表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/57

飲みすぎました

―――1時間後


「刻也、おい刻也、大丈夫か?」

「……んー。大丈夫だって言ってんらろ、うるしぇーなー」

「呂律回って無いぞ。つか、座敷だからって横になるなよ。仮にも、そこそこ大手の会社の社長様なんだからさ」

「うっせーやい。どうせ誰も見てねって」

「ほらご覧。あそこで子供が、憐れんだ目でお前を見ているよ」

「見てんじゃねぇガキー。見世物じゃねんだぞ、大人はみんな、こんなだからな。お前もこうなるんだからな」

「大丈夫だよボク。世の中、こんな大人ばかりじゃないからね。将来に絶望しちゃダメだよ」

「何言ってんだよ、絶望は早めにさせた方が良いだろうがよー。どうせ世の中こんなだぜ。俺なんかさー、毎日毎日、社員たちからの暑苦しい眼差しの中でさー、期待に応えるために頑張ってんだからな」

「それは大変だな」

「そうなんだよ大変なんだよ。でも大変って言えないんだよ。だって俺仕事できるし、外面良いし、それに社長じゃん? 弱音なんか吐けるかよ。だから疲れるんだよチクショウが」

「それならさ、周りに頼ってみれば良いだろ、たまには」

「何言ってんだアホ! そんなんだからお前は……あれだよ、あの……ほら……あれだよバカ!」

「続く言葉が思いつかないなら言うなよ」

「それに、本当の自分とかよー、見せたくねえっつーか。見せて拒否られたら、俺どうするよ? 生きてけねーよ」

「そうか?」

「みんなみんな、お前みたいな良い奴ばっかじゃねえっつーの。猫被った俺だけを見て、それが俺の全てって思って、少しでもイメージと違えば、あなたってそんな人だったんだって引かれてよー。うぜえよ、お前は俺の何を知ってんだっつーの」

「確かにな」

「ま、でも結局、全部自分のまいた種だってのは知ってんだけどよー……だから、自分以外の誰も責められねんだよ。だから余計につれえの」

「そうか……」

「うっ……ううう……ぐすっ……」

「なっ。刻也、お前泣いて」

「ああ? 俺が泣くわけねーだろバーカ。これは涙じゃなくて、酒だっつの」

「ったく……そうだな、酒だな。ごめんごめん」

「おや、来栖さん、大丈夫?」

「ああ大将。ごめんね、こいつ酒弱いんだ。まだビール2杯しか飲んでないのにコレだよ」

「え、2杯でその泥酔具合なんだ。タクシー呼ぼうか?」

「うん、お願い」

「そう言えば来栖さん、さっき何か叫んでいたみたいだけど」

「ああ……こいつさ、自縄自縛なところがあって。変に着飾らなくたって、十分立派なやつなのによ」

「大好きなんだね、来栖さんのこと」

「はは、照れるからやめてよ大将。……でも、刻也とは切っても切り離せないっていうか……大将と、大将が頭に巻いてるそのタオルみたいな関係なんだ」

「うーん……分かるような、分からないような」

「そう言えば大将って、いつも頭にタオル巻いてるよね。やっぱり、汗かくからなの?」

「それもあるんだけどねえ。……頭にちょっとした怪我があってさ、それを隠すためでもあるんだよ。……あ、そんなことより、来栖さんの連絡先教えてもらえないかな?」

「ん? 何で?」

「さっき、話を途中で切っちゃったからね。来栖さん、その話すごく聞きたがってたみたいだし、後でゆっくり話そうかと思って」

「そういうことか。うん、いいよ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ