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英司と次郎②
踏みつけられた足を若干引きずりつつ、重いカートを押して店の外に出る英司。その後ろを歩く次郎が、
「そういや、車は?」
と訊くと、英司はさらっと答えた。
「え、ありませんよ?」
「…………は?」
「俺、チャリで来たんです」
「なんで?」
「だって、車使ったら二酸化炭素とか出て環境に悪いって、テレビで言ってまし」
ゴッ。言い終わる前に、次郎の堅い拳が英司の頭を殴った。
「お前っ! 不良の癖してなに環境問題気にしてんだよ!? いやそれより、どうやって帰るんだよこの鉄パイプ持って!」
あ、と呟く英司。そこは考えていなかったらしい。
「オレはタクシーで来たから車は無いし、どうすんだよバカ!」
「……チャリに載せて?」
「載せられるもんなら載せてみろやっ」
「タクシー呼びますか」
「ま、それしかねぇか」
「タクシー代って、経費で落ちますかね」
「落ちるかバカ!」