利伊田飛鳥③
「安心しろ。狗藤組とお前らを直接対峙させようとは思ってない。この前の抗争で気付いたが、狗藤組を直接潰しにかかったところで、大したダメージを与えられないようだ。腰抜けばかりだから、すぐ逃げられるんだよ。だから、今度は周りから攻めていく」
「周り?」
「まぁ、詳細はあとで伝えるとして。先に、買い出しを頼まれてくれないか」
「はいっ」
「悪いな。猿山組でも何かと忙しくてよ。口内炎も痛いから安静にしておきたいし」
「口内炎は、辛いですからね」
「そうなんだよ。で、用意してほしいものは主に2つだ。1つめは武器だな」
「武器ですか」
「ああ。だが、あまり殺傷能力が高すぎるのも困る。今回はあくまで嫌がらせ程度だからな。銃とか刀だとお前らもなかなか使いこなせないだろうし。だから、鉄パイプが丁度いいだろう」
「鉄パイプなら、鉛筆よりも持ち慣れています」
「なら安心だ。それから2つめは、変装グッズだ」
「分かりました」
猿飛は組員に指示し、ペンと紙を用意した。
「アホなお前らでも間違えずおつかいが出来るように、俺がメモに書いてやるよ」
「ありがとうございます」
そう言って猿飛がサラサラと文字を書いた紙を、組員経由で受け取った飛鳥。まるで国宝級のお宝でも扱うように、慎重にその折り畳まれた紙を懐へとしまった。
「じゃあ、頼んだぞ」
「はい、お任せください!」
その後、事務所から猿怒冷酸のアジトへと戻った飛鳥は、受け取った紙を次郎と英司に渡したのであった。