裁判による国際問題と秋の国に関しての報告①
さて、突然ですが私は今、現在秋の季節の国。黄の国に来ています。あぁ、懐かしい秋。寒すぎず、涼しい風の吹くこの国は冬が長かった白の国から来た私としては快適な気候です。
そして、そんなこの国で私が何をしているのかというと・・・。
トントン!!
「では、これより異国のスパイ容疑のかかっている。外交員、シロナの裁判を開始する」
裁判です。私の外交員として、黄の国での最初の仕事は、被告として裁判所からのスタートなのでした。
物事は順序立てて説明しなければなりません。時間は私が冬の女王様から、塔を動かない理由を聞いたところまで戻ります。
冬の女王様から話を聞いた私は、塔を出ると王城に戻りました。王様に報告をするためです。王様の部屋に招かれた私は、冬の女王様と話した内容を伝えて女王様から受け取った手紙を渡しました。手紙を読みながら王様が私に話しかけてきます。
「・・・つまりこういうことかね。冬の女王様が動かないのは、移る先である黄の国の塔から秋の女王様が動かないためだと」
「はい、少なくとも私にはそう言っておられました。私の数時間に及ぶ交渉の末にやっと手にした情報なので間違いはないかと」
「ふむ、あり得ることだ。黄の国の奴らはたいそう野蛮だということだしな。秋の女王様を塔に閉じ込めておるのかもしれん」
「はぁ・・・。あの、なんで野蛮なんてわかるんですか?交流無いのに」
「王にのみ、伝えられる情報だ。父から聞いた話によると、黄の国では畑仕事や移動に、動物を使うということだ。なんと嘆かわしい、可愛い動物たちを道具のように扱うなど、虐待ではないか」
「まぁ・・・。確かにこの国ではあまりないことですが」
ちなみに、白の国では移動も農作業なども基本的に動物は使いません。鉄と木に恵まれたこの国では、蒸気を利用した機械の開発が進んでおり、多くの仕事が機械によって行われているのでした。
「そんな、黄の国だ。冬が嫌で秋の女王様を塔に閉じ込めているのかもしれん」
「・・・正直、冬の女王様と会って話をした身としては、季節の女王様を人間がどうこうできるとは思えませんが」
「とりあえず。原因は分かったのだ、早急に対策チームを作り黄の国との交渉に入る」
「そうですか」
「しかし、黄の国か・・・・・・。誰を向かわせるか・・・。私が行く訳にもいかんし・・・・・・」
「・・・あの」
「ふむ、君もよく頑張ってくれた。もう休みたまえ」
「・・・・・・」
スッ
「・・・何かね。その手は」
「・・・王様、結果として私は、冬の女王様が塔から出ない理由を解明しました」
「そうだね・・・」
「謝礼をもらう権利があるのでは?」
「・・・・・・」
「いや、私も謙虚な女です。半分・・・、いや三分の一で手を打ちましょう」
「いや、強欲の塊じゃないかね。君・・・。検討しておこう、まだ女王様の手紙をちゃんと読んでいないのだ。とりあえず、動くのは明日になるだろう」
「はい、わかりました。三分の二の謝礼の件、お願いしますね」
「増えてる。増えてる!まったく・・・・・・!?」
「じゃあ、私は失礼しますね」
スタスタ
自分の部屋に戻ろうとした私の背中に、王様が声をかけました。
「待ちたまえ」
「はい?」
「・・・遠慮せずとも用意した褒美は、全て君のものだ」
「・・・はい?」
「読んでみたまえ」
そう言って手渡された手紙には、綺麗な字で文章が書かれていました。内容は冬の女王様から、私が聞いたものと同じ。しかし、手紙の一番最後には注意書きとして余計な一文が載っていました。
※P.S この問題は塔を訪れた外交員が一人で任務にあたること。余計な手出しをすれば、この国に二度と春は来ないものと思いなさい。
私は震えながら顔を上げます。
「・・・・・・これって」
王様は笑顔で答えました。
「出張。頑張ってくれたまえ」