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裁判による国際問題と秋の国に関しての報告②

 黄の国への道程は、私の蒸気式二輪車で向かうことになりました。この国の蒸気技術の結晶ともいえるこれらの機械は、基本的に鉄炭という鉄鉱石で動きます。白の国では地面を少し掘れば出てきます。

 この蒸気式二輪車の旅自体は快適でした。国王様の指示で色々と整備をしてくれたので、スイスイと進みます。それに食料なども十分にあるので、ピクニック気分です。

「おや?」

 山を二つほど越えたところで、景色に変化が現れました。積もっていた雪が少なくなったように感じます。また、木々をみると、葉っぱが付いたものが増えたような気がします。

「ここ・・・ですね・・・・・・」

 看板が二つ建っていました。

『ここから先、黄の国』『ここから先、白の国』

 ここが、国の境界線です。小さい時には決して、この先を進んではいけないと教わって育ったものですが、今日は仕事です。思い切って私は二輪車を進ませるのでした。


 数時間後、私は巨大な門の前に到着しました。これが黄の国への入り口ということでしょう。周囲は黄色や赤の紅葉にドレスアップした木々でにぎやかです。地面にはその落ち葉で天然の絨毯が引かれています。

 私は門番と思われる男性の前に進みました。私に気が付いた男性は声をかけてきました。

「・・・旅人か?希望するのは、通行?滞在?」

 これは、国の門番がする基本的な質問です。どの国の門番も質問は変わらないようです。ただし、兵士さんの装備は白の国とは随分違います。白の国では主に武装には銃を使用しますが。黄の国の兵隊さんが持っているのは石と木の枝で作った槍でした。

「希望自体は滞在です。でも、私は旅人ではありません。白の国の外交員です。白の国の使者として伺いました。黄の国の王様にこれを」

 そう言って、私は白の国の王様からの手紙を渡すのでした。

「白の国!?」

 白の国の言葉に門兵さんは驚いた様子で、手紙を受け取ります。もし、トラブルになって、捕まったら怖いと思いましたが、私も護身用に銃を持っています。おそらく、大丈夫でしょう。門兵さんは門の隣にある小屋に駆け込みました。

「おい!出てこい」

 どうやら、仲間を呼んだようでした。小屋から同じような背丈の男性が出てきました。そして・・・。

「えっ!?」

 その小屋から、二匹の犬が出てきました。・・・犬のはずです。大きさが、白の国における熊ぐらいのサイズがあるだけです。おそらく、トラブルになった時に私が銃を構えたとしてもパクリとおいしくいただかれてしまうに違いありません。・・・私は、密かに準備した銃をしまうのでした。

 二人の門兵さんは二人で話し終えると、顔を見合わせこちらに向かってきました。

「・・・とりあえず、国王様に指示を仰ぎに行く。お前はそこで、待っているがいい」

「はぁ・・・」

 そう言って、門をくぐり走り出しました。私は残った門兵さんに質問しました。

「待っていればよいのですか?」

「あぁ、そうだ。今までないことだからな。おとなしく待っていろ」

「ちなみに、お城はどこに?」

「あの山の上だ」

 そう言って、大きな山のてっぺんを指さしました。私は質問します。

「かなり遠いようですが?」

「あぁ、でも馬に乗っていくから、そんなに時間はかからないだろう」

「そうですか・・・・・・」

 あの、山へは私の二輪車でも一時間はかかるでしょう。王様と話す時間を考えると三時間はかかると思われました。

「では、少し食事をとって待っていても?」

 実は昼食を食べていなかったのです。こんなに時間がかかるのであれば昼食を食べながら待っていても問題ないでしょう。

「・・・あ、あぁ。構わないが、そんなに時間はかからないと思うがね」

「では・・・」

 そう言って、私は食事の準備を始めたのでした。



 で、法廷です。目の前の初老の男性が、黄の国の王様であり、裁判長を兼ねているとのことでした。中々の威厳です。

「では、まず言うことは」

「・・・無実の罪です。無罪です。免罪です!!」

「しかし、君にはスパイの容疑と共にこの国に対するテロ行為に関しても疑惑がかかっている」

「だから!それも無罪なのです!」

トントン!トントン!

「黙りたまえ!では質問しよう!なぜ、落ち葉を集めて火をつけたのだ」

「そこに落ち葉があったから?」

「有罪!!君はとある登山家かね!?」

「ち、違います!食事をしようとしてですよ。ちょうど、お芋が生えていたので、焼いただけです」

「では、なんで門兵をはじめとして、様々な人を呼んだのだ」

「いや、焼き芋パーティーしようと思って」

「普通する?待っている間にパーティー開く!?」

「いや、思ったより盛り上がっちゃいましたね」

「・・・まぁ、そこはいい。うちの兵隊にも問題がある。しかし、君には兵器を使って火をつけたという目撃証言が出ているのだ」

「なんですかそれ!?無実です。証拠の偽装です」

「黒い箱型の兵器を使用して火をつけた言う疑いがかかっているのだ」

「黒い箱型!?えっライターですか?ただの道具じゃないですか」

「なんだね?ライターとは」

「・・・えーとですね。私たちの国の発明でして。中に火打石と調合した薬品が入っておりまして、火が簡単につくのです。私たちの国ではどこの家庭にも一つはある品物でして」

 そう言いながら、私はポケットに入っていたライターに火をつけます。―――と、黄の王様が驚きの声をあげました。

「なんだねそれは!?魔法かね!?」

「・・・いや、科学技術ですけど」

「ほ、ほうぅぅぅ」

 黄の王様は驚きの声を上げながら何回も火をつけました。

「あ、あの・・・。もったいないので返してください」

「こ、これは・・・すごい・・・一時、休廷じゃ」

 それで休廷となり、王様を始めとした裁判の関係者の方々が集まって審議となりました。

 審議が出たのは一時間後です。

 トントン!

「えー、とりあえず。裁判は一時中断とする。外交員殿は儂に着いてまいれ」

「はぁ・・・。別にいいですけど」

 そう言うと、王様は私を連れて外に出ました。出た建物を見るとそれはお城のようでした。どうやら、裁判所とお城を兼ねているのでしょう。

「ふむ、まぁ。正直、待っていろと言われて食事を始めることに問題があるとも思うが、君の無罪はほぼ証明された。こちらの間違いだったと認めよう。すまなかった。白の外交員どの」

「え、えぇ。確かに私も、悪いところがありました。だって、まさか一時間もせずにいらっしゃるとは思えなかったのです。だって・・・」

 私は、改めて空をみます。鳥さんのものであるはずの空に大きな影が見えます。それは、ゆっくりと私と王様の前に降り立ちました。一見すると白い体の馬でした。しかし、その背中には大きな翼が生えていました。ペガサスという奴です。

「馬が空を飛ぶなんて・・・。これこそ魔法か何かですか?」

「いや、ただの進化技術だが?」

 王様はキョトンとして答えたのでした。



 王様の王様に乗ったペガサスの後ろに座り、降り立ったのは人気のない森でした。

「王様、私身の危険を感じてます」

「何を言っているのだ。馬鹿かね。内密な話をしたかったのだ」

「はぁ、いいですけど。でも、こちらの質問に答えてください。裁判は一時中断ということでしたが。私の無罪はまだ証明されていないので?」

「いや、殆ど証明はされている。まず、テロの疑いだが」

「はいはい」

「君の持ってきた各道具を確認したところ、この国に無い技術で作られたものではあるが、どれも護身用であり、テロをするつもりならもっと危険な兵器を持ってきただろうと結論付けた」

「ほうほう」

「次にスパイの容疑だが・・・。スパイしようとする人間が火はつけないだろう。目立ちすぎるので、スパイはありえないという結論になった」

「ふむふむ」

「最後に、兵士や国民を誘ったという点から、国民などを誘惑し、内部から国家の転覆をさせようとしている。という疑惑も出た」

「おやおや」

「だがそれは・・・」

「それは?」

「いや、誘惑するなら。もっとグラマラスな美人をよこすだろうということでまずありえないということになった」

「はい!?」

 なんなんでしょう。私は王様にセクハラされる星のもとに生まれてきた、とでも言うのでしょうか。

「しかし、王様。だったら、おとなしく私を無罪にしてくださいよ」

「それに関しては、君の手紙を読ませてもらっての対応だと伝えておこう」

「・・・どういうことです?」

 黄の王様はため息をついて答えました。

「我々も困っておるのだ。秋の女王様がいつまでもこの国を出てくれん。我が国は冬を、冬の女王様を待っているのだ」

 それは、どこかで聞いた話でした。


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