青の国の病院事情と夏の国に関しての報告③
王様は、説明を続けました。
「この国は、もともと暑さには強い国でな。最初は夏が続いて喜ぶ者たちも多くいた」
「先ほども大変な盛り上がりでしたね」
「あんなものは、この異常事態を誤魔化すための催しに過ぎん。・・・この国は母なる海と共に生きてきた。確かに夏には捕れる魚も多い。しかし、徐々に問題が表面化してきた。先ほどのトラブルもその一つだ」
「シャメのことですか?」
「ふむ、まず本来ならもっと陸地から離れたところに、住むはずの魚が人間の住む浜辺まで来てしまうことが増えた。おそらく、夏が続きすぎたせいだと、学者は考えている。さらに、我々が素手で狩りをしたのをおかしいとは思わなかったか?」
「えっ?すみません。この国の一般的な狩りの方法なのでは?」
「我々とて、武器や船を使う。しかし、今は使えないのだ。それらの、道具を我々は季節に合わせて作っている。秋に森から木を切り出し乾かす。冬に加工などを行い。春には色を着け、装飾する。そして、やっと完成となり主に夏に使用する。夏では、これらの加工ができないのだ。・・・・・・食料は十分にあるが、予備の道具が無くなってきている。このままでは、この国は滅びることになるだろう」
「なるほど、でもサーフフィンの板はあるんですね」
「・・・あれは、夏の女王様からの贈り物だ」
おや、意図せずして女王様の話が出ました。
「この国では、女王様と交渉をしているのですか?だったら、頼み込んで移ってもらってください。手紙に書いてある通り、夏の女王様が移動してくれれば国は救われるのです。そして、私は世界の英雄になって毎日自堕落ライフなのです」
「・・・心の声が出ていないかね?夏の女王様はサーフボードだけおいて、我々とには顔も見せてくれん。だが、変化があった。そこで、君にお願いがある」
「・・・夏の女王様と交渉しろと言うのなら、拒否します。死んでも拒否します」
「拒否しすぎだろう・・・。安心するがいい。夏の女王様との交渉はもうよい」
「えっ?あっ、そうなのですか・・・。これまでの流れからやばいと思ったんですが、どういったお願いでしょうか?」
王様は嬉しそうに言いました。
「だいたい、夏の女王様との交渉は済んでいるだろう?赤の国に行き、春の女王様を塔から追い出してほしい」
・・・・・・私の頭は、付いていけませんでした。
私が外に出るとすでに夕方でした。私はサーフィンの大会を見た崖の上に行きます。そこにあった小屋は、なぜか塔になっていました。塔に入るまでもなく、私を案内してくれた女性が扉の前で待っていました。女性が声を出します。
「あら~。待ってたわぁ~」
私は答えます。
「・・・お待たせして、すみませんでした。夏の女王様」
この天真爛漫な方が、夏の女王様とのことでした。立ち話もよくないとのことで、塔に入ります。この国の名産と言うお茶を飲みながら。夏の女王様が話し始めました。
「だって、質問してこないのだもの」
「いや・・・、確かに名前も知らずに今まで会話していたのが失礼と言うのは重々承知していますが・・・。でも・・・」
明らかに、この夏の女王様は楽しんでいました。私は、青の王様から渡された手紙を差し出します。これは、今日の朝に青の王様に届いた手紙とのことでした。
ちなみに、中には夏の女王様が塔を動かないのは、次に向かうはずの赤の国の塔から春の女王様が出てこないからだ。という内容の文章と。
※P.S. 赤の国には病院にいる外交員さんを行かせてね~。彼女じゃないとだめだからね~。
と、いう注意書きが書いてありました。
「あの・・・。いったい、どういうことなのですか?女王様・・・。このままでは、季節の女王様が巡る。四つの国を私が回ることになります。何かお考えがあるのですか?それとも、本当に原因は春の女王様なのですか?」
夏の女王様の目が少し、真剣なものに変わった気がしました。しかし、すぐに明るい笑顔になります。
「どうかしら?でも、少々急いで欲しいのよね~。それに・・・あなたも、決心はしているはずよ」
その通りでした。ここに来たのは夏の女王様に挨拶のためです。
私は、すでに赤の国に行く決心をしていました。
だって・・・・・・。
「だってあなたは・・・」
「はい、そうですね・・・私は・・・」
少しの沈黙がありました。
「国と国との―――」
「青の国に借金が・・・」
「・・・えっ」
「・・・えっ」
夏の女王様はポカーンとした表情になりました。初めてですね、口をポカンと空けたこの表情は。ちょっと間の抜けた顔をしても美人は可愛いと言われるので羨ましいです。
「えっと・・・。普通はここまで来たら、赤の国まで回って、最終的に自分が国々を守ろうとするのでは無いかしら?」
女王様の質問に私は答えます。
「いいえ、私は夏の王様に負債があるので、赤の国に行きます」
実は、青の王様とこんなやり取りがありました。
「なぜだ!なぜ嫌がる!褒美は出すし、旅の準備も手伝おう!良ければ、その胸が小さくなる病に効く薬も探し出そう!」
「別に病気じゃないですぅ~!遺伝ですぅ~!この国の人が色々大きいんですぅ~!っていうか!絶対王様たち騙されていますって!きっと女王様達が、なんか悪いこと考えているんですよ!きっとそうです!王様、この国の兵隊を私にお貸しください!ちょっと、女王様とっちめてきますから!」
「女王様達に何たる無礼だ!大体、季節の女王様たちは、我々人がどうにかできるお方たちではない!!」
「頑張れ頑張れ!できるできる!気持ちの問題ですって!・・・どっちにしろ嫌です!絶対に行きません!」
「・・・絶対にか!」
「はい!」
青の王様はうなだれていました。実際に、この問題は一つの国で収まるものでは無い、と私は感じていました。とりあえず、白の国に戻り、王様に動いてもらおうと思っていました。ついでに、私は通常業務に戻ろうと思っていました。青の王様は苦しそうに声を出しました。
「分かった・・・ただ・・・」
「ただ・・・?」
「君が入院した間の、治療費を請求したい」
「・・・ちなみに、おいくらで?」
「君は、この国の国民では無い。よって、保険にも入っていない。・・・まぁ、肉体労働1年ぐらいだ。励んでくれたまえ」
「・・・・・・赤の国、行ってきます」
私は、苦渋の決断をしたのでした。
「あははっ!あははっ~!」
夏の女王様の笑い声が響きます。笑いながら、女王様がいいました。
「分かったわ。行ってきなさいな。頑張ってね~。あははっ!でも、やっぱり・・・。良いわね。あなた。あははっ!さぁ、夜が明けたらすぐに行った方が良いわ。急いだ方が良いわよ。大変なことになるから。・・・ぷっ、あははは!」
そう言って、夏の女王様は楽しそうに笑うのでした。