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先輩のお世話

「二人で話すのを部会っていうのかな」


「いいますね。同じ部活の人が話し合うことを部会と定義するのが普通だと思います」


「文芸部だし、数学みたいに定義しなくていいよ」


「……とにかく始めますよ先輩」


 藻葉さんは、そう言って、上履きを脱いで部室の中央に座った。藻葉さんの太ももの見える度がアップし、そして靴下の先まで見える。JKの靴下と太ももはいいね。


 あ、なんで藻葉さんが靴下を脱いだかといえば、この部室が何もない座敷状態だからだ。パソコンは二台あるけど椅子とか机がない。執筆に向かなさすぎる環境。だから僕も大体家で書いてて、こっちではだべったり読書が多い。


 僕は藻葉さんに向かい合う感じで、少し離れて座った。なんだこのお見合いみたいな感じ。いや、こんなお互いにだらしなく足を延ばしてるお見合いとかないけどねたぶん。


「まず今回は……えと、あれをしましょう。とっておきのですほらじゃじゃじゃのじゃん!」


 藻葉さんは、文庫本を振り回して、そして、文庫本を広げてまた閉じた。何するか決めてなかったんですかね……。


「なにもすることないじゃんじゃじゃじゃのじゃんになってるけど」


「そんなことないです。いいんですこれで。先輩と二人になってるわけだ……何でもないです。あ、思い出しました。私、部誌の執筆で行き詰っているから相談したいです」


「おお、そういうことか。おっけーだよ」


 僕はうなずいて納得した。


藻葉さんは確か恋愛小説を書いていたはずだ。僕のラブコメとは少し違うけど近いところもあるのかなって感じ。それで、僕に相談したのか。


だけど、自分の作品を見せるのは、結構ためらうもんだ。だから、ちょっとあせっていたんだろうね。


「あ、じゃあまず……私が書いている話は主人公の女の子は超しっかり者なんですよ」


「おお、はいしっかり者ね」


「で、その人には好きな人がいて、その男の子はおっちょこちょいなんですよ」


「おお、はいおっちょこちょいね」


「なので、女の子は、男の子の世話をしたいと思ったわけですね」


「いい流れだ」


「で、行き詰りました」


「なんで?」


 王道シチュエーションがいっぱいあるよたぶん。お弁当作ってあげるとか、クッキー焼いたから食べる? とか、買い物行ってあげるとか、朝から来て起こしてくれるとか……。


「私、誰かのお世話したことがありません。モンゴリアンデスワームのお世話もしたことがありません」


「そうか」


「なので、先輩のお世話して執筆に役立てたいんですけどいいですか? 先輩あんまりしっかりしてないじゃないですか、で、わたししっかりしてるじゃないですか」


 ん? 僕はしっかりしてないけど、悪いけど藻葉さんも一緒くらいだよね……。


 でも、しっかりしてない女の子の後輩は可愛いからいいよ。自覚してないのも可愛いからおっけー。だから僕は答えた。


「うん、そうだよね」


 すると、藻葉さんは、すごい嬉しそうに、文庫本を脇に置いてから上品に座りなおした。でも、それまであぐらっぽい座り方だったんだよね。


「では、私、明日から早速行動にうつしますので、お願いします」



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