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【後日談】四季の女王様とのお茶会

 四か国会議か一か月が経過しました。そんなある日、私は走ってお城の外に出ました。その背中を、若い女性の声が追いかけます。

「外交員様!!シロナ様!!お仕事がまだ終わっておりません!お戻りください」

 私は気にせず走ります。

「これも仕事です!町に市場調査に行くのです!王様にはそう伝えておいてください!」

「またですか!?いい加減にしないと、クビになってしまいますよ!!」

「すぐ戻りますからー!!」

 私は走りながら答えました。彼女は新しく配属された私の秘書でした。それ自体は良いのですが、まじめすぎて息がつまります。

「はぁはぁ・・・。暑い・・・」

 私は上着を脱ぎました。道端を見ると雪が解けたところから綺麗な花が顔を出しています。

 そう、おそらく白の国に春が戻ってきたのです。それ以外の三か国にも季節の変化が見られ。間違いなく、季節は廻り始めたと王様達は結論付けています。

 しかし、それで国交が再び断絶することもなく、本日も王様達は交流と銘打って旅行に行っている模様です。私が多少サボっても問題ないでしょう。


 私は、最近オープンしたカフェに入ると椅子に座って一息つきます。ちなみに、このカフェは四つの国のお菓子が食べられるカフェとして大変な人気なのでした。

「ふぅ・・・」

 紅茶を飲みながら、ゆっくりと大通りを見ます。今までこの国の蒸気自動車だけが走っていた通りには今は黄の国の動物だったり。青の国の帆船車、赤の国の花車などが、走っています。それに伴ってトラブルも増えてきているのが心配なところですが。

「・・・・・・」

 取りあえず、季節は廻り、世界は平和になったと言っても良いでしょう。しかし、私の心には少しとげが刺さったようでした。

 それは、もちろん。季節の女王様のことでした。彼女たちは、季節を管理するのが嫌になった。そういう人もいました。力が無くなって女王として仕事が出来なくなったという人もいました。何が正しいのかは分かりませんが、私が思うのは二度と彼女たちには会うことが出来ないだろうということでした。

「あら?シロナちゃんじゃない。久しぶり」

「あ、どうも」

 冬の女王様の最後の言葉が思い出されます。

「何またサボり?駄目よぉ」

「いえいえ、休憩中ですでの」

 もう会うことは無い。そのようにはっきり言われたのです。寂しいことですが、あのように楽しく茶をすることはもうないのでしょう。

「でも元気そうで良かったわ~。元気してた~」

「業務が増えて大変ですよ」

 それに、それぞれの女王様と最後に会ったときの笑顔、寂しそうなあの笑顔は別れを悲しんでのことだったのでしょう。

「でも外交員も増えたんでしょう?部下が増えたのはうれしいでしょう」

「別に、私は先輩風を吹かせるタイプではないのですよ」

 でも、悲しんでもいられません。彼女たちの分まで、私たちは頑張らなければいけないのです。

「そう言えば、何を飲んでいるの?」

「あぁ。今日は赤の国の・・・。ってぇぇぇぇぇ!!」

 目の前に、ラフな服装に身を包んだ四季の女王様達がいらっしゃいました。

「えっ?いま気が付いたの?」

 冬の女王様が呆れたように言いました。



 女王様達に誘われて、相席させていただきました。どうやら、店の人もお客さんも四季の女王様には気が付いていない様子でいした。色々話したいことはありますが、今回の騒動の確認からです。

「つまりは、国交の回復と、文化間の交流が目的だったのでしょう?」

 私が尋ねます。

「そこまで難しい話ではないわ。私たちは国を巡っている。それでただ、もったいない、そう感じたのよ」

 と、冬の女王様。

「自分の国だけで小さくなっちゃてるのがねぇ」

 と、秋の女王様。

「でも、国交が断絶していたのも理由があったのでしょう?それを無理に再開したとしても。新たな火種になるのでは?」

 私は、質問しました。実際に、国同士で文化が違っているため、ケンカやトラブルも増えてきています。

「そうね~。断絶の時も私達、かかわってたしね~」

 と、言うのは夏の女王様でした。

「ただ、ケンカするのは相手がいないといけないわ。お互いに理解しあおうとすることが大切なのよ」

 春の女王様が言いました。

「それに、これからの国はあなたたち次第でしょう?」

 冬の女王様が微笑みながら言いました。

「大丈夫よきっと」

 秋の女王様も言いました。

「そうでしょうか・・・。そうですね」

 私は不安思いつつも、頷きました。確かに、問題が起きていないうちから、心配しても始まりません。

「それより、最近どう~?」

 夏の女王様が質問します。

「そうですね。最近の話題では―――」


 お茶会は楽しく進みました。そろそろ帰る時間になったので私は最後に質問しました。

「あの?なんで私だったんですか?他にも適任者がいたと思いますが」

 冬の女王様が答えます。

「貴方は他の国への興味を持っていたから」

 秋の女王様も言います。

「貴方は他の国を馬鹿にすることが無かったから」

 夏の女王様が言います。

「貴方は他国の王にも物おじしないから」

 春の女王様も答えます。

「貴方は知識も豊富だったから。でも一番は―――」

 四人の女王様の声が揃いました。

「「「「貴方が今までにないほど図々しかったから」」」」


「な、なんですか?それ?」

 私はずっこけます。

「うふふ、でも予想した通りあなたはよくやってくれたわ。私たちは消えるわけでは無いのよ。塔は無いけど季節をめぐらせるために、国を廻るわ。だから、また会いましょう」

 そう言うと、四季の女王様達は消えてしまいました。

「そうですか・・・。おっと、私もそろそろ戻らないと。お会計で」

 私は店員さんを呼びます。

 そう、この世界の季節や平和はこの世界で頑張る私達がどうにかすることなのです。それに、本当に大変なことになれば、きっと季節の女王様達が何とかしてくれる。そう思ったのです。






「こちらになりまーす」

 そう言って店員さんが伝票を持ってきました。

「え“!?」

 私は絶句しました。会計は五人分でした。

季節の女王様達は、やっぱり一筋縄ではいかないようです。


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