女王様、再び
――10分後
アタシの目の前には、猿怒冷酸の構成員全員が並んでいた。みんな、地べたに正座している。それから、綺麗に揃った動きで頭を下げた。
『申し訳ありませんでした女王様ああああああああ』
どうしてこうなったんだろうか。
アタシは、土下座している構成員を見下ろす。彼らの体には、アタシが付けた怪我が見て取れる。血が滲むまでムチで打ったり、火傷するまでローソクの蝋を垂らしたり、手錠とロープで体を縛ったり、手持ちの道具を駆使して痛めつけた筈なのだが。
それなのにどうしてみんな、恍惚とした表情を浮かべているんだろう。
ああ しまった。開けたらいけない扉、開けちゃったのかも。
「はぁはぁ。女王様、妹の制服を無断で借りてきた俺は、とんでもない変態野郎です。だからどうか、もっと強くぶってください!」
「英司の変態ぶりはいつものことだ。それよりも、不良してる癖に警察の恰好なんてややこしいことをしているオレをぶってください!」
「落ち着けお前ら。全てはリーダーたる私の責任です。どうか私だけを強くぶって、縛ってください女王様!」
き、気色悪い。
「いや、もう、良いよ。アタシ、帰る」
「そう言わずに! どうか私を罵ってください、この豚野郎と!」
「帰らせてぇぇぇ」
泣きたくなってきた。
息を荒げる構成員たちから距離を取りつつ、この場から逃げ出す方法を考えていたら、ふと思い出したことがあった。そうそう、あの意味を訊いておかないと。
「そういえば、訊きたいことがあるんだけど」
「何でしょうか女王様」
その呼び方については、取りあえず目を背けることにしよう。
「ワン望愛泰夢への襲撃のときに、必ず言い残す言葉があったでしょ?」
「もすうるしゃーの祟り、ですか?」
「それ、どういう意味?」
すると、囚人服姿の構成員が答える。
「その言葉は、ワン望愛泰夢への嫌がらせを始める前夜、みんなで話し合って考えたものなんですよ」