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さみしいけど、さようなら  作者: 六笠はな
6/10

涙色、茜色

唯と出会ったのは、物心も着く前の時だったからあんまり覚えていなかった。

多分保育園の頃だったかな。

よくみんなで遊んでいて、その中の一人に唯がいた。

唯はいつもジャングルジムの頂上にいて、ずっと空を眺めていた。

その理由は分からなかったけど、なぜかそんな彼女が幼い僕には魅力的に見えた。

そのまま同じ小学校に上がり、小学5年生上がった頃くらいに、唯は体が丈夫じゃないということを初めて知った。

今までずっと一緒に遊んでいたのに彼女はそんな素振りを見せなくて、それを知ったときはショックだったことを覚えている。

中学に上がってすぐ、彼女は入院することになった。

詳しいことはわからなかったけれど、唯は「検査するだけだから大丈夫」といつものように笑っていた。

その1週間後くらいには、学校にまた元気な姿を見せていた。

少しずつ大人になっていった僕らは、付き合う友達も徐々に変わってきて、以前ほど一緒にいることがなくなってきていた。

同じ高校に進学し、彼女はこれまで短かった髪も伸ばして、なんというか綺麗になった。

でも唯が僕に接する態度は今までと同じで、相変わらずいい友達という関係だった。


唯とはずっと友達でいれると思っていた。

だけど、この時、横に座っている唯を見つめて初めて気づいた。

僕はもう彼女に対して特別な感情を抱いてる。


人生のほとんどを共に過ごした彼女のことが、どうしようもなく、好きだ。


これからも唯と一緒に居たい。

だからこそ、ちゃんと聞かなきゃいけないと思った。

それを聞くのはとてもこわかったけれど、彼女に恋をしている僕だからこそ、覚悟を決めなければならない。

片手に収まるほどの僕の小さな勇気を振り絞って、聞いてみた。



「ねぇ唯。」


・・・・・きっと大丈夫。


「ん?」


・・・・・・こんなに笑っているじゃないか。


「唯に聞きたいことがあったんだ。今日」


・・・・・・今日だって元気そうだし。


「なに??」


・・・・・・ほら、笑ってる。大丈夫。




「唯、死なないよね?」





・・・・・なにばかなこといってるのって言うよね?






「・・・・・死ななきゃいけないんだってさ。あたし。」







胸のあたりが、大きく、早く、そして強く鼓動した。

そんな気がしていたんだ。

唯の心が、僕に伝わっていたのかもしれない。


「あと一週間もないってさ。さすがにちょっと早すぎだよね。」

微笑む彼女の表情とは裏腹に、彼女の頬には雫が流れていた。


その瞬間、僕の中で何かの糸が切れた。

涙が止まらなかった。


「なんで瑞希が泣くのよ。」


唯も我慢していたんだろう。

大粒の涙が零れだしていた。


僕の右手と彼女の左手は重なり合っていた。

彼女の温度が掌に伝わってきた。

これから確実に失われてしまうであろうこの温かさがとても、悲しかった。



二人とも泣き疲れて、そこで少し眠ってしまっていたらしい。

気付いたら空は綺麗な茜色になっていた。



あぁ、僕はこの子のことが好きなんだ。

今まで心の隅でもぞもぞとしていたものの正体が今、たった今やっとわかった。

あれはきっと恋心だったんだ。


知ってしまった。僕が唯のことが好きだということに、僕が気付いてしまった。

大切な人の存在を知ってしまった。


つながりというものは、いつか必ず途切れてしまう。

持ってしまった瞬間、離れることが約束されているんだ。


決して報われることのないであろう僕ら。

どうせ離れなければならないこの運命なら、最初からこんな気持ち知らなければよかった。


怒りでも、悲しみでも、憂いでもない何かが、僕の心で渦巻いていた。



「あと何日あるの?」

「五日だって。」

「そっか。」

「うん。」


この抗いようのない現実で何もできない自分が、とても無力に思えて情けなかった。


僕らはつないだ手を強く握りしめて夕日が沈むのを見ていた。


彼女が居なくなった世界になっても

きっと今までと同じように日は沈み、日は昇るんだろう。


でも僕は。

僕はそんな世界でこれからも生きていけるのだろうか。


あまりにも残酷なこの世界。

壊せるものなら、こんな世界、地球ごとぶっこわしてやりたい。

でもそんなことできるわけなく、

ただただ涙を流し、残りの時間を見つめることしか、僕らには出来なかった。




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