表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/57

もうダメだ

 『もすうるしゃーの祟り』の意味を知ったアタシは、大きな溜め息をついた。ワン望愛泰夢は『もすうるしゃー』の意味を深読みして、狗藤組長に危害が及ぶことを心配し、結果的にアタシがここに来る羽目になった。それなのに、『もすうるしゃー』が『口内炎』って。まぁ、アホ集団と評判の猿怒冷酸のことだから、そんなことかとは思ったけれど。けどもっ! ……もう疲れた帰りたいよ。

 というか『mouth ulcer』は『もすうるしゃー』じゃなくて、『マウスアルサー』みたいな読み方だった気がするんだけど。

 とにかく、聞きたいことは聞けたし、こんな(変態的)精神状態にある今の猿怒冷酸が、ワン望愛泰夢への嫌がらせを続けられるとも思えない。たぶんね。だから目的は達成したということで。そういうことにして。アタシはさっさと帰りますさようなら。


「どこに行かれるのですか女王様」


 逃げようとしたが、豚に引き留められてしまった。視線を動かすと、周りは他の構成員たちに取り囲まれ、出入り口の扉の前では、斧を持った構成員がアタシの退路を塞いでいる。逃げられないなぁ。仕方が無いので、芝居を打つことにした。


「あんたら、そんなに痛みが欲しいの? 薄汚いのは、その顔だけにしてほしいんだけどね」


 そう言ったら、構成員たちが息を荒げ出した。ドン引きなんですけど。


「そんな家畜共には、お仕置きが必要だね。目隠しになるようなものはある?」

「はい! ここに!」


 当然のように人数分の目隠しがあるなんて。この組織は大丈夫なんだろうか。


「よし、じゃあそれを各々装着して。良い夢を見させてあげるからね」

『はいっ!』


 構成員全員が目隠しをしたのを確認してから、息を潜めて足音を消して、事務所の扉から逃げ出すアタシ。その背後で、


「女王様、どんな夢を見せてくれるんですか?」

「おれ、飛び切り苦しいのが良いです」

「それは女王様が決めることだ。お前の意見は話すな」

「ああそうでしたごめんなさい。お詫びにたくさん殴られますね」

「バカ野郎。それなら僕は強く縛ってほしいです」

「女王様」

「女王様!」

「……女王様?」

「…………女王、様……?」

「あれ? 声が聞こえない」

「放置プレイか」

「ああそうか。ありがとうございます女王様!!」


 と騒ぐその姿に、この組織はもうダメだと確信を持った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ