくる。」
『数字に強い』
「数字、好きです。子供の頃、算数とか数学得意だったもんなー。」
『本が好き』
「これはごめんなさい。読んだ方がいいよね。わかってる。けど苦手なんだー。直したい。」
『思考する癖がある』
「言うまでもないでしょ。」
『好奇心旺盛』
「好奇心は、宝だと思ってる。」
『興味がある事に対して集中力が高い』
「逆に興味がないと、必要な事でも関心を示さないからね。ある意味、タチが悪いかな。」
『特定の領域には強いが、それ以外は普通または普通以下の場合がある』
「脱帽です。これに関しては何も言えない。」
『夜行性』
「はーい。呼んだ?」
掲載されていた特徴の中には、研究を基にした場合もあれば、引用先が書かれていないケースもあり、全てにおいて信頼性が確保されている訳ではなかった。それでも、ほぼ当たっていることから自分という者を少しだけ理解することができた。
「最後に、アルベルト・アインシュタインの言葉が載ってる。」
《私に特別な才能はない。ただ、ものすごく好奇心が強いだけだ。》
「やはりな。なんとなくわかってきたぞ。」
朝10時に起き、気付けば14時になっていた。二日酔いは程よく収まり、私はウロウロと部屋を歩きながら『もう1人の私』と、調査のまとめを話し合っていた。
「IQの正体に対する、オレなりの考えがまとまったよ。」
((聞かせてもらおう。))
「IQとは、その人の物事に対する、考え方、行動、姿勢とか傾向を数値化した物じゃないかと思う。」
((なるほど。天才の指標ではないと?))
「あぁ。理由はいくつかある。まず、オレは天才じゃない。」
((確かに。))
「次に、アインシュタインでさえも『自分に特別な能力はない』と言ってる。」
((そうだな。))
「最後に、IQ130以上でMENSA会員になれる人は世界人口の約2%らしい。現在が約77億人だから、ざっと計算して約1.54億人。世界に天才が日本の人口より多くいたらどう?世界偉人伝が1億5400万人分できるわけさ。」
((少なくとも天才の指標ではないな。))
「そう。そしてIQは120を超えるとデメリットも生まれる。『話が噛み合わない』『気分の浮き沈みが激しい』『不安を抱えてしまう事が多い』『アレルギーなどの持病を抱えている』とかね。もちろん、あくまでも傾向だから一概ではないけど思い当たる部分はある。」
((なるほどなー))
「ちなみに『賢さ』って事だと少し関わってくるかもしれないね。」
((ほう。例えば?))
「いくつかあって、『会話の先を予測できる』『別々の物に対して関連性を見つける事ができる』『興味がある事に対しての集中力が高い』『数字に強い』とかね。」
((結構見えてきたんじゃねーの?自分自身ってやつが。))
「いや、これはIQが高めな人の考え方や行動の傾向だ。オレという人間がこの傾向と共通点が多少あるって、わかったに過ぎないのさ。」
((次のステップに続くんだな。))
「そう。本当の自分を見つける。ちなみに、ここからは根拠が無いんだけどさ『自分を知るって事は、自分を守るって事に繋がるのでは?』と思うんだ。」
((へぇー。なんでだ?))
「例えば、とある男性がAという地点に『本当の自分』がいると思い込んでいて、そこをガチガチに守っているとする。でも実際はA地点ではなく、そこから100m離れた場所に『本当の自分』がいて、その状態で敵に攻撃された時、彼は自分自身を守れるだろうか?」
((なるほど。自分を知り、自分がいる場所・状況・環境を熟知しなければ『内なる本当の自身』を、守ることが出来ないという考えか。))
「うん。さあ、面白くなってきたじゃないか。」
陽は完全に沈み時刻は19:30。私は最後に食事をしてから21時間ほど経過したお腹を宥めながらスーパーへ向かった。