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英司と次郎③

 踏まれた足と殴られた頭の痛みを堪えつつ、タクシーのトランクに鉄パイプを積んでいく英司。運転手のおじさんは不思議そうな表情でそれを手伝いつつ、


「お客さん、こんなにたくさんの鉄パイプ、どうするんです?」

 

 と訊いてきた。咄嗟に、後部座席に座っていた次郎が、


「仕事で使うんですよ」

「ああ、なるほど。土木関係のお仕事か何かですかね」

「ええ、そんなところです。現場に今から向かうところでして」

「そうですか。で、どちらまで向かわれるんで?」


 行き先を尋ねられた次郎は、英司へと顔を向け、「お前が答えろ」と目だけで指示した。

 英司は、嘘の行き先を伝えるわけにも行かないので、次に向かうべき場所をはっきりと伝える。


「SMショップまで、お願いします」


 その場の空気が凍り付いた。運転手はトランクへと積み込んでいた鉄パイプを危うく落としかけ、次郎は顎を外しかけ、英司だけが呑気な顔をしていた。


「SMショップですか……?」


 客への眼差しを鋭くする運転手。が、自らの仕事を全うせねばというプロ意識が働いたのか、無理やり首を縦に振った。色々な言葉を飲み込んでいるのが、次郎には分かった。英司には分からなかった。


「かしこまりました。ですけど、どこにあるのかちょっと存じ上げないので、道順を教えてもらってもいいですかね?」

「ええもちろん」


 鉄パイプと不良2人を載せたタクシーが、SMショップへと向かって走り出す。次郎はもう帰りたかった。


「(おい英司、お前はオレに恨みでもあんのか)」

 

 後部座席に座る次郎は、横でへらへらしている英司に小声で話しかけた。


「(そりゃもう、たくさ――いや、あるわけないじゃないですか)」

「(じゃあなんだよ、SMショップって。おいバカおい)」

「(確かに行きづらいところですけど、でも、組長から頼まれたものが売っていそうなところが、そこしか思いつかなくて)」

「(なんだよ、頼まれたものって。鉄パイプと?)」


 すると英司は、懐から一枚の紙を取り出した。


「(朝、リーダーに渡された、おつかいメモです。組長直筆ですよ)」

「(それか。ちょっと見せてみろ)」


 おつかいメモを見た英司のバカが、また何かバカな勘違いをしているに違いない。そう思いながらメモに目を落とす次郎だったが、そこに書かれた短い単語を繰り返し繰り返し読んで、それからゆっくりと頷いた。


「(確かにこれは、SMショップにありそうだな)」

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