防犯の鉄則
18時。仕事を終えた俺は、いつものスーパーではなく、ホームセンターへと来ていた。防犯グッズを物色していると、店員が声をかけてきた。
「いらっしゃいませ。防犯グッズをお探しですか?」
「ええ、まあ。そんなところです」
「防犯の鉄則は、何よりもまず、強盗などの危険人物を家に侵入させないことです。ですのでこちらの、防犯カメラやセンサーライト、窓に貼る防犯フィルムなんかがおすすめですよ」
「家に侵入させないこと……」
侵入どころか、昨晩はリビングのソファで堂々と大の字になって寝ていましたよ、危険人物。
「侵入してしまった場合は?」
「その場合は、逃げることが第一です。無理に追い出そうとしてはいけません」
「危険人物を受け入れて、家に寝泊まりさせるというのは?」
「ははっ。お客様は冗談がお好きなんですね。そんなことを本当にしていたら、命がいくつあっても足りませんよ」
「はははっ。確かにその通りですよね」
冷や汗が止まらない。
「ではこの、催涙スプレーと小型スタンガンを頂けますか」
「かしこまりました。しかし、これらを使わずに済めばいいのですが」
「同感です」
「これらがあるからと言って、無理に戦おうとしては危険ですよ。くれぐれも、ご自身を大切になさってください」
店員からの忠告に、俺は何も答えることができなかった。