表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/57

ビールが美味しい

「明、最近仕事の方は順調か?」

「はは、やめようぜ仕事の話は。もっと楽しい話をしよう」

「楽しい話?」

「そうそう。お前、恋人とかできたのかよ?」

「……相変わらず、いないな」

「お前高校の時から彼女作らなかったもんなあ。あんなにモテてたのに」

「みんな、俺の外見しか見てないからさ。彼女が欲しいとか、思ったこともない」

「くーっ! なんてもったいない! そもそも、お前が周りと壁を作ってたのも原因だろ」

「確かに」

「一時期は、お前がゲイなんじゃないかって噂も流れたっけ」


 ふと、高校の卒業式という名のトラウマを思い出した。男からもらった熱烈なラブレターを、トイレに流したあの忌まわしき記憶……


「どうした刻也? 顔色が悪いぞ?」

「ああ、気にするな。酔ったんだ」

「まだ飲んでもいないのに!?」


 と、大将が生ビールを運んできた。


「はーい、生2つね。お通しも置いとくよ」

「ありがと、大将」

「そうそう、それとね来栖さん、思い出したよ」

「何をですか?」

「さっき、あなたの名前に聞き覚えがあるって言ったでしょう?」

「ああ」


 言ったっけ。


「ここの常連の女の子……女性がね、前にそこのカウンター席でさ、あなたの名前を叫んでたんだよ。「来栖刻也、待ってろよー!」って。まあ、相当酔ってたけどね」


 その情報を聞いて、わざわざ記憶を辿らずとも、すぐに彼女の不敵な笑みが頭に浮かんだ。

 

「その女性って、神奈のことですか?」

「ああ、知り合いなんだね」

「おい刻也! 何だよ誰だよその人! 恋人か? 恋人なのか!?」

「それは無いな」

「即答かよ」


 まさか、神奈もここの常連だったとはな。というか、どうして俺の名前を叫んでいたんだ?


「その話、いつ頃のことですか?」

「んー……確か、2週間くらい前だったかな」


 俺が神奈に初めて会ったのも、そのくらいだ。となると、俺を殺すようにと神奈に依頼したやつも、一緒にいたのかもしれない。


「神奈、誰かと一緒ではありませんでしたか?」

「うん、一緒だったよ、男の人と」


 ほほう。依頼主は男か。


「その男って、どんな」

「大将、お愛想―!」

「はいよ! っと悪いね来栖さん。この話は、またあとでってことで」

「あ、はい」


 結局、依頼主が誰だったかまでは突き止められなかった。しかし、手掛かりを見つけることはできた。またあとで、時間がある時にでも聞きに来よう。


「なあ刻也、その神奈ってのは一体――」


 俺は明を無視して、ジョッキを思い切り傾けた。苦い液体がノドを流れる。爽快な気持ちになった。


「お、おい刻也。お前そんなに強くないんだから、ペース考えた方が」

「ふっ……ふふふふふふ……ふははははははははははははは!!」

「刻也! 気を確かに!!」

「神奈め! ついに! ついに俺は手掛かりを掴んだぞ! これでお前に振り回される日々ともおさらばだ! ふはは! ふーっははははは! ふーっははははっははははははははは――」

「お客様、もう少しお静かに願います」

「「――すいませんでした」」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ